文献情報
文献番号
202122005A
報告書区分
総括
研究課題名
薬価制度抜本改革に係る医薬品開発環境および流通環境の実態調査研究
課題番号
19IA2020
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(学校法人北里研究所 北里大学 薬学部臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
- 小林 江梨子(千葉大学大学院薬学研究院)
- 三浦 俊彦(中央大学商学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,123,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
薬価制度は、(1) 薬剤費のコントロール、(2) 医薬品へのアクセス確保を通じた国民の健康の向上、(3) イノベーションの評価等による産業の育成といった多様な役割を有している。本研究では、 薬価制度抜本改革が我が国における医薬品の開発環境及び流通環境に与える影響を網羅的に評価し、薬価制度が有する多様な役割のバランスに配慮しながら、中長期的な視点も交えてそのあり方に係る基礎資料を整備し、今後の医薬品関連産業のあり方の視座から課題の整理と提言を行うことを目的とする。研究代表者らによる前年度までの研究を除き、これまで薬価制度の改正が製薬 産業及び流通産業(医薬品卸)に与える影響を網羅的に調査した研究は行われていない。本研究では、公表された資料やデータベースに基づく調査、並びに個別企業等へのヒアリング・アンケート調査を併用することにより、透明性・客観性を確保しつつ、各社の実情も考慮した形で影響の評価を行った。
研究方法
医薬品開発環境に関しては、日本の製薬企業による臨床試験の実施状況、新薬の国際的な開発タイミング、国際共同臨床試験への日本の参加状況、日米欧における新薬承認後の効能追加及び価格推移、世界の中での日本のポジショニング、新規モダリティ製品の日米欧での承認状況について調査するとともに、製薬企業を対象として近年の薬価制度改革の影響に関するアンケート調査を実施した。
医薬品流通環境に関しては、医薬品卸売業者の経営分析、医薬品卸売業者と保険薬局に対するアンケート調査を行い、さらに、流通改善に向けた施策の検討・提案のための比較研究(医療用医薬品業界とOTC業界)を実施した。
医薬品流通環境に関しては、医薬品卸売業者の経営分析、医薬品卸売業者と保険薬局に対するアンケート調査を行い、さらに、流通改善に向けた施策の検討・提案のための比較研究(医療用医薬品業界とOTC業界)を実施した。
結果と考察
本研究では、平成30年度薬価制度抜本改革を含む近年の薬価制度の見直しが我が国における医薬品の開発及び流通の環境に与えてきた影響を多面的に評価した。
医薬品開発環境に関しては、各種調査研究を通じて、過去10年程度の間に、日本を含む国際共同臨床試験が増加し、日本と欧米間の新薬の申請及び承認の時間差が経時的に短くなるなど、日本の新薬研究開発の環境が好転してきたことが示された。これには、2010年度から試行的に導入された新薬創出等加算制度を含む薬価制度の見直し、各種薬事制度の改善、それに付随する関係者の努力など、複数の要因が影響してきたものと考えられる。その一方で、直近の1~2年は、そのような環境の改善に陰りが見えるような兆候も示された。
また、医薬品流通環境に関しては、、医薬品卸売業者の経営状況について、実販売額は近年微増であったのが2020年度は若干減少し、利益率も近年1%台であったのが1%を切るなど、経営指標は若干悪化していた。医薬品卸売業者と保険薬局に対するアンケート調査では、医薬品卸としては単品単価契約、年間契約を行うことに問題はなさそうであったが、保険薬局としては単品単価契約、年間契約をあまり好んでいない傾向が見受けられた。医療用医薬品業界とOTC業界との比較研究では、単品単価契約や未妥結・仮納入の問題解決に向けて十分参考になることが理解された。
医薬品開発環境に関しては、各種調査研究を通じて、過去10年程度の間に、日本を含む国際共同臨床試験が増加し、日本と欧米間の新薬の申請及び承認の時間差が経時的に短くなるなど、日本の新薬研究開発の環境が好転してきたことが示された。これには、2010年度から試行的に導入された新薬創出等加算制度を含む薬価制度の見直し、各種薬事制度の改善、それに付随する関係者の努力など、複数の要因が影響してきたものと考えられる。その一方で、直近の1~2年は、そのような環境の改善に陰りが見えるような兆候も示された。
また、医薬品流通環境に関しては、、医薬品卸売業者の経営状況について、実販売額は近年微増であったのが2020年度は若干減少し、利益率も近年1%台であったのが1%を切るなど、経営指標は若干悪化していた。医薬品卸売業者と保険薬局に対するアンケート調査では、医薬品卸としては単品単価契約、年間契約を行うことに問題はなさそうであったが、保険薬局としては単品単価契約、年間契約をあまり好んでいない傾向が見受けられた。医療用医薬品業界とOTC業界との比較研究では、単品単価契約や未妥結・仮納入の問題解決に向けて十分参考になることが理解された。
結論
医薬品の研究開発には長期の時間を要することから、今般の薬価制度の見直しが新薬開発の動向に明確な影響を与えるまでにはタイムラグがあるものと推察される。このことも念頭に、中長期的な視点も交えて、今後も多面的な情報の収集及び分析を継続していく必要がある。流通に関しては、単品単価契約、年間契約を推進し、未妥結・仮納入をなくして、我が国における医療用医薬品の流通を、他の多くの業界のような近代的な流通体制に近づけていくことが、医薬品卸の経営改善につながり、同時に医薬品流通全体の効率化にも資すると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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