文献情報
文献番号
202121001A
報告書区分
総括
研究課題名
肝がん・重度肝硬変の治療に係るガイドラインの作成等に資する研究
課題番号
H30-肝政-指定-003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
- 考藤 達哉(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
- 工藤 正俊(近畿大学 医学部 消化器内科)
- 久保 正二(大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵外科学)
- 宮田 裕章(慶応義塾大学医学部)
- 建石 良介(東京大学大学院医学系研究科消化器内科)
- 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
- 江口 有一郎(佐賀大学 医学部附属病院 肝疾患センター)
- 吉治 仁志(奈良県立医科大学 消化器内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
47,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
(1)National Clinical Database(NCD)のプラットフォーム上に構築した肝癌・非代償性肝硬変患者レジストリを用いて、頻回入院が必要になる肝癌・非代償性肝硬変症例データを収集する。登録施設に対して、症例登録にともなうインセンティブを支払う。
(2)肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業で収集された臨床個人票を収集し分析する。
(3)診療ガイドライン作成における査読作業を効率化するシステムを開発する。
(2)肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業で収集された臨床個人票を収集し分析する。
(3)診療ガイドライン作成における査読作業を効率化するシステムを開発する。
研究方法
(1) NCDのプラットフォーム上に構築した肝癌・非代償性肝硬変患者レジストリを用いて、同参加施設に対して、登録を依頼した。2022年1月に一旦登録サイトを閉じ、中間解析を行った。
(2)各都道府県から厚労省経由で送付される、臨床調査個人票をデータベースに入力し、基本統計について解析を行った。
(3)昨年度構築したクラウド上で診療ガイドライン改訂作業に必要な文献管理、Clinical Question (CQ)管理、文献1次・2次選択、不一致統合を行えるシステムを用いて、肝癌診療ガイドライン第5版を作成し、上梓した。
(2)各都道府県から厚労省経由で送付される、臨床調査個人票をデータベースに入力し、基本統計について解析を行った。
(3)昨年度構築したクラウド上で診療ガイドライン改訂作業に必要な文献管理、Clinical Question (CQ)管理、文献1次・2次選択、不一致統合を行えるシステムを用いて、肝癌診療ガイドライン第5版を作成し、上梓した。
結果と考察
(1) 2021年度の有効入力件数は、初回治療情報5,729件、入院情報13,548件であり、初年度(2018年度)から計4期の累計で初回治療情報27,758人、入院情報51,333件分の登録を得た。
2020年度登録までのデータセットを活用して詳細な解析を進めた。入院ベースで見た肝癌患者の臨床情報(29,489入院)のうち、Child-Pugh分類A, B, Cは、それぞれ68%, 20%, 5%, (分類不能6%)、BCLC stage分類0,A,B,C,Dはそれぞれ、22%, 17%, 30%, 15%, 5%, (分類不能または非肝細胞癌11%)であった。背景肝疾患では、B型、C型、非B非C型がそれぞれ12%, 37%, 42%であった。主な治療法では肝切除が18%、アブレーションが23%、経動脈的化学塞栓療法が34%、全身薬物療法が11%であった。さらに、BCLC stage毎の治療法を評価したところ、BCLC 0/Aでは肝切除よりもアブレーションが行われる頻度が高かった。入院ベースで見た非代償性肝硬変患者の臨床情報(10,077入院)のうち、Child-Pugh分類A, B, Cは、それぞれ10%, 37%, 46%, (分類不能8%)、背景肝疾患は、B型、C型、非B非C型がそれぞれ8%, 25%, 55%であった。治療薬の中では、新しい機序による利尿剤であるバソプレシン受容体V2拮抗薬が、従来から使用されているループ利尿薬やアルドステロン拮抗薬に加えて、実に38%の入院において使用されていた。
(2) 2021年4月より対象となる「高額療養費算定基準額を超えた月」を4月から3月に短縮し、肝がんの通院治療(分子標的薬を用いた化学療法※に限る)も新たに対象とした。月あたりの登録件数が20~40件程度から70~90件程度と倍増していた。
(3) 開発したガイドラインシステムを用いて、「肝癌診療ガイドライン2021年版」において文献レビューを行った。1次スクリーニングの候補論文計10,790編を登録したのち、1次スクリーニングで選択された1,213編の論文についてPDFファイルをクラウド上に保管、続いて2次スクリーニングをシステム上で行った。各査読者の進捗状況をリアルタイムで把握できるなど、作業の大幅な効率化が可能であった。2021年10月に同ガイドラインを上梓した。
2020年度登録までのデータセットを活用して詳細な解析を進めた。入院ベースで見た肝癌患者の臨床情報(29,489入院)のうち、Child-Pugh分類A, B, Cは、それぞれ68%, 20%, 5%, (分類不能6%)、BCLC stage分類0,A,B,C,Dはそれぞれ、22%, 17%, 30%, 15%, 5%, (分類不能または非肝細胞癌11%)であった。背景肝疾患では、B型、C型、非B非C型がそれぞれ12%, 37%, 42%であった。主な治療法では肝切除が18%、アブレーションが23%、経動脈的化学塞栓療法が34%、全身薬物療法が11%であった。さらに、BCLC stage毎の治療法を評価したところ、BCLC 0/Aでは肝切除よりもアブレーションが行われる頻度が高かった。入院ベースで見た非代償性肝硬変患者の臨床情報(10,077入院)のうち、Child-Pugh分類A, B, Cは、それぞれ10%, 37%, 46%, (分類不能8%)、背景肝疾患は、B型、C型、非B非C型がそれぞれ8%, 25%, 55%であった。治療薬の中では、新しい機序による利尿剤であるバソプレシン受容体V2拮抗薬が、従来から使用されているループ利尿薬やアルドステロン拮抗薬に加えて、実に38%の入院において使用されていた。
(2) 2021年4月より対象となる「高額療養費算定基準額を超えた月」を4月から3月に短縮し、肝がんの通院治療(分子標的薬を用いた化学療法※に限る)も新たに対象とした。月あたりの登録件数が20~40件程度から70~90件程度と倍増していた。
(3) 開発したガイドラインシステムを用いて、「肝癌診療ガイドライン2021年版」において文献レビューを行った。1次スクリーニングの候補論文計10,790編を登録したのち、1次スクリーニングで選択された1,213編の論文についてPDFファイルをクラウド上に保管、続いて2次スクリーニングをシステム上で行った。各査読者の進捗状況をリアルタイムで把握できるなど、作業の大幅な効率化が可能であった。2021年10月に同ガイドラインを上梓した。
結論
肝癌・非代償性肝硬変に関する入院毎のデータが順調に収集されている。肝癌の再発症例における治療選択などの診療実態が明らかとなり、ガイドラインの策定に資するデータベースが構築できていると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2023-12-13
更新日
-