HIV陽性者に対する精神・心理的支援のための身体科主治医と精神科専門職の連携体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202120022A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV陽性者に対する精神・心理的支援のための身体科主治医と精神科専門職の連携体制構築に資する研究
課題番号
21HB1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(国立大学法人 大阪大学 医学系研究科 精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
  • 橋本 衛(近畿大学 医学部)
  • 仲倉 高広(京都橘大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1(池田)精神科医を対象に、HIVに関する知識・理解を深める啓発研修を行うことで、HIV陽性者の受診できる医療機関を拡充できるかを検証する。
研究2(白阪)HIV陽性者の精神的心理的健康状態、精神科受診・カウンセリング利用のニーズと阻害要因を明らかにし、陽性者への援助を促進する方法を検討する。
研究3(橋本)HIV患者では、その20-30%に認知障害と伴うことが報告されており、これらはHIV関連神経認知障害(HIV associated neurocognitive disorder;HAND)と称されている。本研究では、精神科医に向けたHANDに関する教材の作成を目的とする。
研究4(仲倉)HIV医療と精神科医療の連携に関与する看護・福祉・心理職の機能等を調査し、連携促進を図るための技術共有とネットワークを構築する。
研究方法
研究1(池田)過去に実施した調査の結果を基に、精神科医療に携わる多職種に対する研修会とHIV陽性者の身体科主治医との連携に関する研修後のアンケート調査を実施する。
研究2(白阪)大阪医療センター通院中の陽性者500名を対象に、精神症状、受診行動、相談行動などに関して無記名・自記式の調査を行う。
研究3(橋本)海外ならびに本邦におけるHANDに関する文献レビューを行い、HANDの病態、臨床所見、検査・診断方法、治療・介入方法について調査した。調査結果を基に、HANDのスクリーニングに適切な検査を検討した。
研究4(仲倉)①ブロック拠点病院勤務の福祉職を構成員とし、精神科連携に関連する技術についてのフォーカスグループを月に一度開催(計5回)。②試行カウンセリングおよびインタビュー調査面接を行い、定性的・定量的分析にてカウンセリングの効果測定指標を抽出する。③メモリアル・サービスを通し、HIV/AIDSによる喪失体験者へのケアのあり方を検討する。
結果と考察
研究1(池田)2021年12月12日に精神科医向けのHIV研修を実施した。37名の申し込みがあり、アンケートは27名から回収、うち精神科医20名から協力が得られた。所属施設は診療所7名、総合病院6名、大学病院6名、精神保健福祉センター1名であった。HIV診療をしている医師は12名(60%)であった。HIV研修会への参加は17名が初参加であった。HIV診療への不安や抵抗感は14名が持っていた。研修会後には、診療可能が13名、準備が必要5名、わからないが1名であった。
研究2(白阪)現在、調査票を配布中である。今年度中に配布を終了し、次年度に結果の解析を行う。
研究3(橋本)HAND患者は、臨床的に無症状もしくは軽度の認知機能低下を認める物が多数を占めていた。また本邦のHAND患者は、欧米の患者とは異なり、遂行機能障害に加えて視空間認知障害を高頻度に呈していた。
研究4(仲倉)①2021年10月にブロック拠点病院、ACCに勤務する福祉職を対象にオンラインによる説明会を実施し、同意を得た6施設8名にて、オンラインによるディスカッションを行った。②コロナ感染症のため、試行カウンセリングは休止している。③協力者7名とともに開催した。
研究1(池田)
研修会におけるアンケート調査の結果、すでにHIV診療をしている中で、HIV研修会へはじめて参加した精神科医師が多いことが明らかになった。研修前にもっていたHIV診療への不安や抵抗感についても、研修会開催により、軽減し診療可能となることが示唆された。
研究2(白阪)なし
研究3(橋本)本邦におけるHANDのスクリーニングには、軽度の認知機能低下を検出できること、遂行機能や視空間認知の評価が可能であることなどの要件が必要である。従ってMMSEやHDS-Rよりも、MoCA、ACE-Ⅲが適当と考えられた。
研究4(仲倉) ①2回のディスカッションにて、福祉職の機能の多様性と対患者、対連携先、対院内など多岐にわたっていることが示唆された。③次年度以降に協力者を含むフォーカスグループを実施し、調査方法と項目を検討する。

結論
研究1(池田)精神科医を対象に、HIVに関する知識・理解を深める啓発研修を行うことで、HIV陽性者の受診できる医療機関を拡充できる可能性が示唆された。
研究2(白阪)次年度には陽性者の精神的心理的健康状態、精神科受診・カウンセリング利用のニーズと阻害要因を明らかにし、陽性者に対する援助を促進する方法を検討する。
研究3(橋本)本邦におけるHANDのスクリーニングには、軽度の認知機能低下を検出でき、記憶や注意、言語に加えて、遂行機能や視空間認知の評価が可能なMoCA、ACE-Ⅲが有用と考えられた。
研究4(仲倉)調査①・③フォーカスグループの結果を踏まえ、焦点を明確にした調査方法と項目を選定し、次年度に調査を開始する。②コロナの状況を見ながら試行カウンセリングを再開する。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,999,000円
(2)補助金確定額
9,766,263円
差引額 [(1)-(2)]
232,737円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,065,646円
人件費・謝金 4,702,546円
旅費 50,790円
その他 640,281円
間接経費 2,307,000円
合計 9,766,263円

備考

備考
現地参加予定の学会などがオンラインになったため

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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