地域における歯科疾患対策を推進するためのニーズの把握および地域診断法を用いた評価方法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202122010A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における歯科疾患対策を推進するためのニーズの把握および地域診断法を用いた評価方法の確立のための研究
課題番号
20IA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
福田 英輝(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,635,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自治体における歯科疾患対策の推進を目的に、本研究班で実施した全国市町村を対象とした調査票(令和2年度実施)を用いて、①市町村の組織的基盤の有無と歯科疾患対策の実施状況との関連、②歯周疾患検診実施体制と歯周疾患検診受診率との関連、および③歯科疾患対策に関するテキストマイニング分析を実施した。あわせて自治体における歯周疾患有病状況の把握を目的として、政府統計を用いて、④歯周疾患検診受診者における歯周疾患有病状況の年次推移を推計した。
研究方法
初年度(令和2年度)、全国市区町村の歯科疾患対策担当課を対象として実施した歯科疾患対策に関する質問紙調査を用いて、①では、市町村が有する組織的基盤として「庁内外の関係者を交えて歯科口腔保健を議論・検討する場(会議体)の設置」、および「歯科口腔保健事業計画(歯科保健計画)の策定」の有無別に、歯科疾患対策の実施状況を分析した。②では、歯周疾患検診の実施体制別に歯周疾患検診受診率の中央値を比較した。③では、「成人期における歯周病」、「高齢期における口腔機能低下」、「障害者・児における歯科疾患対策」の現状と課題に関する自由回答を対象としたテキストマイニングを行った。また「地域保健・健康増進事業報告」の数値を用いて、④では、歯周疾患検診受診者における年齢別・都道府県別の年次推移を推計した。
結果と考察
全国市町村を対象とした歯科疾患対策に関する調査票を用いた研究として、①では「会議体の設置」「歯科保健計画の策定」といった組織的基盤が整備された市町村においては、人口区分と独立して、歯周疾患検診の実施割合、および口腔機能低下と関連した指標の把握状況や口腔・嚥下体操の普及状況が良好であることが示された。②では歯周疾患検診体制として、委託形式、集団方式なし、節目検診対象者やハイリスク者への案内、および自己負担なしとした市町村において歯周疾患検診受診率の中央値が大きかった。また③では、成人期における歯周病対策としては、人口規模が小さな市町村では歯周疾患検診・歯科保健指導の担い手の確保が大きな課題として認識されていた。また、口腔機能低下対策については、人口規模が比較的小さな市町村では、具体的な口腔機能低下者の把握等を担う人材確保に関する単語が抽出された。さらに障害者・児への歯科保健サービスについては、障害者の歯周病対策や医療機関との連携が抽出されたが、その傾向を十分に把握することはできなかった。また、e-stat「地域保健・健康増進事業報告」の数値を用いた研究④では、歯周疾患検診受診者における歯周疾患であった者の全国値に基づく割合は、いずれの年齢においても、有意な減少傾向がみられた。
結論
自治体における歯科疾患対策の推進のためには、PDCAサイクルの好循環を可能とする自治体の組織的基盤である「会議体の設置」「歯科保健計画の策定」が重要であることが示された。市町村が実施する歯周疾患検診受診率を向上させるには、現状では、健康増進法に基づく歯周疾患検診の対象者を不特定多数とせず、40・50・60・70歳の節目年齢の者やハイリスク者に焦点を絞り、地域での歯周疾患検診を支える基盤体制の確立が重要であることが示された。また、テキストマイニングの結果、歯周病対策と口腔機能低下対策では自治体の規模によって認識している課題に明らかな差異がある一方、障害者・児への歯科保健サービスへの対応策については各自治体での取り組みが多様であることが示された。また、地域保健・健康増進事業報告を用いた分析研究においては、歯周疾患検診受診者という集団特性の偏りがあるものの、わが国における歯周病である者の割合は、改善傾向にあることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2022-07-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122010B
報告書区分
総合
研究課題名
地域における歯科疾患対策を推進するためのニーズの把握および地域診断法を用いた評価方法の確立のための研究
課題番号
20IA1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
福田 英輝(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 宏子(北海道医療大学 歯学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、地域を基盤とした集団対応が困難であると考えられる「成人期の歯肉炎・歯周炎」、「高齢期の口腔機能低下」、および「要介護者・障害者(児)における歯科疾患に対する歯科疾患対策」の実態を明らかにし、これら歯科疾患対策と関連する要因を明らかにすることである。
研究方法
令和2年度:すべての都道府県および市区町村の歯科疾患対策担当課を対象として歯科疾患対策に対する質問紙調査を実施し、44都道府県(回収率93.6%)、および1,507市区町村(86.3%)から回答を得た。市区町村の類型別・人口規模別に歯科疾患対策の実施割合を比較した。
