事業場における過重労働による健康障害防止対策を促進させるための研究

文献情報

文献番号
200836014A
報告書区分
総括
研究課題名
事業場における過重労働による健康障害防止対策を促進させるための研究
課題番号
H20-労働・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 筒井 隆夫(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 寶珠山 務(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 堤 明純(産業医科大学 産業医実務研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、長時間労働等の過重労働により発生・増悪する循環器疾患等の健康障害の防止策について、特に、小規模事業場(支社支店型、請負資本関係型、構内協力型、地域集積型、系列型、独立型に分類)において有用なものを考案して提言にまとめることを目的としている。
研究方法
本年度は、1)小規模事業場の実態調査、2)労働時間短縮措置を実施した企業の調査、3)Vital Exhaustion(VE)調査票の研究、4)残業時間が睡眠時間や生活時間に与える影響の調査、5)勤務医や開業医の過重労働と職業性ストレスに関する調査、6)情報公開用ウェブサイト(過重労働対策ナビ)の利用状況調査を実施した。
結果と考察
1)小規模事業場501ヶ所の回答によると、支社支店型で面接指導の実施率が高く、請負資本関係型で地域産業保健センターの利用率が高かった。過重労働が生じる原因として「客先や元請けからの突発の業務」が最も多かった。2)業務効率化、新たな付加価値創造、有能な女性社員の継続雇用などの目的で労働時間短縮を推進した企業は、当該時期の業績も良好であった。3)2事業場1168人にVEを含む健康調査を実施し、その結果とその後1年間に発生した11件の精神疾患との相関を多変量ロジスティック回帰で分析すると、「VE得点18点以上」でオッズ比11.2(95%信頼区間:1.30-95.73)、「睡眠時間5時間未満」で9.3(2.28-37.98)と有意な関連を認めたが、「GHQ12項目版の8項目以上」は有意ではなかった。4)50人の生活時間を1年間調査すると、残業時間が増加すると、まず生活時間(特に、趣味・娯楽、会話、家事の時間)が削減され、次に睡眠時間が減少していた。5)福岡県医師会会員1646人の過重労働と症状を尋ねると、努力・報酬不均衡状態の医師が10%、CES-Dにより抑うつ状態と考えられた医師が18%も認められた。ストレス要因としては、報酬の少なさ・事務仕事の過多・長時間の拘束・短い余暇が多かった。6)「過重労働対策ナビ」では、事業場の事例、書式、アクションチェックリストなどの実務に関連する内容が多く利用されていた。主な検索エンジンで「過重労働」や「過重労働対策」で検索すると、本サイトが1位又は2位でヒットした。
結論
小規模事業場では、面接指導等の場所と機会の確保が重要と考えた。VE調査票は精神疾患のスクリーニングにも有用であった。残業時間が増加すると、睡眠時間よりも先に生活時間(特に、趣味・娯楽の時間、会話時間)が削減される傾向を認めた。開業医も勤務医も抑うつ状態の有病率が一般の労働者よりも高かった。

公開日・更新日

公開日
2009-06-23
更新日
-