文献情報
文献番号
202122001A
報告書区分
総括
研究課題名
特定行為研修の修了者の活用に際しての方策に関する研究
課題番号
19IA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
真田 弘美(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
- 須釜 淳子(金沢大学 医学系研究科)
- 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
- 磯部 陽(独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 外科)
- 太田 秀樹(医療法人 アスムス)
- 仲上 豪二朗(東京大学大学院医学系研究科 老年看護学/創傷看護学分野)
- 吉田 美香子(東北大学大学院医学系研究科ウィメンズヘルス・周産期看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,230,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、特定行為の実施が患者、看護師、医師ならびに医療システムに与える影響を、定量可能かつ全国共通で使用できる恒久性のある指標を用いて示すことである。この目的を達成するために、2020年度から2021年度にかけて、これまで文献レビューやヒアリングにて網羅してきたアウトカム指標の実施可能性を検証することを目的に、研究3.「特定行為研修修了者の行為実践によるアウトカム評価のための予備的研究」として、前向きコホート研究を実施した。さらに、2021年度は特定行為の実施を評価できる全国規模のビッグデータを構築し、ベンチマークを示すことを目的とし、研究4.「特定行為研修修了者の行為実践によるアウトカム評価のための全国研究」を実施した。
研究方法
研究デザインは、研究3.4ともに前向きコホート研究である。研究3では、曝露群を特定行為研修修了者が所属する施設、対照群を特定行為研修修了者が所属しない施設、とした。急性期医療領域、慢性期医療領域、在宅領域の3つのセッティングを設けて対象施設を選定し、リクルートを実施した。研究4では、修了者が所属する全国の施設に研究協力依頼状を送付し、リクルートを実施した。アウトカム指標は、研究1-1で網羅した指標を用いた。データについては、研究3、4ともにクリンクラウド株式会社の協力を得て研究者らが作成したWeb上のデータ入力システムへ各施設、事業所が選定した看護師が入力を行い、これを研究班が回収した。
結果と考察
研究3では、研究参加依頼状を郵送した344機関中、最終的にデータ入力のあった54機関(曝露群:37機関、対照群: 17機関)から得られたデータを解析に用いた。曝露群は175名、対照群は58名の患者・利用者が対象となり、急性期医療領域は曝露群139名、対照群33名、慢性期医療領域は曝露群25名、対照群15名、在宅領域は曝露群10名、対照群8名であった。修了者は36名、修了者でない看護師は23名が対象となった。Barthel Indexの観察開始時と観察終了時の差分について、急性期医療領域において、曝露群と対照群の差分はそれぞれ13.9 ± 25.2 vs 7.2 ± 10.4(p = 0.182)であり単変量解析では有意差はみられなかった。欠損値を多重代入法で補完した上で、性別、介護度、観察開始時Barthel Index合計得点、患者像で調整を行なった重回帰分析の結果、曝露群の場合Barthel Indexの差分が対照群に比較して11.3点有意に高値であった(p = 0.045)。研究4では、2877名の修了者へ依頼状を郵送し、研究への参加申し込み者は 324名、その後参加辞退が13名、データ入力未実施が176名であり、最終的に148名の修了者が研究に参加した。参加機関は52機関であった。Barthel Indexの観察開始時と観察終了時の差分について修了者の属性をSTN(概ね5年以上の臨床経験のもとに特定行為研修を修了した者)、 CN(認定看護師資格を保有している特定行為研修修了者)、CNS(専門看護師資格を保有している特定行為研修修了者)、NP(診療看護師である特定行為研修修了者)の4分類とし、修了者の属性で違いがみられるか、年齢、性別、要介護度、セッティングを調整変数とした重回帰分析を実施した。結果、修了者の属性ではBarthel Indexの上昇に有意差はみられず、女性であることと開始時のBarthel Index合計点が低いことがBarthel Indexの上昇に有意に関連していた。脱水、電解質異常、褥瘡による感染症、観察期間の褥瘡の保有、尿路感染については、どのセッティングでもアウトカム発生がみられた。これらの結果より、Barthel Indexや脱水、電解質異常、褥瘡による感染症、観察期間の褥瘡の保有、尿路感染症について、全国共通の恒久的なアウトカム指標として使用できる可能性があると考えられた。
結論
文献レビューやヒアリングを経て網羅した指標について前向きにデータを収集し、患者QOLアウトカムであるBarthel Indexについて修了者の効果を示すことが可能であった。今後、医療の安全性、医療者の労働時間、コストに関するアウトカムも含め、各修了者属性で同様の傾向がみられるか、修了者の人数や経験年数でアウトカムに違いが見られるか、といったことを調べていくことで、修了者の適切な配置、効果的な活用方法を政策として提言できるだろう。
公開日・更新日
公開日
2022-06-23
更新日
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