HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究

文献情報

文献番号
202120025A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究
課題番号
21HB2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
  • 矢田 弘史(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター) 血友病科)
  • 野上 恵嗣(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部小児科学講座)
  • 松本 剛史(三重大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部)
  • 木村 宏之(名古屋大学医学部附属病院精神科)
  • 安尾 利彦(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 精神科・神経科)
  • 矢倉 裕輝(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部)
  • 東 政美(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染者、血友病患者ともに治療環境の向上によりライフスタイルの変化や高齢化がみられ、そのために包括的なチーム医療が極めて重要になってきている。このようにHIV感染症および血友病にはそれぞれの課題が残されており、ことに非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の医療の質の改善に対しては、HIV感染症と血友病の両者の医療水準の向上が必要になってくる。本研究ではガイドライン・HIV診療のチーム医療・精神と心理・血友病・地域医療連携に6つの柱に注目して、チーム医療の構築と医療水準の向上を目指す。
研究方法
HIV感染症については4つの分担研究で、血友病については3つの分担研究で、HIV感染症+血友病については1つの分担研究を計画した。
結果と考察
それぞれの分担研究で研究体制の整備、プロトコルの作成などを実施した。抗HIV療法のガイドラインに関する研究ではエビデンスに基づき、かつ日本の現状に即したHIV治療の指針作成を目指して、毎年度末までに抗HIV治療ガイドラインの改訂版を発行している。今年度も改訂委員全員ですべての原稿を見直し、最新情報を加えた。抗HIV治療ガイドラインの改訂版を2022年3月に発行した。広くガイドラインを活用してもらうために、スマートフォン・タブレット端末での閲覧に適したページを研究班HP内に掲載し、閲覧利便性を充実させた。血友病患者の凝固機能及び血友病診療の包括的チーム医療に関する研究では、大阪医療センターに通院している先天性血友病A患者125人を対象に調査を行った。血友病Aの重症度と関節症の保有率には相関が認められ、特に重症血友病A患者の間では、関節症を有する患者は関節症のない患者よりも年齢が高く、一次定期補充療法を行った患者の方が関節症の保有率が低いことが示された。血友病患者のQOL向上に資するための療養に関わるコメディカルスタッフが直面している特殊性についての研究では、複雑な背景を持った血友病患者に対して適切な治療をどのように提供するのが最善であるかを検討し、看護師・薬剤師・理学療法士・臨床心理士・栄養士・社会福祉士などコメディカルスタッフは、血友病患者の療養環境改善に向けて患者や家族に寄り添いながら指導や介入をする必要があることが示された。受診中断の心理的要因に関する研究では、受診中断経験がある群(中断群13例)と、受診継続している群(継続群12例)を抽出し、両群にP-Fスタディを実施した。中断群は継続群よりも自我防衛型E-D、自罰I、無罰Mが高く、継続群は中断群よりも無責固執mが高かった。ストレスに直面した際に、自罰的になって自分の気持ちを優先した問題解決を試みることができないことが受診中断と関連している可能性が示唆された。心理面へのコロナ禍の影響に関する研究では、HIV陽性者300名を対象に、新型コロナウイルス恐怖尺度等から構成される調査票を配布した。ワクチン未接種群は既接種群に比べてHADSの不安障害尺度の得点が高かった。感染リスクによって不安が高まっている可能性が示唆された。抗HIV薬に関わる代謝酵素と薬物トランスポーターの遺伝子多型に関する研究では、同意を取得した173名から検体を採取し、代謝酵素と薬物トランスポーターの遺伝子多型の解析を行った。それぞれの遺伝子変異の保有頻度はABCG2については34%、CYP3A5は74%、MATE-1は44%、OCT2は10%、UGT1A1*6は12%、UGT1A1*28は9%であり、一般人口と同等の保有頻度を認めた。地域医療連携に関する研究では、看護連絡会議を実施し、通院患者の有無により連携に関するニーズが異なっていたこと、人材不足の現状が明らかになった。HIV感染血友病患者を含むHIV感染者への支援の充実のためには、地域医療連携の継続が必要であると考えられた。
結論
初年度は研究体制の整備が中心であった。次年度以降にデータの集積と結果の解析を行い、ガイドライン・抗HIV療法とチーム医療・精神心理・血友病・地域医療連携の各分野の融合を行うとともに、チーム医療の構築や向上を目指す。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 23,448,601円
人件費・謝金 975,351円
旅費 1,440円
その他 5,579,507円
間接経費 9,000,000円
合計 39,004,899円

備考

備考
自己資金4,899円

公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
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