国内未承認エイズ治療薬等を用いたHIV感染症治療薬及びHIV感染症至適治療法の開発に係る応用研究

文献情報

文献番号
202120028A
報告書区分
総括
研究課題名
国内未承認エイズ治療薬等を用いたHIV感染症治療薬及びHIV感染症至適治療法の開発に係る応用研究
課題番号
21HB2006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
天野 景裕(東京医科大学 医学部 臨床検査医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 福武 勝幸(東京医科大学 医学部)
  • 木内 英(東京医科大学 臨床検査医学分野)
  • 篠澤 圭子(東京医科大学 血液凝固異常症遺伝子研究寄附講座)
  • 関根 祐介(東京医科大学病院 薬剤部)
  • 味澤 篤(がん・感染症センター都立駒込病院感染症科)
  • 菊池 嘉(国立国際医療センター 戸山病院)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
  • 藤井 輝久(広島大学 病院輸血部)
  • 四柳 宏(東京大学 医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
  • 萩原 剛(東京医科大学 臨床検査医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本ではHIV感染者の中に血液製剤を通してHIV感染した血友病患者の割合が高く、現在も数パーセント程度を占めている。これらの患者は感染から長期間が経過しているために免疫機能低下の進行した症例が多く、慢性肝炎などの合併症も深刻である。海外で有効性が認められ承認されているHIV感染症とその随伴症状としての各種日和見感染・腫瘍・肝炎の最新の治療薬の情報を収集するとともに薬剤を迅速に導入して、血液製剤による感染者およびその他の病状の進行が早い感染者等で国内の承認薬だけでは治療が難しい患者の治療を行うことは重要な意味を持っている。また、血液凝固因子製剤によりHCVに感染した血友病患者等の肝炎はウイルス量が多く難治性であり、HIV感染症との合併により進行が早く肝癌の発生も多かったため、研究班では早くから強力な治療法の導入に努力した。HIV感染症の治療を充実するため国内未承認薬の使用も含めて医療機関が対応できるよう必要な薬剤を迅速に使用できる体制を作り、至適治療法を開発することが本研究の目的である。
患者への人道的配慮と倫理的配慮を行いつつ、適切な治療が行えるよう現場の臨床医の個人輸入にかかる負担を軽減し、公的研究費により薬剤を研究代表者の医師個人輸入により輸入・備蓄しておき必要時に提供して、患者の生命を保護しようとするものである。
研究方法
国内の未承認薬を研究班として研究代表者の医師個人輸入として輸入備蓄し、HIV感染症の診療拠点病院等において、未承認薬による治療が必要な患者の治療を行うために、患者の同意のもとに患者の要望に沿った研究班の薬剤を提供し、主治医が治療を行える環境を作り、維持していく。
抗HIV薬やHIV感染症に発生する日和見感染症、腫瘍の治療に必要な薬剤について提供する。新規の治療薬の開発に着目して研究対象を吟味するため分担研究者の意見を聞き、対象薬剤や疾患の検討を行う。提供する治療薬は米国あるいはEUで既に承認されている薬剤であり、承認内容に沿って用いることとしており、国内未承認薬ではあるが他に有効な治療がなく入手が困難である薬剤を人道的配慮により提供し、治療を受ける患者にとって不利益が起こらないよう配慮する。日本人についての臨床経験がない薬剤であり、有効性や有害事象についての成績は海外の成績しかないことを患者に十分に説明し同意を得てから使うこととしている。また、万一の重篤な副作用の発生に対しての患者への保証を確保するために、医師賠償責任保険を用意して、実際の治療に当たる研究協力者に対して加入を推奨している。患者の個人情報の保護には万全を期しており、同意書以外には氏名が記載されることは無く、委託業者も同一のCROを継続して使い、個人情報の管理を厳重に行う。

結果と考察
結果:この研究は1996年度に当時の厚生省薬務局研究開発振興課との協力により、HIV感染症およびエイズとその随伴症状として日和見感染・腫瘍・肝炎の最新の治療法を迅速に導入するための一つの方策として開始された。この研究は行政機構との協力により、治療に必要な国内未承認薬で治療し、患者の生命を守る人道的な見地に立ちながら、貴重な臨床経験を収集して全てのHIV感染者の治療に有用な治療薬の開発に貢献してきた。研究班の発足当時、AIDSによる死亡者が急激に増加していた中で、新規多剤併用抗HIV療法の治療薬を導入し、死亡者の減少を米国と比べて1年以内の遅れに収めたことなど、人道的救命に寄与してきた。その後も、多くの国内未承認の日和見感染症治療薬や母子感染予防薬、乳幼児のための抗HIV薬などを継続的に供給している。2021年はダラプリム、スルファジアジン、静注用レトロビル、小児用エピビル、小児用レトロビル、小児用ビラミューン、小児用テビケイを供給した。
考察:1996年にエイズ治療薬の今後の取り扱いについての方針(厚生省薬務局の文書)が示され、①迅速審査の実施 ②拡大治験の実施 ③治験の対象とすることが困難な治療薬の提供(研究班の仕組み)が開始された。その施策の一つとして、本研究は1996年10月に当時の厚生省薬務局研究開発振興課との協力により、国内に承認薬がないHIV感染症およびエイズとその随伴症状としての日和見感染症・腫瘍・ウイルス性肝炎等に国外の承認薬による適切な治療法を迅速に導入するための方策として開始され、25年にわたり継続している。本研究が毎年継続的に実施されていることが、HIV感染症の治療環境を整えており、重要な役割を果たしている。
結論
新たに開発されたHIV感染症の治療薬の導入は、今後も感染者の生命を守るために迅速でなければならず、また、その使用は適切でなくてはならない。本研究は今後ともHIV感染症に係る適切な治療の発展のために重要であり、継続的な活動が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
100,000,000円
(2)補助金確定額
100,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,474,611円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 22,607,732円
間接経費 20,000,000円
合計 52,082,343円

備考

備考
緊急必要時に対応できるように対象薬剤の購入・備蓄を行っているが、使用期限の問題があり、在庫管理は困難である。今年度はCOVID-19に関連する輸入への制限などの問題があり、特に使用期限の短いものが多かったことも影響し、購入薬剤をギリギリまで少なくして対応したため物品購入費が少なくなった。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-