血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植を含めた外科治療に関する研究

文献情報

文献番号
202120024A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植を含めた外科治療に関する研究
課題番号
21HB2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
江口 晋(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 消化器外科)
  • 江口 英利(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 上平 朝子(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 免疫感染症科)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院)
  • 玄田 拓哉(順天堂大学医学部附属静岡病院 消化器内科)
  • 嶋村 剛(北海道大学病院 臓器移植医療部)
  • 高槻 光寿(琉球大学大学院 医学研究科 )
  • 塚田 訓久(国立国際医療センター戸山病院 エイズ治療・研究開発センター)
  • 長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 臓器病態外科学 肝胆膵外科)
  • 長谷川 康(慶應義塾大学 医学部)
  • 原 哲也(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(医学系))
  • 中尾 一彦(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 消化器病態制御学分野)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 四柳 宏(東京大学 医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV/HCV重複感染者(以下重複感染者)は近年HIVによる関連死は激減、HCVによる肝疾患死が問題となっていた。重複感染者はHCV単独と比較して門脈圧亢進症が強く、急激に肝不全に陥ることが明らかとなり、脳死肝移植登録ポイントのランクアップが認められた。現在までに全国で5例脳死肝移植を行い良好な結果を得ている。2019年5月MELDスコア基準のスコア加点も実施されており、脳死肝移植適応について、重複感染者でのMELDスコアの妥当性を検証する。またC型肝硬変に多く合併する肝細胞癌(HCC)について、重複感染者の実態を調査した結果、門脈圧亢進症が軽度なChild-Pugh AでもHCC発症、以後再発を繰り返している患者も多数存在した。
当該患者は徐々に高齢化しており、様々な悪性腫瘍を発症している。背景として血友病が存在するため、標準的な治療を受けられていない可能性がある。我々が行った全国調査(血友病患者に対する肝胆膵外科手術)では、肝切除に関して切除範囲が狭められ、積極的な治療が控えられている可能性が示唆された。各ブロック拠点病院と連携、当該患者における悪性腫瘍に対して適切な治療が行われるよう情報提供を行っていく。コロナ禍で重複感染者は受診の頻度が低下、各ブロック拠点病院と連携、オンライン診療、面接の推進を図り肝不全へ陥る前に肝移植適応を診断、適切に対処していく。肝移植の適応基準と周術期の最適・最新プロトコルを確立、ACC救済医療室と連携し患者情報を共有し、適切なタイミングでの移植医療の提示を行うことを大きな目的とする。また血友病合併の重複感染者に対する適切な外科治療の提供と治療ハンドブック作成は薬害患者救命のために急務であり、独創性も極めて高い。
研究方法
①重複感染者(血友病)における悪性腫瘍等に対する外科診療、治療ガイドライン(ハンドブック)作成
② HIV/HCV重複感染者における肝移植周術期プロトコルの改訂
③ HIV/HCV重複感染者における肝細胞癌(HCC)対する肝移植(脳死、生体)の検討
④ エイズ診療拠点病院との連携(オンライン診察、面談の施行・実証研究)
⑤ 肝移植適応基準の検証・改訂
⑥ 重複感染者の肝機能検査データの蓄積と解析
結果と考察
現在までに本邦では脳死肝移植 5 例、生体肝移植 12 例が HIV/HCV 重複感染者に施行されている。脳死肝移植は全例生存で短期的には概ね良好な成績あるが、生体肝移植後短期死亡 4 例認め、生体肝移植症例は 5 年生存率 50%であった。生体肝移植後SVRを得られなかった症例での成績は悪く、DAA によって近年の症例は長期予後が得られている。近年脳死重複感染症例においてもその有効性が報告されており(Navarro et al. J Antimicrob Chemother. 2017)、今後 SVR 後も肝予備能が改善しないのか、検討を進める必要がある。そのうえで、重複感染患者は肝機能低下、肝硬変の進行を来しやすいか、全国のブロック拠点病院へ FIB4アプリを紹介、患者さんに入力してもらい主治医と連携を密にし、DAA による SVR後の肝機能変化の調査へつなげていきたい。HCC 治療に関して全国調査を行ったが、単発、ChildA という比較的肝機能が保たれている症例に対しても局所療法(TACE, RFA)のみが選択されており、背景に血友病もあるためか、標準手術、治療が施行されていない可能性が示唆された。専門施設での肝胆膵手術は比較的安全に施行されていることが示唆されたが、今後、HIV 陽性患者における日本肝癌全国登録を用いた後向き研究
を予定している。また、重複感染患者は長期生存が望める時代になっており、肝癌以外の悪性腫瘍の罹患も報告されてきている。今後 2 年間をかけて、血友病症例の悪性腫瘍に対する外科診療、治療ハンドブックを作成していく予定である。
結論
今後も各研究項目についてデータ収集、解析を行い、発表、報告を行っていく。班研究の進捗を社会に発信していくことを今後も継続していく。
HIV は長期的治療疾患であり、四栁班、藤谷班との連携を十分に行い、肝不全の予防、啓発活動、血友病に対する外科治療の標準化を追求していく。また COVID-19 感染
拡大の現状でも救済が必要な方を的確に拾い上げ、必要な治療を行っていくことを継続した。

公開日・更新日

公開日
2024-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,000,000円
(2)補助金確定額
21,505,000円
差引額 [(1)-(2)]
495,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,463,459円
人件費・謝金 4,230,893円
旅費 2,424,510円
その他 5,386,922円
間接経費 0円
合計 21,505,784円

備考

備考
自己資金として784円を計上している。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-