非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究

文献情報

文献番号
202120026A
報告書区分
総括
研究課題名
非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究
課題番号
21HB2004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
藤谷 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 潟永 博之(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 大金 美和(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院)
  • 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院・感染管理部)
  • 小松 賢亮(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 長江 千愛(聖マリアンナ医科大学 小児科)
  • 石原 美和(神奈川県立保健福祉大学実践教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
69,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、非加熱血液製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養上の問題点の実態を多くの側面から調査し、支援するとともに、適切な医療・ケア・支援を長期にわたり地域格差なく提供できる体制の構築に貢献する事が目的である。
研究方法
【サブテーマ1:医学的管理・医療連携・受療支援】1)ACC救済医療室が病病連携を行った症例の検討を行った。医学的には肝疾患関連の支援症例が多く、福祉や医療費に関する情報の支援を行った症例も多かった。虚血性心疾患のスクリーニングは有用であった。2)北海道地区において、長期療養支援体制構築のための実証研究として、個別リハビリ検診とアンケート調査、虚血性心疾患スクリーニングテストを行い、3つのブロック拠点病院による、「北海道薬害被害者支援プロジェクト」を立ち上げた。北関東・甲信越地域において、地域特性を踏まえたうえでの長期療養体制の構築のために、県内医療体制の見直しと、関連職員を対象とした教育・啓発の実践を図った。研修会のWEB開催により遠隔地の施設からの参加が実現し、有用と考えられた。さらに、既存の新潟医療関連感染制御コンソーシアムの枠組みを、HIV 診療においても活用する準備を行った。
【サブテーマ2:運動機能・ADLの低下予防】1)国立国際医療研究センターを含む全国5施設にてリハビリ検診を実施し、運動機能およびADLのデータを収集した。評価に基づく運動指導を行うとともに運動指導動画を製作してスマートフォン・PCで利用できるようにした。2)生活習慣病をテーマにしたオンラインイベントを開催し、運動指導内容もWEB公開した。3)在宅での医療機器の利用による表面筋電気刺激による筋力増強についての前向きランダム化クロスオーバー試験より、筋力低下予防への効果が示唆された。
【サブテーマ3:神経認知障害・心理的支援】非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の精神健康、メンタルヘルスに関する調査研究のレヴューを行った。Pubmedと医中誌 にて検索を行い、研究報告書類も調査対象とした。対象患者では精神健康に何らかの問題がある者は半数以上であることや、一般住民よりも精神健康上の問題を有している可能性があること、認知機能障害の有病率は48%であったこと、同年代の一般集団よりも、日常生活の悩みやストレスを有していることが報告されていた。
【サブテーマ4:生活実態・生活レベルでの健康維持】1)就労年代の症例20名の構造的インタビューより、就労に影響する課題として、身体的な課題、心理的な課題ともに多数挙げられた。2)生活圏と医療圏の問題の抽出と支援として、手法a)患者のインターネット利用環境調査を実施、219名から回答を得、インターネットは86.8%が利用可、zoom等のオンラインビデオ通話は62.6%が利用可であった。手法b)地域の訪問看護師が月1回継続的に健康訪問相談を行い、コロナ禍で外来受診間隔があく状況を補い、貴重な相談機会とり事例に合わせた助言や支援ができた。手法c)アプリを活用して、患者自身が健康状態と生活状況の入力をすることで自己管理を行い、その入力内容を相談員が把握して電話等による助言や3ヶ月に1度レポート送付を行う双方向の個別支援を実施した。コロナ禍での体重増や血圧の上昇があった。手法d)リハビリ検診に参加した患者の満足度アンケートを実施した。患者同士の交流や情報交換をしたいという感想が多く、検診会形式の再開を望む声があった一方、少数ではあったが個別検診を希望する者もいた。手法e)エイズ治療・研究開発センター近隣に転居してきた独居の被害者2名に対し、転居前後の健康状態、家計の状況等を把握し、さらに電話や対面でのインタビューをもとに、必要なサービス等を評価し、患者の思いについてもまとめた。手法f)被害者が生きがいを持って生きていくために、2名に対し在宅就労支援により就労を実現し、社会とのつながりを持つことができるような支援を行った。
【サブテーマ5:QOL 調査】1)血友病患者の全国規模のウェブアンケートによるQOL調査を計画した。質問内容を委員会で検討し、研究計画書の作成と生命倫理委員会への申請を行った。2)25年前のインタビュー被験者の追跡調査では、半構成的インタビューを、オンラインで実施した。
結果と考察
多病化の進む長期療養においては、多疾患への目配りと病病、病診、医療と福祉の連携が重要である。運動機能の維持は患者側からも興味の高いテーマであり、ADLの低下予防、社会参加機会の維持に繋がる。生活の安定は長期療養の基礎となる要因であり、就労支援や、経済的安定への支援に加えて、支援者との接点の維持、問題解決への支援の視点が重要と考えられた。
結論
今後、インターネット等も利用しつつ、地域の特性を理解した、各地域での療養体制の構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
90,000,000円
(2)補助金確定額
88,714,120円
差引額 [(1)-(2)]
1,285,880円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 34,573,227円
人件費・謝金 20,062,191円
旅費 339,877円
その他 12,978,825円
間接経費 20,760,000円
合計 88,714,120円

備考

備考
〇聖マリアンナ医科大学 長江千愛:コロナの状況下により、1)班会議がWeb開催となり計上した旅費を使用しなかった、 2)本研究のアンケート用紙作成に時間を要し、大学のIRB承認が遅れ、アンケート調査を行えなかった、ことにより返還金が生じた。
〇神奈川県立保健福祉大学 石原美和:2月に年間契約してしまったクラウドストレージの契約を、月契約に変更したため、差額を返還した。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-