暑熱作業時の必要水分補給量に関する研究

文献情報

文献番号
200836013A
報告書区分
総括
研究課題名
暑熱作業時の必要水分補給量に関する研究
課題番号
H20-労働・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 晋一(労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 哲(労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター)
  • 東郷 史治(労働安全衛生総合研究所 作業条件適応研究グループ)
  • 榎本 ヒカル(労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
種々の暑熱条件別の必要水分補給モデルの開発を行い、気象データから夏期屋外作業者の暑熱負担を予測するとともに、モデルの妥当性を実験的に検証する。さらに現場でその有効性を評価することにより、各種暑熱作業現場に適切な水分補給のガイドラインを提案する。
研究方法
・暑熱環境評価の国際規格ISO7933に採用されている暑熱負担予測モデル(PHS)の動作特性を検討し、改良版PHSmを作成した。
・PHSmをもとに、最近三年間の東京、新潟、愛知、大阪、広島、福岡の1時間ごとの気象データベースを用いて、夏期屋外作業時の発汗量や深部体温を予測した。熱中症で救急搬送された人が最も多かった日の気象データをもとにした屋外作業者の総水分喪失量と深部体温を予測した。
・PHSmモデルの妥当性・信頼性を検討するための被験者実験システムを構築し、人工環境室で予備実験を行った。気温35℃、相対湿度50%、安静条件で、健康な成人男性4名を2時間暑熱曝露した。この時PHSmで予測される必要水分量を飲水する場合としない場合で暑熱負担を比較した。

結果と考察
・現行PHSモデルの動作特性を広範な暑熱曝露条件で検討したところ、作業中に強い暑熱ストレスを受け体温が上昇した場合、長時間の休憩をしても最初の深部体温レベルに戻らないことがあった。そこでこの問題点を改善し、改良版PHSmを作成した。
・日本の夏期の気象データから屋外作業者の暑熱負担を予測したところ、透湿性が悪い作業服を着用した場合、多量の発汗と高体温が予測された。また、熱中症患者が最多であった日の屋外作業では、低代謝率作業でも毎時0.7リットル以上の水分補給が必要であり、中程度代謝率以上の作業では深部体温が許容基準を越えることが予測された。
・人工環境室での被験者実験により、飲水がある場合は飲水がない場合に比べ体重減少が抑制され予測必要水分量はほぼ妥当であること、飲水により直腸温および皮膚温は低く抑えられ主観的負担が軽減し、視覚反応時間の改善や心拍回復機能低下の抑制傾向などが観察された。
結論
暑熱負担予測モデルの改良版(PHSm)を開発し、日本の夏期の気象データから屋外作業者の暑熱負担を予測評価し良好な結果を得た。また、暑熱ストレス別・作業強度別必要水分補給量の予測表(暫定版)を作成し、人工環境室での被験者予備実験の結果からPHSmの妥当性が一部確認された。

公開日・更新日

公開日
2009-06-23
更新日
-