国土強靭化計画をふまえ、地域の実情に応じた災害医療提供体制に関する研究

文献情報

文献番号
202122003A
報告書区分
総括
研究課題名
国土強靭化計画をふまえ、地域の実情に応じた災害医療提供体制に関する研究
課題番号
19IA2014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 本間 正人(国立大学法人鳥取大学 医学部器官制御外科学講座 救急・災害医学分野)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 小早川 義貴(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
  • 久保 達彦(広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
  • 西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
  • 森村 尚登(帝京大学医学部救急医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,778,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国土強靭化基本計画の変更を踏まえ、地域の実情に応じた災害医療体制を提供するために、災害医療全体の改善を図ることである。
研究方法
下記参照
結果と考察
[方法・結果・考察・結論]
災害医療コーディネートに関しては、三層構造を原則とするコーディネート体制が構築してきたが、本年度は災害医療コーディネーターや班員の具体的な活動に関するマニュアルを策定した。災害医療コーディネーターは医療の提供に関する調整のみならず、保健や福祉の分野とも協力する必要があることから、平時からの連携が重要である。
EMISに関する研究では、EMISの操作性向上の喫緊の課題解決のため、今年度は本分担研究班にワーキンググループを結成して、EMIS機能改善に向けての具体的改善案を検討した。その結果、早急に改善して実装すべき機能として、1)DMAT管理機能スマートフォンアプリ、2)訓練準備管理ツール、3)医療機関状況モニター分析ツール、4)セキュリティー強化、5)他の情報システムとの連携強化を実施した。
ロジスティックに関しては、大規模地震時医療活動訓練において東日本大震災以来の東北地方への全国からのDMAT動員のシミュレーションを実施した。また、災害時の医療機関への電力や水の補給のオペレーションについてより検討を行い、それらの成果をDMATロジスティックチーム隊員養成研修等の研修内容に反映した。
DMATの効果的な運用に関しては、南海トラフ地震の被害想定に基づく地域別にDMAT必要保有数を算出し、現状との差から今後のチーム養成の目標を示した。また感染症対応については、支援実績から従来のDMAT活動内容を活かすことが可能であった。DMATの組織内に感染症対策に精通した人材を保有し、必要時に機動性をもってDMATメンバーの指導・助言を行う体制が必要である。
医療搬送に関する研究では、令和元年6月に公表された南海トラフ巨大地震の被害想定(再計算値)をもとに、合計4パターンの「医療搬送が必要数=重傷者発生数―県内の重症患者受け入れ能力」を算出した。今後は、本研究で明らかになった「医療搬送必要数」をもとに、具体的医療搬送計画を検討していく必要がある。
一般病院等へのBCP策定に関する研究として、一般病院を対象とした「BCPチェックリスト」「チェックリストを用いた病院災害計画BCPの自己点検の手引き」を作成した。現行の制度化では災害拠点病院以外の医療施設のBCP整備の枠組みが明確でなく、BCP整備の根拠の提示とともに一般病院が整備すべきBCPの内容に関する指針や標準的なBCPのひな形の提示が求められる。
災害時における地域包括BCPに関する研究においては、地域包括BCP 策定の重要性が指摘されているが、現時点で策定が完成した地域の報告は聞かない。今後、地域包括BCP策定するためには法的根拠整備を進める必要がある。医療、保健、介護・福祉も含めた地域包括BCPの基本的な策定単位は二次医療圏レベルが望ましいと考えられ、特に保健所はその策定主体としての機能が求められる。
周産期・小児医療提供体制に関する研究においては、「周産期センター以外の分娩取扱施設(病院・有床診療所)で活用可能なBCP策定マニュアル」、「災害時小児周産期リエゾン運用マニュアル」のモデル版を作成した。また、分娩取扱施設の医療従事者を対象とするWEBセミナーを、日本産科婦人科学会とともに企画し開催した。
IoT、AIを活用する災害医療に関する研究においては、①関係計画・施策・技術調査と②社会実装課題調査を実施した。①関係計画・施策・技術調査では、災害医療関係システムの整備状況と課題をCSCA-TTTの枠組みで整理した災害医療ICTマップを提言事項含めて更新した。②社会実装調査ではIoT/AIシステムの災害医療分野での社会実装に向けた構造的な課題を整理した。
国際災害医療チームの受援に関する研究では、国際受援訓練を米国保健福祉省等と連携のうえUS-DMAT受援訓練をリモート開催の形で実施した。成果として「US-DMAT/EMT国際受援標準業務手順書(SOP)暫定版」を開発した。今後は日米合同で設置したワーキンググループを協議の場として活用し、当該SOPのブラッシュアップや実動訓練企画等の課題検討に両国合同で取り組んでいくことが重要である。
DMAT/DPAT先遣隊隊員のメンタルヘルスの状態を平時からチェックするには、隊員研修の機会を活用して推奨事項の周知とセルフスクリーニングを行うことが必要と考えられた。COVID-19感染者の対応の決断の経験への対策は、COVID-19パンデミック時において医療従事者のメンタルヘルスの問題を予防するために重要である。
結論
上記参照

