HIV受検勧奨のための性産業従事者や事業者等に対する効果的な介入に向けた研究

文献情報

文献番号
202120009A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV受検勧奨のための性産業従事者や事業者等に対する効果的な介入に向けた研究
課題番号
20HB1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 塩野 徳史(大阪青山大学 健康科学部 看護学科)
  • 青山 薫(神戸大学 大学院国際文化額研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、梅毒の増加が続いており、特に性産業に従事する女性の増加が問題となっている。現代の性産業はSNSの普及とともに多様化してきていることで、性感染症のハイリスク層であるが、正しい知識や情報にスムーズにアクセスできる環境にない性産業の従事者への効果的な受検勧奨と予防啓発が喫緊の課題である。これらの研究によって、現代の性産業の実態を明らかにし、その多様性・複雑性に合った効果的な介入と検査機会の拡大へ向けた提言を行っていく。
研究方法
各分担研究では、女性のSW、トランスジェンダーのSW、外国人のSWを対象とする調査によって、多様化・複雑化している性産業の実態を明らかにする。さらに、検査行動や予防行動に影響する就労環境の調査も行うことで、当事者とっても利用しやすい、予防行動や受検勧奨につながる啓発方法を検討する。分担研究「流行する性感染症に対する効果的な介入と評価」では、各分担研究で得られる情報をもとに、梅毒等の性感染症に対する効果的な啓発プログラムの開発を目指す。
結果と考察
女性のSWの研究では、一番最近のセックスワークの時期が6ヶ月以内であった人を対象に、検査受検経験別に分析した。性風俗の仕事を始めてからの期間が長い、過去6ヶ月間の相手の人数が多い、過去6ヶ月間の仕事での複数人との性交経験や薬物併用経験を有するなど比較的、感染リスクの高い行動をとっている人において、受検割合が高いことが示唆された。また、受検経験者では、コンドーム所持割合や購入経験が高く、PrEP、U=Uの認知、HIVや検査関連の知識についても高い正答率だったことなど、知識や周囲の規範が検査行動に影響する可能性があることも示唆された。これらは他の個別施策層でも示された知見と一致しており、今後の予防啓発の取り組みに対して示唆的であると考えられた。
トランスジェンダーのSWの研究では、啓発用資材(冊子とリーフレット)を作成し、トランスジェンダー向けのイベントを開催した。また、2021年2月〜3月のWEB質問紙調査の分析、昨年度に引き続きTG-SWにインタビューを行った。質問紙調査からは、HIV検査の受検場所に関する情報やU=U、PrEPといった比較的新しい情報が十分に行き渡っていないことが明らかになった。検査行動に関しては、セックスワーク経験者では、HIV等の性感染症検査の受検率が高かった。インタビュー調査では、これまでも指摘したが、トランスジェンダーの多様性が改めて示されると同時に、性行為の内容や感染症予防、HIV等性感染症の検査、接客における経験などは店の方針等が影響していることが確認された。
外国人SWの研究は、まず聞き取りによるネットワーク分析を単純化するための方法として、当事者と雇用者等から得た人間関係情報を図式化するソシオグラムを獲得した。次に、アウトリーチ活動を行い、パイロットケースとして関東地方、関西地方で聞き取りを行った。
流行する性感染症に関する研究では、性産業従事者の支援団体と協力してSW向けポータルサイトのコンテンツを充実するため、SWの性の健康への関心を高めるため、セクシャルヘルスにかかる知識・情報等について、SWのインタビュー動画や記事を掲載した。そしてSNSを中心に広報展開し、インフルエンサーからも情報発信してもらうなど、啓発のためのネットワーク構築を進めた。また、若者向けの性感染症・梅毒啓発ページを梅毒をわかりやすく解説した梅毒啓発動画とともに「HIV検査・相談マップ」のサイトに、掲載した。
結論
性産業の形態は、時代とともに急速に変化してきている。本研究によって、現代の性産業の実態を明らかにし、その多様性・複雑性に合った効果的な介入と検査機会の拡大へ向けた提言を行っていく。さらに、これらの研究によって得られる情報や、現在流行しているCOVID-19の性産業自体への影響、検査受検の状況、梅毒の発生動向等を踏まえた総合的な性感染症に対する効果的な啓発プログラム開発も進めていく。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202120009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 807,912円
人件費・謝金 0円
旅費 165,660円
その他 12,776,428円
間接経費 1,250,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
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