既存添加物の発がん性等に関する安全性評価研究

文献情報

文献番号
200837006A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の発がん性等に関する安全性評価研究
課題番号
H18-食品・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 研二(広島大学 原爆放射線医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存食品添加物は,食品衛生法の改正時に経過措置としてその使用が認められているが,速やかな安全性の評価が必要である。本研究では,ばい煎ダイズ抽出物の長期反復摂取した場合の安全性を動物実験により評価することを目的とした。その為,ばい煎ダイズ抽出物のラットによる1年間反復投与毒性試験を実施する。同時に,最近の突然変異機構の研究成果を応用して,既存食品添加物などの安全性を高感度に検定できるマウスモデルの開発を行い,これを用いたばい煎ダイズ抽出物の安全性評価を実施する。これらを併せて安全性を評価し,その成果を厚生労働行政に反映することで,我国独特のものが多い既存添加物の安全性確保を目指す。
研究方法
ばい煎ダイズ抽出物の安全性をラットの1年間反復投与毒性試験により評価した。自然突然変異を誘発する中心的役割を担うYファミリーDNAポリメラーゼRev1に注目し,変異原に高感度なマウスを開発する目的で,Rev1トランスジェニックマウス(Rev1マウス)の生物学的特性を解析した。Rev1マウスのRev1 mRNAの発現と化学物質に対する発がん感受性や誘発腫瘍のゲノム変異等を検討した。同時にRev1マウスを用いてばい煎ダイズ抽出物の1年間反復投与試験により慢性毒性と発がん性を検索し,ラットの結果と総合して安全性評価を行った。
結果と考察
ラットによる1年間反復投与毒性試験では,血液学的検査,血液生化学検査,及び病理学的検査等でばい煎ダイズ抽出物の慢性毒性所見は認められなかった。ばい煎ダイズ抽出物の投与による体重増加抑制の無毒性量は,雄ラット2.5%,雌ラット1.25%であると推定された。Rev1遺伝子を両アレルに持つRev1ホモマウスは,変異原の投与により1カ月間で小腸に多数のmicro-adenomaが誘発され,変異原に対し高感受性であることが判明した。従って,被験物質の発がん性等を高感度で迅速に検定できるマウスモデルが確立できた。また,誘発腫瘍のゲノム解析では,特徴的な変異は認められなかった。Rev1ホモマウスによる1年間反復投与試験では,ばい煎ダイズ抽出物の慢性毒性や発がん性を示す所見は認められなかった。煎ダイズ抽出物による体重増加抑制の無毒性量は,雄マウス2.5%と推定された。
結論
ラットと高感度マウスによるばい煎ダイズ抽出物の反復投与試験を実施し安全性を評価した。その結果,慢性毒性や発がん性を示す所見は認められなかった。煎ダイズ抽出物の投与による体重増加抑制の無毒性量は,雄ラット2.5%,雌ラット1.25%であると推定された。変異原の発がん性等を高感度に検定できるマウスが開発できた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200837006B
報告書区分
総合
研究課題名
既存添加物の発がん性等に関する安全性評価研究
課題番号
H18-食品・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 研二(広島大学 原爆放射線医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存食品添加物は,食品衛生法の改正時に経過措置としてその使用が認められているが,速やかな安全性の評価が必要である。本研究では,ばい煎ダイズ抽出物の長期反復摂取した場合の安全性を動物実験により評価することを目的とした。その為,ばい煎ダイズ抽出物のラットによる1年間反復投与毒性試験を実施する。同時に,最近の突然変異機構の研究成果を応用して,既存食品添加物などの安全性を高感度に検定できるマウスモデルの開発を行い,これを用いたばい煎ダイズ抽出物の安全性評価を実施する。これらを併せて安全性を評価し,その成果を厚生労働行政に反映することで,我国独特のものが多い既存添加物の安全性確保を目指す。
研究方法
