肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究

文献情報

文献番号
202121005A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎総合政策の拡充への新たなアプローチに関する研究
課題番号
20HC2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 是永 匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
  • 田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 金子 俊(東京医科歯科大学  消化器内科)
  • 大座 紀子(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 瀬戸山 博子(熊本労災病院 消化器内科)
  • 西井 正造(公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップにおいて、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、改善策を提示しにくい状況である。
本研究班では以下を主な目的とした。①先行研究班(指標班)で作成した肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業、医療の程度と質を評価する指標を継続調査する。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)(2011年、2017年、2018年、2020年実施)の結果を比較解析することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、受検行動規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。④一般国民に対する波及力の高い肝炎啓発方法の確立を目指して新規エディテインメント資材を開発する。
研究方法
肝炎医療指標、病診連携指標は全国肝疾患診療連携拠点病院(以下、拠点病院)と肝疾患専門医療機関(以下、専門医療機関)を対象に実施した。専門医療機関に対しては、施設認定要件と肝炎医療、病診連携状況調査を兼ね備えた内容の調査を、前年度と同じ10都道府県を対象に実施した。自治体に関しては、厚労省の自治体事業調査結果から指標関連結果を抽出し指標値を算出、評価した。職域に関しては、職域検診における肝炎ウイルス検査受検率・専門医受診確認率の現状調査を実施した。拠点病院事業指標については各指標の経年推移を解析した。
令和2年度に認識受検、非認識受検の要因究明を含めた受検率全国調査(国民調査2020)を実施した(対象者数20,000人)。令和3年度に本調査結果の解析を実施した。
多施設共同でウイルス肝炎患者コホートを設定し、肝線維化マーカー(APRI、FIB-4)の経時的推移を検討した。B型、C型慢性肝疾患におけるマルコフモデルによる肝病態の推移解析を行った。
ライフジャーニーを体験できる肝炎啓発エデュテインメント資材を開発した。
結果と考察
肝炎医療指標、自治体事業指標、拠点病院事業指標
拠点病院においてはCOVID-19感染拡大後も均てん化された肝炎医療が提供されていた。病診連携指標は専門医療機関とかかりつけ医の診療連携に比べて、専門医療機関と拠点病院との診療連携率は低かった。自治体事業指標は過去3年間の指標調査結果を解析し論文化した。職域健診での肝炎ウイルス陽性者は、再勧奨することで組合健保では40%、協会けんぽでは60%受診することを明らかにした。拠点病院事業指標では、これまで対面での実施が中心であった啓発活動、研修事業において実施数が減少し、COVID-19の影響を強く受けていた。ウィズ・コロナにおける事業のあり方について検討を要する。
国民調査2020の解析
国民調査2020における認識受検率は、HBV 17.1%、HCV 15.4%で前回よりも低い値であった。また、検査認識受検率はHBV 71.1%、HCV 59.8%で前回からほぼ変化なしであった。かかりつけ医を持っているものは全体で61%であり、高齢なほど高い傾向がみられた。また健康診断で「要再検」となったときの対応は、20・30代は家族・友人に相談やインターネットで情報収集が多かったが、50代以上はかかりつけ医を受診するものが多かった。検査結果を陽性と認識していた152人のうちで、医療機関を受診したものは129人(89%)であった。そのうち、最初にかかりつけ医を受診したと回答した67人のうち74%は最終的に肝臓専門医を受診していた。
肝硬変移行率評価指標(マルコフモデルでの解析)
マルコフモデルによるC型肝炎の病態推移解析では、肝炎治療により、肝線維化進行、肝病態進行、肝発癌が抑制されることが示され、 慢性肝炎>代償性肝硬変>非代償性肝硬変の順に治療による肝線維化抑制へのインパクトがあることが示唆された。
肝炎啓発エデュテインメント資材の開発
「肝炎すごろく」を開発した。本すごろくプレイを通じて、「肝臓を健康に保つために必要な生活習慣・行動」、「肝炎ウイルス検査受検・受診・受療の必要性」、「肝炎医療コーディネーターの役割の認知」などの必要学習項目の習得が可能なことが示唆された。
結論
拠点病院向け肝炎医療(29指標)、専門医療機関向け肝炎医療(16指標)、診療連携(6指標)、自治体事業(19指標)、拠点病院事業(20指標)を継続調査した。指標結果を各施設、都道府県の担当者で共有し、課題を明らかにすることで、医療・事業改善の契機となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202121005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,300,000円
(2)補助金確定額
35,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,443,768円
人件費・謝金 4,940,299円
旅費 48,000円
その他 11,721,933円
間接経費 8,146,000円
合計 35,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
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