オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究

文献情報

文献番号
202120021A
報告書区分
総括
研究課題名
オリンピック・パラリンピック・万博等の外国人の流入を伴うイベントの開催に伴う性感染症のまん延を防ぐための介入方法の確立と国際協力に関する研究
課題番号
21HB1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
  • 杉浦 康夫(国立国際医療研究センター 国際診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
オリンピック・パラリンピック競技大会や万国博覧会のような国際的イベントは、性感染症を含む様々な感染症拡大のリスクと考えられている。梅毒の国内届出数は2014年頃から急増しており、COVID-19流行下でも高く推移している。COVID-19流行により観光目的で訪日する外国人の数が一時的に減っているとはいえ、留学・就業目的で長期滞在している外国人は増えており、セクシャル・ヘルスの分野においても、多言語による対応力を高めておくことは必要である。本研究では、国際的イベントや訪日外国人に対するHIV・性感染症対策のあり方を検討し、国内のセクシャル・ヘルス関連施策の整備・強化に貢献するとともに、構築したネットワークを通じて2030年までのHIV流行制圧に向けて必要なエビデンスを収集し、政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
本研究は、1)国際的イベントと性感染症対策に関する研究、2)訪日外国人へのセクシャル・ヘルス関連情報の提供のあり方についての研究、3)HIV関連政策立案に資する国際協力とエビデンス構築に関する研究の、3つの課題に取り組んだ。
結果と考察
1)国際的イベントと性感染症対策に関する研究
セクシャル・ヘルスケアに積極的に取り組む医療機関と支援団体の情報共有ネットワークを構築する目的で、日本エイズ学会と国際エイズケア提供者協会(IAPAC)と合同でFast Track Cities Workshop Japanをオンラインで開催し、国内外から様々な分野の演者らと情報共有・議論を行い、日本のHIV政策の論点を整理した。
2)訪日外国人へのセクシャル・ヘルス関連情報の提供のあり方についての研究
ウェブサイトTokyo Sexual Health (http://www.tsh.ncgm.go.jp/en/index.html) のコンテンツについて、中国語(繁体字・簡体字)・ベトナム語・タイ語への翻訳を行った。このウェブサイトは、2020年6月1日に東京2020公認プログラムとしての認証を受けた。(事業名Tokyo Sexual Health 2020, 事業番号C0005801, 事業完了2021年9月5日)
3)HIV関連政策立案に資する国際協力とエビデンス構築に関する研究
国連合同エイズ計画の世界的HIV疫学調査であるGlobal AIDS Monitoringの疫学指標を精査し日本からの報告のあり方について検討を行った。HIV罹患率やケアカスケード達成率(いわゆる95-95-95指標)に関する疫学推計については、国連合同エイズ計画が開発したSpectrum®というソフトウエアを用いることが推奨されている。Spectrum®を用いた日本のHIV疫学推計に用いる各種パラメーターの設定やバージョン変更に伴う変化を検討したところ、エイズ関連死亡者数のパラメーターやSpectrum®のバージョン変更により結果が大きく異なることが明らかとなった。国際的に評価が確立している手法を複数用いて行うこと、それらの利点と欠点を合わせて報告することの重要性が改めて示された。
結論
多くの医療機関がCOVID-19 対応に追われたため、当初予定していた実装研究を開始することは困難であったが、デジタルツールを最大限活用し、国際的なOnline Workshopを2つ開催できたほか、ウェブサイト開発にも注力し、東京オリンピック組織委員会の公認プログラム認定も受けることができた。本研究を通じ、セクシャル・ヘルス推移に取り組む医療機関と支援団体の新しいネットワークや、多言語によるセクシャル・ヘルスに関する情報発信のあり方について、その方向性が示された。また、国連の定めるGlobal AIDS Monitoringに基づいた政策評価について、日本での手法確立に貢献した。また現行の政策について市民団体の声を集めることの重要性も認識された。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120021Z