公開日・更新日

公開日
2022-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202122003B
報告書区分
総合
研究課題名
国土強靭化計画をふまえ、地域の実情に応じた災害医療提供体制に関する研究
課題番号
19IA2014
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 本間 正人(国立大学法人鳥取大学 医学部器官制御外科学講座 救急・災害医学分野)
  • 森野 一真(山形県立救命救急センター)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター)
  • 近藤 久禎(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院)
  • 小早川 義貴(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
  • 久保 達彦(広島大学大学院医系科学研究科 公衆衛生学)
  • 西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
  • 森村 尚登(帝京大学医学部救急医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国土強靭化基本計画の変更を踏まえ、地域の実情に応じた災害医療体制を提供するために、災害医療全体の改善を図ることである。
研究方法
下記参照
結果と考察
災害医療コーディネーターに関する研究では、令和元年東日本台風における災害医療コーディネーターの役割の検証、新型コロナウイルス感染症パンデミック対応における三層構造の保健医療コーディネート体制の活用の有用性を指摘し、これらの経験を基にコーディネーターの活動マニュアルの作成を行った。
EMISに関しては、・EMIS学習機能の強化とe-Learningの導入、・スマートフォン用アプリの開発、・ 病院の基本情報管理におけるライフライン情報項目の追加充実、・医療機関状況モニターツールの開発、実装を行った。災害時の医療機関状況をリアルタイムで共有するための改良がこの3年間の提言から実現した。
ロジスティックに関しては、DMATの指揮系統、地域における運用について問題点を整理した。新型コロナウイルス感染症の影響により、DMATの運用や関係機関との連携訓練が実施できない状況となったが、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震図上訓練を通して、フェリーやレンタカー等の民間事業者と連携し、被災地外から海路も利用してのDMAT動員について一定の方法論が確立できた。
DMATの効果的な運用に関しては、・受援医療機関の定型的評価基準「病院行動評価群」の作成。・大規模な感染症アウトブレイク対応に関わるDMATの組織体制、教育体系の改変の要否を検討した。・DMAT養成目標については南海トラフ地震の被害想定に基づいて、適正なチームの必要保有数を算出し、今後のチーム養成の目標を示した。
医療搬送に関しては、・SCUの整備状況の経年的調査、およびSCU診療の高度化を目的に、陸上自衛隊の野外手術システム有用性を検討した。・大規模災害時におけるドクターヘリの運用調整ついて検討した。・令和元年6月に公表された「南海トラフ巨大地震の被害想定について」に基づいて重症患者発生数、県内医療機関で受け入れ可能数、地域医療搬送必要数を明らかにした。
一般病院等へのBCP策定に関しては、一般病院のBCP整備状況の現状の把握を行った。一般病院のBCP策定状況は不十分であるが、現行の制度化では災害拠点病院以外の医療施設のBCP整備の枠組みが明確でなく、BCP整備の根拠の提示とともに一般病院が整備すべきBCPの内容に関する指針が求められる。
災害時における地域包括ケアシステムに関しては、・保健介護等を提供する最小単位である地域包括ケアシステムと災害医療の関連について検討を行った。・地域全体での業務継続計画(地域BCP)について検討を行った。・医療、保健、介護・福祉も含めた地域包括BCPの基本的な策定単位は二次医療圏レベルが望ましいとし、特に保健所にその策定主体としての機能が求められることを示した。
周産期・小児医療提供体制に関しては、・実災害及び新型コロナ感染症対策における小児周産期領域の課題を抽出し解決策の検討を行った。・「周産期センター以外の分娩取扱施設(病院・有床診療所)で活用可能なBCP策定マニュアル」を作成した。・「災害時小児周産期リエゾン運用マニュアル」を作成した。・災害時小児周産期リエゾン連絡協議会の立ち上げ及び運営支援を行った。・小児周産期領域の災害情報システムPEACEの機能向上のための改修及び普及啓発活動を行った。
IoT、AIを用いた災害医療の将来像に関しては、・関係計画・施策・技術調査と社会実装課題調査を実施した。災害医療関係システムの整備状況と課題をCSCA-TTTの枠組みで整理した災害医療ICTマップを作成した。・AIの活用の前提となるのは標準化されたビッグデータの活用事例として、J-SPEEDデータを用いることで医療救護班による診療件数推移を実災害対応中に予測できる可能性を示した。
国際災害医療チームの受援に関しては、大規模災害時に国際医療支援を受け入れる場合に、効率的・効果的な受援を果たすための具体的方策を明らかにするために、①国内計画等調査、②国際標準等調査、③国際受援訓練に分けて研究した。成果として、US-DMAT/EMT 国際受援標準業務手順書(案)を開発した。
DMAT隊員のメンタルヘルスチェックにシステムに関する研究においては、実証的なエビデンスを生み出すために DMAT隊員への量的研究・インタビューを行った。病院外でCOVID-19に関する救援活動を行った隊員のPTSD症状の関連要因が、PDI、感染不安、疲労感であることを明らかにした。成果を基に医療救援者のメンタルヘルスに必要な推奨事項および所属組織として医療救援者のメンタルヘルスに重要と考えられる推奨事項を作成した。
結論
上記参照

