拠点病院集中型のHIV診療から、地域分散型のHIV患者の医療・介護体制の構築

文献情報

文献番号
202120018A
報告書区分
総括
研究課題名
拠点病院集中型のHIV診療から、地域分散型のHIV患者の医療・介護体制の構築
課題番号
21HB1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
猪狩 英俊(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 坂本 洋右(千葉大学 医学部)
  • 鈴木 貴明(千葉大学医学部附属病院薬剤部)
  • 塚田 弘樹(新潟市民病院)
  • 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
  • 鈴木 明子(御子神 明子)(城西国際大学 看護学部)
  • 矢幅 美鈴(千葉大学医学部付属病院 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HIV療法の進歩によって、HIV/AIDS患者の予後は改善し、長期生存が可能になった。併存する基礎疾患に対応した医療、介護・看取りなどの終末期医療など、HIV/AIDS患者に提供する医療は益々多様化する。これらの課題解決には、診療連携を通して長期療養体制を構築することが必要である。
第一の目的は、長期療養体制の課題抽出を行い、行政と協働する。モデルケースを設定し、効果的な制度運営に結びつけていく。
第二の目的は、HIV感染症患者の動向を自治体別・医療圏別・年齢別に分析し、長期療養体制に向けた基礎的資料とする。
第三の目的は、職種別活動を通して、長期療養体制構築に寄与する。千葉県HIV拠点病院会議は、科医師・看護師・薬剤師・カウンセラー・医療ソーシャルワーカーによる多職種連携組織である。
研究方法
1 HIV患者の長期療養体制の構築
2 HIV患者の動向分析。
3 HIV患者の歯科診療状況調査
4 HIV患者が地域の保険薬局を選択した時に対応できるシステム構築
5 HIV患者の長期療養に必要な地域看護力の向上
6 地域のエイズ拠点病院での診療体制の構築
7 地域病院へのHIV感染者診療の連携
8 HIV感染症の透析医療に関する研究
9 HIV患者の長期療養における医療ソーシャルワーカーの役割についての研究
この研究は1と重複するもので共同して行うものである。
結果と考察
1 HIV患者の長期療養体制の構築 (9の長期療養体制における医療ソーシャルワーカーの役割と重複)
エイズ診療拠点病院の多職種で構成される長期療養体制構築会議にて、症例検討会を実施した。(慢性心不全、慢性腎臓病、認知機能低下)
長期療養体制構築には、1)行政の積極的関与(千葉県疾病対策課の支援要請)、2)継続的教育啓発活動、3)ACP(アドバンストケアプランニング)の導入、4)社会資源の可視化を目標とし、PDCAサイクルを回す。
 2021年12月末の厚生労働省通知によって、HIV感染症患者は、自立支援医療を受ける医療機関を複数指定することも可能になった。これからは、モデルケースを選定し、運用を確認していく。
2 HIV感染症患者の動向分析
千葉県内のHIV患者は増加し、高齢化を伴っていることを確認した。エイズ診療拠点病院と患者の受診動向にはミスマッチがあり、地域連携に影響が出てくる可能制がある。
STR(シングルタブレットレジメン)の処方割合が増加しており、服薬アドヒアランスと服薬指導、服薬管理上望ましいと考えられた。
長期療養体制を構築する場合、①HIV感染症患者の地域分布、②HIV感染症患者を診療する拠点病院、③HIV感染症患者の受診行動、④HIV感染症患者の服薬レジメンなど多角的な対策を検討する必要がある。
3 HIV感染症患者の歯科診療状況調査
千葉大学医学部附属病院の歯科口腔外科の関連病院を中心とする診療体制を構築してきた。HIV感染患者数は合計89名であり、全施設でHIV感染患者の歯科治療を行っていた。歯科治療全般については、特別な感染防御対策は不要であり、一般歯科診療所で十分対応可能であることを、今後啓発していく必要がある。
4 HIV感染症患者が地域の保険薬局を選択した時に対応できるシステムの構築
地域の保険薬局の薬剤師に対するHIV感染症に関するセミナーは、薬剤師の理解を促進する効果があり、継続的に実施していくことが重要である。
5  HIV感染症患者の長期療養に必要な地域看護力の向上
HIV陽性者受け入れ困難の理由として、感染対策の知識不足、医師の不在、拠点病院との関係、受け入れの経験がないことが挙げられた。
6 地域のエイズ拠点病院での診療体制の構築
東京慈恵会医科大学附属柏病院では、情報の共有、地域へ情報発信と診療支援を推進するためにキーとなる看護師・および診療チームを院内に確立できた。
7 地域病院へのHIV感染者診療の連携
加算1病院はエイズ拠点病院との連携の上、入院・外来ともにHIV感染以外の疾患治療を受け入れることが可能であると考えられる。
8  HIV感染症の透析医療に関する研究
 千葉県透析医会と連携をし、千葉県透析ネットワークを構築した。
結論
長期療養体制を構築する上で、HIV感染症患者の現況と、課題の抽出を行った。
長期療養体制の構築には、地域連携が不可欠である。厚生労働省から、自立支援医療機関を複数指定することが可能とする文書が発出され、これらの課題解決が促進される可能性がでてきた。モデルケースを選定して行くことが次ぎのステップになると考えられる。
症例検討を通して、①行政の関与(千葉県疾病対策課の支援要請)、②教育啓発活動、③ACP(アドバンストケアプランニング)、④社会資源の可視化を推進する。特に、ACPは患者の意思決定を促す上で、最重要課題になると考えている。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,705,211円
人件費・謝金 2,534,776円
旅費 19,298円
その他 1,046,282円
間接経費 2,307,000円
合計 8,612,567円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症拡大により、経費の支出に想定外の減少があったため。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-