文献情報
文献番号
202120011A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究
課題番号
20HB1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
水島 大輔(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぶれいす東京 研究事業/支援・相談サービス)
- 照屋 勝治(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
①先行研究(H29-エイズ-一般-009)で実施したHIV感染症の曝露前予防(PrEP: pre-exposure prophylaxis)の実証研究を継続し、我が国の男性間性交渉者(MSM:men who have sex with men)におけるPrEPの安全性とPrEP導入による性感染症の罹患率への影響を評価するとともに、近年急増しているジェネリック薬の自己輸入によるPrEP使用者の実態把握を行い、PrEP提供体制の整備・強化・相互連携を図る。②PrEPに関する正しい情報発信のプラットフォームをコミュニティで整備することを目的に、日本のMSMコミュニティを対象としたPrEPに関する認知度・課題等に関する意識調査を実施した。
研究方法
①PrEPのpilot studyでは、対象者にツルバダ一日一回内服のdaily PrEPを実施し、PrEP開始前後のHIV/STIの罹患率を評価するための介入試験を2018年より実施しており、これを継続する。当研究とは独立して、当院のSH外来で3か月毎のHIV/STI検査とともに、safer sexの指導を行っている。当研究の対象者としては、SH外来に定期的に通院しPrEPによるHIV予防の意義及び重要性を理解した非HIV感染MSMで、かつ高リスク者を対象とする。約120症例を最低2年間以上フォローしPrEP使用者におけるHIV罹患率およびSTI罹患率をPrEP介入前後で比較することを主目的とする。また、ジェネリック薬の自己輸入による自己判断でのPrEP使用者の実態把握に関して、SH外来での調査に加えて、すでにPrEPのフォロー検査を提供しているSTIクリニックと提携し、東京近郊での実態把握に努めPrEP提供施設のネットワークを構築する。②本研究では、昨年度の分担研究を参考に、MSMを対象とした無記名自記式アンケート調査を行った。アンケート調査は、MSM向けのGPS機能付き出会い系アプリの利用者を対象として実施した。
結果と考察
PrEP開始2年後、受診継続率、内服順守率およびHIV感染予防効果は極めて高かった。一方、コンドームの平均使用率はPrEP開始時点から低下傾向で、他の性感染症の罹患率は増加傾向を認めており、safer sexの情報提供と性感染症検査体制の拡充が重要と考えられた。個人輸入のPrEP userは2021年9月末時点で協力施設であるプライベートヘルスクリニック(PHC)と併せて1600名を超え、2021年内に2000名に達している。都内では、KARADA内科クリニック、プライベートケアクリニックも同様にPrEP薬処方を開始しており、PrEP userのさらなる増加が見込まれ、情報提供体制の構築が急務である。②2021年2月MSMのPrEPに関する実態調査を実施した。MSM向け出会い系アプリに広告出稿し、7,850件の有効回答を得た。PrEP使用経験者は全体の8.5%であった。使用者は、東京を中心とした関東ブロック在住で70.2%を占めたが、全国に存在していた。その8割がweb経由で薬剤を入手していた。そのうち、定期/不定期に医師の診察を受けているのが49.7%であった。全回答のうち、月に支出可能な自己負担額は5千円までという回答が55.6%を占めた。今後の使用意向は、認可されたら使用を希望が68.5%であった。PrEPを使用した場合、コンドームを使わなくなるという回答者も46.5%存在した。同調査結果に関して、報告書とその概要を作成し、webから閲覧できるようにした。また、回答者へのフィードバックのため、MSM向け出会い系アプリに広告を出稿した。PrEPの使用経験者が同じサンプリング方法で、2018年10月:2.2%であったのが、2021年3月には8.5%と急増していた。Web購入者が8割を占め、その背景には薬剤のコストが大きく影響していると思われる。今後は検査や見守りを含めたクリニックベースの見守り体制の構築が急務だと思われる。
結論
①日本のPrEPの妥当性、実現可能性を評価するために、PrEPに関する単試験による計124名のpilot studyを完了し、論文化した。②PrEPの情報発信のコンテンツを作成した。今後、当事者向け、見守り医療機関向けに、webサイト上で情報発信を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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