公開日・更新日

公開日
2022-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202122003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で研究計画は影響を受けざる得なかったが、ダイヤモンド・プリンセス号へのCOVID-19対応、その後の市中感染対応、クラスター対応においては、正にこれまで培ってきた災害医療対応のノウハウが活かされた。COVID-19対応では現行の健康危機管理体制の成果と課題が明らかとなり多くの知見を得た。最終的には、多発する気象災害対応、およびCOVID-19対応で得られた知見も加味し、国土強靭化計画の具現化のための戦略・マニュアル・ガイドラインを提示できた。
臨床的観点からの成果
周産期センター以外の分娩取扱施設(病院・有床診療所)で活用可能なBCP策定マニュアル」を作成し、施設の医療従事者を対象とするWEBセミナーを、日本産科婦人科学会とともに企画し開催した。
令和元年6月に公表された南海トラフ巨大地震の被害想定(再計算値)をもとに、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、大分県、宮崎県の「医療搬送が必要数=重傷者発生数―県内の重症患者受け入れ能力」を算出した。今後は、本研究で明らかになった「医療搬送必要数」をもとに、具体的医療搬送計画を検討することが可能である。
ガイドライン等の開発
本研究班で作成したガイドライン・マニュアルは以下である。
「医療機関のための災害時受援計画作成の手引き」
「一般病院におけるBCP作成マニュアル」
「周産期センター以外の分娩取扱施設(病院・有床診療所)で活用可能なBCP策定マニュアル」
「災害時小児周産期リエゾン運用マニュアル」
「災害医療コーディネーター活動マニュアル」
受援医療機関の定型的評価基準「病院行動評価群」ガイドライン
「US-DMAT/EMT 国際受援標準業務手順書(案)」
その他行政的観点からの成果
新型コロナウイルス感染症対応に関して、これまでDMATロジスティクス研究によって培われてきた本部運営の情報集約・共有、医療資源調整、多機関連携等のノウハウが、各都道府県のコロナ調整本部で活かされた。具体的には41都道府県コロナ調整本部にDMAT関係者が参画し、27都道府県ではDMATが常駐した。またクラスター発生病院/施設支援宿泊療養施設においても300か所以上の支援を行った。本研究班の成果が社会的に還元され、病院・施設関係者、行政、国から高い評価を得た。
その他のインパクト
国際医療チームの受援に関しては米国と国際受援訓練(米国保健福祉省、米国大使館等と連携)を実施し成果としてUS-DMAT/EMT 国際受援標準業務手順書を開発した。ダイアモンドプリンセス号の米国人325人を送還させる任務においては米国DMATとは本研究班を通しての関係があり円滑な連携活動が行われ米国大使館からも評価を得た。J-SPEEDはWHOにより高く評価され世界標準のMinimum Data Setとして採用された。日本の災害医療ツールが国際的に採用され国際貢献がなされた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
202122003Z