HIV感染症の医療体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
202120012A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の医療体制の整備に関する研究
課題番号
20HB2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科)
研究分担者(所属機関)
  • 田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 統括診療部)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構九州医療センター臨床研究センター)
  • 内藤 俊夫(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 豊嶋 崇徳(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院)
  • 茂呂 寛(新潟大学医歯学総合病院・感染管理部)
  • 渡邉 珠代(石川県立中央病院 免疫感染症科)
  • 今橋 真弓(柳澤 真弓)(名古屋医療センター 臨床研究センター 感染・免疫研究部)
  • 渡邊 大(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
  • 藤井 輝久(広島大学 病院輸血部)
  • 宇佐美 雄司(国立病院機構 名古屋医療センター 歯科口腔外科)
  • 池田 和子(国立国際医療センター/エイズ治療・研究開発センター)
  • 矢倉 裕輝(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 薬剤部)
  • 本田 美和子(国立病院機構東京医療センター 総合内科 )
  • 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部)
  • 日ノ下 文彦(帝京平成大学 健康医療スポーツ学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
62,000,000円
研究者交替、所属機関変更
令和3年9月より帝京平成大学 日ノ下文彦が研究分担者となった。

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国のエイズ治療の現況は「HIV 感染症及びその併存疾患や関連医療費の実態把握のための研究」班と共同研究を進めた結果NDBオープンデータ解析により把握可能となりつつあるが、今後UNAIDSの「95-95-95」達成評価等には死亡者数等の情報を医療機関から得る必要がある。エイズ治療体制については医師の高齢化と後継医不在が深刻になりつつあり医師育成と診療支援システムの構築が必要である。また、全国の医療・福祉の現場では依然として診療・支援の忌避・拒否事例が散発している。血友病薬害被害者の救済医療提供には、血友病拠点病院制度との連携の必要性が増している。
令和3年度、本研究班では全国のエイズ治療に係る情報収集を収集しつつ、拠点病院体制整備のため上述した課題解決を試みた。また、血友病薬害被害者への救済医療提供の基盤であるエイズ治療の拠点病院体制の再構築に向けた基盤整備を行なった。
研究方法
全国の拠点病院および拠点病院以外でエイズ治療に関わる医療機関に調査票を郵送し情報提供を求めた。得られた情報及び動向委員会報告の数値を用いて先行研究(PloS one vol. 12,3 e0174360. 20 Mar. 2017)の方法により2020年末時点における我が国の2nd90及び3rd90を算出した。ACCおよびブロック代表の分担研究者の医療施設に2021年のSARS-CoV-2感染拡大下におけるエイズ治療の現況を調査した。全国の拠点病院に看護師・MSWが関わる転地療養・転院時の相談窓口の設置を依頼した。また、専任看護師・薬剤師の配置及びチーム医療加算の算定のための施設申請を勧めた。歯科および透析の関連学会・団体主導で診療ネットワーク構築を試みた。順天堂大学及び国立病院機構でエイズ治療に関わる人材の育成や診療支援体制の構築を行なった。
結果と考察
全施設から情報を得た(回答回収率100%)。2020年末時点で拠点病院及びその他医療機関に定期通院中、治療継続中及び治療成功しているHIV感染者/AIDS患者の総数はそれぞれ、29,693人、27,928人、27,845人で、2nd90と3rd90を算出したところ、それぞれ、104%、99.7%であった(速報値)。データ収集の効率化と有効利用を図ることを目的に、エイズ対策推進室の協力を得て、医療機関等情報支援システム(G-MIS:Gathering Medical Information System)によるデータ収集システム構築に着手し、2022年調査で試行することとなった。
2020年、研究班参画施設の新規未治療HIV感染者/AIDS患者は370人(2019年比81.1%)。AIDS発症割合25.7%(2019年は22.6%)、保健所等からの紹介割合は15.9%(2019年は22.8%)であった。地域の保健所HIV検査の提供体制は感染の早期自認に影響を与えていることが危惧された。
ブロック・中核拠点病院において、院外からの相談に応じる看護師及びMSWが配置されている療養相談窓口リストを作成した。ACC、ブロック拠点及び中核拠点69施設で、担当薬剤師の配置状況を調べたところ、配置の確認できた施設は57施設(92%)であった。静岡県東部地域のエイズ治療体制再構築のため順天堂大学医学部附属病院順天堂医院総合内科が介入し、順天堂大学医学部附属静岡病院で血液内科に加えて呼吸器内科でも診療対応を可能にした。また、総合診療医を対象としたwebによるHIV感染症診療教育システムやHIV診療を行う医療従事者を対象としたオンライン診療支援システムを開発した。合併症対応が主体となった現代のエイズ治療においては、これらのシステムにより、非専従として従事する医療者を継続的に育成・支援することが重要と考えられる。
歯科医師会主導の歯科診療ネットワークはエイズ対策推進室の介入も得て全ての都道府県で構築が進んでいることが確認された。透析医療ネットワークについても、透析医会を中心に、首都圏などPWHの人数が多い地域を中心に構築が進行中である。ネットワークの維持・拡充のシステム構築も重要課題である。
結論
依然としてSARS-CoV-2感染拡大下であるが、エイズ治療の医療体制整備に必要な情報収集と課題抽出、課題克服のための取り組みを継続している。拠点病院体制の再構築については、施設及び診療従事者等の連携構築を重要視し、SARS-CoV-2感染拡大を契機に活用範囲が拡大されたwebツールを積極的に活用し基盤整備を進めている。エイズ治療領域は医療者が継続して診療に関わる数少ない感染症の一つであり、今後の国の感染症対策に資するような拠点病院体制の再構築が達成できればさらに本研究の意義は大きなものとなる。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
82,141,000円
(2)補助金確定額
81,109,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,032,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 23,016,492円
人件費・謝金 1,378,887円
旅費 801,410円
その他 37,312,569円
間接経費 18,600,000円
合計 81,109,358円

備考

備考
千円未満切り捨てのため。

公開日・更新日

公開日
2023-03-09
更新日
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