ばい煎ダイズ抽出物の安全性をラットの1年間反復投与毒性試験により評価した。自然突然変異を誘発する中心的役割を担うYファミリーDNAポリメラーゼRev1に注目し,変異原に高感度なマウスを開発する目的で,Rev1トランスジェニックマウス(Rev1マウス)の生物学的特性を解析した。Rev1マウスのRev1 mRNAの発現と化学物質に対する発がん感受性やT細胞受容体(TCR)の突然変異誘発率等を検討した。同時にRev1マウスを用いてばい煎ダイズ抽出物の1年間反復投与試験により慢性毒性と発がん性を検索し,ラットの結果と総合して安全性評価を行った。
結果と考察
ラットによる1年間反復投与毒性試験では,血液学的検査,血液生化学検査,及び病理学的検査等でばい煎ダイズ抽出物の慢性毒性所見は認められなかった。ばい煎ダイズ抽出物の投与による体重増加抑制の無毒性量は,雄ラット2.5%,雌ラット1.25%であると推定された。Rev1遺伝子を両アレルに持つRev1ホモマウスは,変異原の投与により1カ月間で小腸に多数のmicro-adenomaが誘発され,T細胞受容体の突然変異頻度も増加することから,変異原に対し高感受性であることが判明した。従って,被験物質の発がん性等を高感度で迅速に検定できるマウスモデルが確立できた。Rev1ホモマウスによる1年間反復投与試験では,ばい煎ダイズ抽出物の慢性毒性や発がん性を示す所見は認められなかった。煎ダイズ抽出物による体重増加抑制の無毒性量は,雄マウス2.5%と推定された。
結論
ラットと高感度マウスによるばい煎ダイズ抽出物の反復投与試験を実施し安全性を評価した。その結果,慢性毒性や発がん性を示す所見は認められなかった。煎ダイズ抽出物の投与による体重増加抑制の無毒性量は,雄ラット2.5%,雌ラット1.25%であると推定された。変異原の発がん性等を高感度に検定できるマウスが開発できた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200837006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
既存食品添加物は,科学的な安全性評価が必要である。本研究では,ばい煎ダイズ抽出物の安全性をラットと高感度マウスを用いた反復投与試験により評価した。その結果,病理学的検査等でばい煎ダイズ抽出物の慢性毒性や発がん性は認められなかった。また,ばい煎ダイズ抽出物の投与による体重増加抑制の無毒性量が推定された。一方,自然突然変異を誘発するYファミリーDNAポリメラーゼRev1に注目し,変異原に高感度なマウスを開発した。その結果,被験物質の発がん性等を高感度で迅速に検定できるマウスモデルが確立できた。
臨床的観点からの成果
本研究は,臨床医学に直接的に関係する研究でないため,臨床的観点からの直接的な成果は無い。しかし,既存食品添加物の安全性を評価することで,国民に安全で安心な既存食品添加物を提供でき,国民の健康増進に貢献できる。
ガイドライン等の開発
既存食品添加物は,食品衛生法の改正時の経過措置として,その使用が認められている。法改正時の国会附帯決議で,既存添加物の速やかな安全性の見直しを行い,有害である場合には,使用禁止等の必要な措置を講じるとされた。その後,厚生労働科学研究等を通じ,既存添加物の安全性評価が進んでいる。本研究は,科学的安全性データの欠ける既存添加物のうちから,ばい煎ダイズ抽出物の安全性を動物実験により評価したものである。その成果は,既存食品添加物の安全性見直しの基礎資料として役立ち,安全性のガイドラインに貢献する。
その他行政的観点からの成果
既存食品添加物は,食品衛生法の改正時に経過措置としてその使用が認められているが,速やかな安全性の評価が必要である。本研究では,ばい煎ダイズ抽出物の長期反復摂取した場合の安全性を動物実験により評価した。その結果,ばい煎ダイズ抽出物の慢性毒性や発がん性を示す所見は認められなかった。この様な成果を蓄積し,厚生労働行政に反映することで国民の安心で安全な食品に対する信頼性の向上に貢献できる。
その他のインパクト
長寿社会が実現し,国民は健康とその基盤となる食品に強い関心を持っている。特に,狂牛病問題や中国から輸入した汚染食品等の経験から,国民は安心で安全な食品に対する強い要望を持っている。既存食品添加物は,我が国独特のものが多く,長年の使用経験はあるものの,その安全性は科学的には必ずしも検証されていない。本研究は,既存食品添加物の一つであるばい煎ダイズ抽出物の安全性を科学的に評価したもので,国民の安全な食品に対する要望に答えるものである。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-