文献情報
文献番号
202120014A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ予防指針に基づく対策の評価と推進のための研究
課題番号
21HB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 四本 美保子(根岸 美保子)(東京医科大学 臨床検査医学分野)
- 西浦 博(国立大学法人北海道大学 大学院医学研究科 社会医学講座衛生学分野)
- 渡部 健二(大阪大学大学院医学系研究科)
- 桑原 健(大阪医科薬科大学 薬学部 臨床薬学教育研究センター)
- 江口 有一郎(医療法人ロコメディカル ロコメディカル総合研究所)
- 大北 全俊(大阪大学大学院文学研究科)
- 日笠 聡(兵庫医科大学 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
19,325,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1 いわゆるエイズ予防指針の次回改定に向け、テーマごとに施策の検討と効果の評価、進捗状況の把握と課題抽出を行い、資料を整理し、改定に資する。 2 わが国の90−90−90の各割合を定量化し、流行対策の策定支援の基盤的データを提供し、新型コロナウイルス感染症流行下での行政検査数低下の影響も加味し定量化を行う。 3 広く医療従事者等向けのHIV診療の手引き作成と予防指針改定に資するべく、HIV対策の倫理的課題を明確化し取り組みの方向性を提示する。 4 HIV検査啓発におけるTwitterの有用性、およびTwitterにLGBTQのインフルエンサーが存在するかの検証と影響力を調査する。 5 大学の医学教育で効果的なHIV教育プログラムを導入し、HIV知識の定着およびHIV診療への意識変容を導く。 6 大学での薬学教育および卒後薬剤師養成課程でのHIV感染症認定・専門薬剤師育成プログラムと、評価方法の開発を行う。 7 高校での授業を補完するeラーニングサイトを開発し、エイズ予防指針に示された教育機関等での普及啓発に資する。併せて費用対効果の高い啓発方法を検討する。 8 血友病等の凝固異常症患者の救急診療をより適切に実施するための解決策を検討する。
研究方法
1 エイズ予防指針を構成する各分野(青少年・MSM、予防啓発、検査、臨床、倫理、行政など)の専門家およびHIV陽性者から成る委員会を構成し、課題を抽出し予防指針に資する資料を整理する。 2 エイズ発生動向調査結果を用い、既に定式化・論文発表を行った拡大逆計算手法の適用と時刻あたりの新規HIV感染率と診断率を推定する。 3 記述倫理的研究及び規範倫理的研究を行う。 4 HIV検査の啓発キャンペーンに用いたTwitterアカウントのフォロワーを抽出し、調査を行う。 5 大阪大学医学部学生を対象にスパイラル教育介入研究(1、4、6年次学生を対象としたHIV教育プログラム)を展開し、授業前後でアンケート調査を行い、その意識変容を調べる。 6 病院、薬局で実務実習を行う学生、並びに認定資格取得を目指す薬剤師に対する教育プログラム試案を作成し、解析・評価から、教育プログラムを改訂する。 7 eラーニングサイト開発にあたり高校保健教育教諭にアンケート調査を実施する。啓発活動においては費用対効果の高い方法等を検討する。 8 緊急時患者カードを作成し、患者および診療医に配布する。
結果と考察
1 各分野の専門家から現状の多くの課題と提言を得た。 2 新型コロナウイルス感染症蔓延による保健所等での検査件数の減少を加味しつつ推定値をアップデートするための新しいモデルの定式化を行った。新規HIV感染者数は継続的に減少傾向と考えられた。 3 国内報道記事調査結果を学会発表した。今年度中に一般医師対象調査の予定で、規範倫理的研究では人権事項の位置付けやU=U等の文献を調査した。 4 国内Twitterのユーザーは年代、性別ともHIV感染リスクが高いと想定される層に近かった。@osaka_hivを足がかりに、フォロワー数、LGBTQ等のインフルエンサーなどに焦点を当て、今後も精査する。 5 今年度は、1、4、6年次学生を対象に講義、演習を行い、前後でアンケート調査を行った。 6 講義資料、教育用資材等を作成した。また、PrEPに対する薬剤師ツールキットを翻訳した。 7 HIV検査普及週間及び世界エイズデーに際し、FM放送を用いエイズに関する情報を、10代に人気の番組前後の時間帯で実施した。中・高の保健体育科学習指導要領及び教科書、教師用指導書等の内容から、eラーニングシステムに関する情報を収集した。 8 緊急時患者カードおよび、主治医宛と患者宛のレターを、血友病診療拠点病院、患者団体、製薬メーカーなどを通じて配布した。
結論
1 HIV陽性者を含む各分野の専門家で議論を行い、現状の課題を多視点から検討し抽出した。 2 HIV感染者数、検査率の両方の推定に基づく診断者割合の継時的推定基盤を構築した。新規HIV感染者数は引き続き減少傾向と考えられた。 3 国際的議論を参照しつつ予防指針での倫理・人権課題の提示に向け、日本の現状調査結果を踏まえ検討を行った。 4 Twitterを用いたHIV検査の啓発手法は有効であり、LGBTQのインフルエンサーを用いた手法も期待できる。 5 今年度導入した教育プログラムを今後も実施しHIV診療への意識変容等を検討する。 6 HIV感染症専門薬剤師の育成で服薬アドヒアランス低下防止に寄与できると考えた。 7 HIV検査普及週間及び世界エイズデーでの若者向けFM放送を用いた予防啓発の実施と、高校生世代を対象としたeラーニングシステムに関する情報を収集した。 8 血液凝固異常症の救急診療体制改善の第一歩を踏み出せた。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
-