 令和3年度:研究①「自治体における組織的基盤の有無と歯科口腔保健事業の実施状況との関連」では、市町村が有する組織的基盤として「庁内外の関係者を交えて歯科口腔保健を議論・検討する場(会議体)の設置」、および「歯科口腔保健事業計画(歯科保健計画)の策定」の有無別に、歯科疾患対策の実施状況を分析した。研究②では「市町村における歯周疾患検診に関する実施体制と歯周疾患検診受診率との関連」では、歯周疾患検診の実施体制別に歯周疾患検診受診率の中央値を比較した。研究③では「自治体の特性と地域歯科保健活動に関するテキストマイニング分析」では、各歯科疾患対策の現状と課題に関する自由回答を対象として、テキストマイニングを行った。研究④「歯周疾患検診受診者における歯周疾患の有病状況の年次推移」では、「地域保健・健康増進事業報告」を用いて、年齢別・都道府県別に歯周疾患有病割合の年次推移を算出した。
結果と考察
令和2年度:市区町村における「歯周疾患検診」の実施割合は、自治体の規模が小さくなるにつれて小さかった。また、人口規模が小さな市町村では、歯周疾患検診に対する「独自の工夫を行っていない」「要指導者に対する措置を行っていない」自治体の割合が高かった。自由記載からは、歯周疾患検診受診率の低さ、若年層や職域での歯周疾患予防対策等が取り上げられた。口腔機能低下と関連した指標の把握状況、口腔機能低下予防を協議する単独の会議体の設置は、人口規模が小さい市町村では極めて小さい状況が示された。自由記載からは、「口腔機能に関する現状把握が出来ていない」等の意見が聞かれていた。障害者支援施設/障害児入所施設や介護老人福祉/保健施設での歯科口腔保健活動の状況を把握している自治体の割合は極めて小さく、十分な支援対策が実施されていない現状が明らかとなった。 
 令和3年度:研究①では「会議体の設置」「歯科保健計画の策定」といった組織的基盤を有する市町村は、人口区分と独立して、歯周疾患検診の実施割合、口腔機能低下と関連した指標の把握状況や口腔・嚥下体操の普及状況が良好であることが示された。研究②では歯周疾患検診体制として、委託形式、集団方式なし、節目検診対象者やハイリスク者への案内、および自己負担なしとした市町村において歯周疾患検診受診率の中央値が大きかった。研究③では、成人期における歯周病対策としては、人口規模が小さな市町村では歯周疾患検診・歯科保健指導の担い手の確保が大きな課題として認識されていた。また、口腔機能低下対策については、人口規模が比較的小さな市町村では、具体的な口腔機能低下者の把握等を担う人材確保に関する単語が抽出された。障害者・児への歯科保健サービスについては、障害者の歯周病対策や医療機関との連携が抽出されたが、その傾向を十分に把握することはできなかった。研究④では、歯周疾患検診受診者における歯周疾患であった者の割合は、いずれの年齢においても、有意な減少傾向がみられた。
結論
1)市区町村における「歯周疾患検診」の実施割合は、自治体の規模が小さくなるにつれて小さかった。また、口腔機能低下と関連した指標の把握状況、口腔機能低下予防を協議する単独の会議体の設置は、人口規模が小さい市町村では極めて小さい状況が示された。
2)障害者支援施設/障害児入所施設や介護老人福祉施設/介護老人保健施設での歯科疾患対策は、十分な展開がされていない現状が明らかとなった。障害者・児への歯科保健サービスの提供については、国等が具体的な指針を提示する必要があると考えられた。
3)市町村における歯科疾患対策の推進のためには、PDCAサイクルの好循環を促す「会議体の設置」「歯科保健計画の策定」が重要であることが示された。また、市町村が実施する歯周疾患検診受診率を向上させるには、行動経済学の応用、共通リスク要因アプローチの活用、および委託形式による歯周疾患検診、ハイリスク者を対象者に含めること、および歯周疾患検診の無料化等が有効であると示唆された。
4)歯周病である者の割合は、改善傾向にあることが示唆された。要精密検査者の受診確認、およびその結果の確認が今後の課題であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-07-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
市区町村における歯科疾患対策は、自治体類型別・人口区分別に実施割合に差がみられた。しかしながら、歯科疾患対策の実施には、PDCAサイクルの好循環を促す「会議体の設置」「歯科保健計画の策定」が重要であることが示された。障害者支援施設/障害児入所施設や介護老人福祉施設/介護老人保健施設での歯科疾患対策は、十分な展開がされていない現状が明らかとなった。障害者・児への歯科保健サービスの提供については、国等が具体的な指針を提示する必要があると考えられた。
臨床的観点からの成果
とくになし
ガイドライン等の開発
とくになし
その他行政的観点からの成果
歯科疾患対策の円滑な実施には、「会議体の設置」「歯科保健計画の策定」が有効であることが示されたことから、歯科疾患対策に関する自治体のストラクチャー指標としての活用が期待される。
その他のインパクト
とくになし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202122010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,635,000円
(2)補助金確定額
2,560,000円
差引額 [(1)-(2)]
75,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 701,125円
人件費・謝金 777,383円
旅費 0円
その他 1,081,703円
間接経費 0円
合計 2,560,211円

備考

備考
自己資金211円

公開日・更新日

公開日
2022-12-21
更新日
-