HIV感染症診療の提供体制の評価及び改善のための研究

文献情報

文献番号
202120017A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症診療の提供体制の評価及び改善のための研究
課題番号
21HB1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
内藤 俊夫(順天堂大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
AIDS指標疾患などのHIVに関連する病態の他に、加齢に伴う疾患もHIV感染者の予後には多大な影響を及ぼす。このような状況のもと、安全に持続可能な抗HIV薬を知ることは大変重要である。しかしながら、日本のHIV感染者の抗HIV薬の処方割合、継続率は単施設からの報告が散見されるのみであった。我々は本邦のほぼ全てのHIV感染者の治療歴が含まれるNDBをと持ちいて、HIV感染症治療薬の処方割合と継続率に関するデータベース研究を行った。
研究方法
NDBに登録されている、提供が了承された範囲の申請条件のレセプトが発行された患者を対象とし、このうち2011年1月から2019年3月までの期間に抗HIV薬の投与を受けた16,069名のHIV感染者を解析した。HIV感染症や合併症の有無はICD-10コードを元に決定した。最終の受診日を基準にして、年齢を6グループに分類した(18-29, 30-39, 40-49, 50-59, 60-69, ≥70)。患者の性別、合併症の数や種類、ARTとその他の内服薬、AIDS指標疾患の有無について記述的に調査した。
結果と考察
キードラックはNNRTI 325名(19.8%)、PI 564名(35.0%)、INSTI 723名(44.8%)の処方割合であった。
2011年から2019年の間に、キードラックとしては、NNRTIが18%から1%、PIが52%から4%へと減少していた。これに対し、INSTIの処方率は30%から95%に増加していた。
バックボーンに関しては、2011年から2016年まではTDFの処方が80%から50%と最も多く、ABCが14%から38%で続いていた。しかしながら2017年からはTAFの使用が増加しており、2019年に70%に達している。ABCは約30%のまま推移している。
研究期間中に3,108 名(19.3%)にキードラックの変更があった。薬剤変更の率は年々増加し、特にNNRTI (95%CI: 14.9-65.5%) と PI (13.2-67.7%)では8年間増加が続いたが、INSTI では低い割合で維持された(3.0-7.6%)。
我々は現在までに「高年齢化するHIV感染者の診療において、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が重要であること」を示している(Ruzicka DJ, BMJ Open, 2018. Ruzicka DJ, J Infect Chemother, 2019. Naito T, HIV Medicine, 2022)。HIV診療医はこれらの生活習慣病の診療に関する正しい知識を持つとともに、この状況下でも継続可能な抗HIV薬について理解する必要がある。
今回の16,069名を対象としたビックデータ解析により、INSTIが抗HIV薬のキードラックの中で、最も長い期間変更されにくいものだと明らかになった。この結果は、AIDS指標疾患やバックボーンドラックの違いに関わらず同じ結果であった。また、変更の内訳としてはNNRTIやPIからINSTIへという症例が最も多かった。
結論
NDB研究の結果から、INSTIは最も継続しやすい抗HIV薬であるとの可能性が示された。HIV感染者数の増加や高齢化により併存症が増えることにより、今後日本ではHIV診療専門医だけでなく総合診療/プライマリケア医が処方する機会が増えることが予想される。今回の研究の結果は、総合診療/プライマリケア医が利用しやすい抗HIV薬についてのビックデータ解析による有用な情報である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,400,000円
(2)補助金確定額
12,385,000円
差引額 [(1)-(2)]
15,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 500,000円
人件費・謝金 6,000,000円
旅費 0円
その他 3,039,000円
間接経費 2,861,000円
合計 12,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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