ネットワーク社会における地域の特性に応じた肝疾患診療連携体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202121008A
報告書区分
総括
研究課題名
ネットワーク社会における地域の特性に応じた肝疾患診療連携体制構築に資する研究
課題番号
21HC1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 磯田 広史(佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター)
  • 鳥村 拓司(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
  • 日浅 陽一(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
  • 寺井 崇二(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策には居住地域による取り組みの違いがみられ、より良い肝炎医療を提供するためには、地域の特性に応じた対策を構築する必要がある。研究代表者金子らは、先行研究において、肝炎診療の地域差の改善には、Information and Communication Technology(以下ICT)等を利用することが極めて有用であることを報告した。本研究では、先行研究で必要性と有用性が示されたICT等を駆使して、地域の特性を生かした肝炎患者の診療連携体制を確立する方法論やモデルケースの創出を行う。
研究方法
本研究には、肝炎診療連携へのICT等の応用を開始している愛媛、佐賀、石川及び県土が広い、島嶼部を有する、人口密集地を有するなどICT等の応用が喫緊の課題である鹿児島、福岡、新潟、各県の拠点病院の研究分担者が、以下のように各県毎に様々な方式で肝炎診療連携にICT等を活用する。さらに疫学班(研究代表者 田中純子)と連携し、各都道府県の肝炎診療連携体制の現状や問題点を様々なパラメー-ターを用いて比較分析する。また政策拡充班(研究代表者 考藤達哉)と連携し、肝炎患者の病診連携指標を用いて評価する。
結果と考察
今年度、石川県は、いしかわ診療情報共有ネットワーク、佐賀県はピカピカリンク、福岡県(久留米地域)はアザレアネット、愛媛県はHiMEネット、新潟県(佐渡島)はさどひまわりネット、といった地域医療情報ネットワーク(以下、地域ネット)、鹿児島県はケーブルテレビといった既存のICT等の肝炎診療連携への応用を開始した。石川県では、拠点病院が従来紙ベースで行ってきた肝炎ウイルス陽性者のフォローアップにICTを利用することで、より正確に肝炎ウイルス陽性者の専門医療機関の受診状況を把握できることを明らかにした。これにより、フォローアップ事業の効率化を図ることが可能と考えられた。また佐賀県では、ICTを利用して肝炎ウイルス陽性者の拾い上げの取り組みを開始した。さらにオンライン会議システムを用いた遠隔診療を予定している。愛媛県では、肝癌に対する分子標的薬、レンバチニブを服用中の患者を対象にHiMEネットのSNSアプリを用いた薬薬連携を開始した。これにより、診察医の処方意図、副作用のモニタリング等に関して、処方医と薬剤師間で迅速な情報共有が可能になった。一方、福岡県筑後地区、新潟県佐渡島には、それぞれ地域ネットが存在していたものの、これまで肝炎診療連携に関する運用実績がほとんど存在しなかったが、今年度から肝炎診療連携への利用を開始した。今後の積極的な運用により、それぞれの地区の肝炎診療レベルの改善に利用されることが期待できる。鹿児島県には利用可能な地域ネットが存在しなかったため、島嶼部において世帯加入率の高いケーブルテレビを用いた啓発活動を開催した。高齢者には不慣れなインターネット回線を使用しないため視聴が容易であり、島民から一定の評価をえた。
考藤班員は、令和元年度、令和2年度、全国の拠点病院を対象とした病診連携指標調査を行った。診療情報提供書、患者手帳等を使っての診療連携実施率は20-30%にとどまっていた。今後はICT等を活用して、かかりつけ医から専門医療機関や拠点病院への診療情報提供共有を円滑に行うためのシステム構築等が必要と考えられた。田中班員は、様々なパラメーターから都道府県毎の肝炎対策をレーダーチャートにより、視覚化した。
肝炎ウイルス検査を受検したにもかかわらず担当医が結果を患者に説明していない事例、肝炎ウイルス検査の結果説明を受けたにもかかわらず患者が結果をしっかりと理解できていない事例が存在する。これらの問題点を解決するために、肝炎ウイルス検査や治療情報を紙媒体や電子媒体として記録し、患者自身が携帯することが有用と思われる。今回、患者自身が肝炎ウイルス検査の記録、携帯を希望するかどうか、希望するのであればどのような記録法(紙、電子媒体など)を希望するかのアンケート調査を行うこととした。今年度は班員間で討論を行い、調査内容を決定した。令和3年度末時点で、金沢大学医学倫理審査委員会で一括審査中である。アンケートは、令和4年度に、金沢大学、鹿児島大学、佐賀大学、久留米大学、新潟大学、及び富山、福井の拠点病院で実施予定である。
結論
今年度、班員が各都道府県で、既存の地域ネットやケーブルテレビなどの様々なICT等を肝炎診療連携に使用を開始した。肝炎診療連携の改善における有用性が示されたが、様々な問題点も明らかなになった。次年度以降も、それぞれの地域でICT等の肝炎診療連携への応用を拡充し、効果検証を行い、長所や短所を明らかにする。また疫学班、政策拡充班と連携し、ICT等を用いた様々な取り組みの有用性を検証していく。

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202121008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,975,000円
(2)補助金確定額
13,975,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,808,022円
人件費・謝金 926,421円
旅費 219,290円
その他 1,796,267円
間接経費 3,225,000円
合計 13,975,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
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