産科医師確保計画を踏まえた産科医療の確保についての政策研究

文献情報

文献番号
202122007A
報告書区分
総括
研究課題名
産科医師確保計画を踏まえた産科医療の確保についての政策研究
課題番号
20IA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
  • 光田 信明(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医師不足等に対応した地域における周産期医療の確保については、産科医師の絶対数の減少や偏在といった既知のものに加え、医師の働き方改革への対応等の課題が指摘されている。医療提供側は以前より集約化による勤務条件の緩和を目指しているが、その成果は限定的であるとされている。
 都道府県は平成30年の医療法改正によって2019年度末までに「産科医師確保計画」を策定することとなっている。この計画の策定にあたっては、厚生労働省が「産科医師偏在指標」を公開しているが、その他の地域における産科医療に関する定量的な指標は明らかとなっておらず、公的統計や既存の大規模データベース(以下、DB等)の活用による研究も少ない。また、現在は医療機関や人員の配置といったハード面に議論が集中しているが、地域住民への更なる普及啓発や地域のニーズ把握といったソフト面からの解決についても検討する必要がある。
 そこで、本研究では医療提供者と住民の双方に対する全国的な実態調査や既存のデータベースの分析を行い、産科医師確保計画の実効性を高めるため、地域の実情に応じた具体的な取組方法を提言するための知見を得ることを目的とする。
研究方法
・DB等活用による現状分析
 2020年度にデータ収集が完了したDPCデータ等を用いて、産科医療提供体制に関するヘルスサービスリサーチを実施する。具体的には周産期医療の施設別件数とMaterial near-miss発生件数との関連や患者居住地と医療機関所在地との距離と予後との関連に関する研究等を実施する。加えて、順次公開される公的統計を用いた分析も実施する。
・産科医師実態調査の実施
 2020年度に実施したインタビュー調査を踏まえ、産科医師を対象としたアンケート調査の内容を修正する。小規模なアンケート調査を行い、調査票が正しく設計されているかを確認した後、産科医師の分娩取扱に影響を与える要因に関する大規模な調査を実施する。
・地域ニーズ把握調査の設計
 2020年度に実施したインタビュー調査を踏まえ、妊産婦を対象としたアンケート調査の内容を修正する。小規模なアンケート調査を行い、調査票が正しく設計されているかを確認した後、地域における産科医療へのニーズや、産科医療提供医療機関の集約化に関する意識等について大規模な調査を実施する。
結果と考察
 産婦人科医師調査は222名から、妊婦調査は618名から回答を得た。妊婦調査では、約四分の三が医療機関の統合や議論参加を自他共に前向きであると捉えていることが明らかとなった。。多元的無知(集団の過半数が任意のある条件を肯定的に捉えているにも関わらず、他者が否定的であると想定しそれに沿った行動をしている状況)に関する分析では、産婦人科等医師において、自他ポジティブ群と多元的無知群との間に医療提供体制等に関する意向や実際に表明する意見等に差が認められなかった。
 医師歯科医師薬剤師統計と病床機能報告との連結分析では、現在、日本には335の二次医療圏が存在するが、そのうち病床機能報告において分娩の取り扱いが1件もなかったのは33医療圏(9.9%)であった。病院勤務が主たる業務の分娩取り扱い医師が0人であるのは27医療圏(8.1%)であった。   
 DPCデータの分析では、全体で何かしらのMaternal Comorbiditiesを有する者の割合は43%であった。最も多かったのはPrevious cesarean delivery(帝王切開の既往)で21%であった。Maternal End-Organ Injuryを有する者の割合は2.8%で、傷病別に最も多かったのはDisseminated intravascular coagulation/coagulopathy(播種性血管内凝固症候群, DIC)で1.1%であった。DICについては、自殺を除けば産科危機的出血が未だ妊産婦死亡原因の第一位であることも踏まえ、実際に多く発生しているだけでなく、その注目度の高さからもコーディングされる頻度が高いと考えられた。今後の分析にあたっては、DICの重症度を推し測るため、Fファイルを用いて投与された薬剤等の情報も加味することが必要であると考えられた。また、Pulmonary embolism(肺塞栓症)のような予防可能な疾患も含まれており、医療安全に関する体制との関連についても検討が必要であると考えられた。
結論
産科医療提供体制を検討するために参考となる知見を得ることができた。医療機関の集約化は産婦人科医師や妊婦の意見としては多数が賛成しており、妊産婦においては多元的無知の解消を目指しつつ、当事者以外の阻害要因について検討することが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2023-06-21
更新日
2023-11-15

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文献番号
202122007Z