文献情報
文献番号
202120006A
報告書区分
総括
研究課題名
日本におけるHIV感染症の発生動向に関する研究
課題番号
20HB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 砂川 富正(国立感染症研究所実地疫学研究センター)
- 西浦 博(京都大学医学研究科)
- 長島 真美(東京都健康安全研究センター微生物部)
- 櫻木 淳一(神奈川県衛生研究所)
- 松山 亮太(広島大学大学院医系科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
18,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本国内におけるHIV感染拡大抑制に向け、精度の高いHIV発生動向の把握が重要である。HIV感染者数の推定にはエイズ発生動向調査によるHIV/AIDS報告数が活用されるが、HIV感染後の検査率は変動するため報告数を基にした逆算法だけでは推定の精度は不充分と考えられる。本研究では①報告数の多い大都市圏における血清学的手法を用いた早期診断率の評価、②大都市圏での早期診断率と診断時CD4値の分布の関連性に関して統計学的手法をも用いた解析、③大都市圏のデータを基にCD4値を活用し地方における早期診断率の推定、の3本を研究の柱とし、精度の高い日本国内HIV感染者数および診断率の推定を目指す。
研究方法
① 大都市圏における血清学的手法を用いた早期診断率の評価
WHO/UNAIDSにて方法論の標準化に関する検討が進み、かつNational Surveillanceへの導入が始まっているHIV Incidence assayを活用し、東京都、大阪府、福岡県においいて血清学的調査を実施し、新規HIV診断者にしめる早期診断者の割合を評価した。血清学的調査は地方衛生研究所(東京都健康安全研究センター、独立行政法人大阪健康安全研究所、福岡県環境保健研究所、福岡市環境保健研究所)の協力のもと、各自治体が実施するHIV行政検査にてHIV陽性が同定された全検体を解析対象とし、Sedia HIV-1 Limiting Antigen Avidity EIAを用いてHIV感染後半年以内と推定される検体数の割合を調査した。
② 大都市圏での早期診断率と診断時CD4値に関するデータ収集
東京都および大阪府における新規HIV診断者の診断時CD4数等の情報を解析するため、東京都東(南)新宿検査相談室、大阪医療センターの協力を得て、2003年以降の新規診断者の診断時CD4数等に関する情報を収集、整理した。研究の実施に際し、データの収集元である国立感染症研究所倫理委員会の承認、および情報提供機関である大阪医療センター、および東京都健康福祉局の承認を得た。
③ 国内HIV感染者数推定における数理モデルの活用に関する研究
日本におけるHIV感染症の流行動態を明らかにするための流行ベースラインの定量化を実現するために、具体的なモデルの定式化の検討、および自然史の文献を検討した。
④早期診断率の把握に向けた手法に関する基礎検討
HIV診断者の感染時期の推定に関する手法の基礎検討として、神奈川県衛生研究所で保管されている2019以降HIV陽性が判明した検体を用いてSedia HIV-1 Limiting Antigen Avidity EIAを実施し、診断までのスクリーニング検査系(イムノクロマト法、粒子凝集法、化学発光酵素免疫法等)、および確定検査系(Western Blotting、核酸増幅検査)の検査結果と比較した。
WHO/UNAIDSにて方法論の標準化に関する検討が進み、かつNational Surveillanceへの導入が始まっているHIV Incidence assayを活用し、東京都、大阪府、福岡県においいて血清学的調査を実施し、新規HIV診断者にしめる早期診断者の割合を評価した。血清学的調査は地方衛生研究所(東京都健康安全研究センター、独立行政法人大阪健康安全研究所、福岡県環境保健研究所、福岡市環境保健研究所)の協力のもと、各自治体が実施するHIV行政検査にてHIV陽性が同定された全検体を解析対象とし、Sedia HIV-1 Limiting Antigen Avidity EIAを用いてHIV感染後半年以内と推定される検体数の割合を調査した。
② 大都市圏での早期診断率と診断時CD4値に関するデータ収集
東京都および大阪府における新規HIV診断者の診断時CD4数等の情報を解析するため、東京都東(南)新宿検査相談室、大阪医療センターの協力を得て、2003年以降の新規診断者の診断時CD4数等に関する情報を収集、整理した。研究の実施に際し、データの収集元である国立感染症研究所倫理委員会の承認、および情報提供機関である大阪医療センター、および東京都健康福祉局の承認を得た。
③ 国内HIV感染者数推定における数理モデルの活用に関する研究
日本におけるHIV感染症の流行動態を明らかにするための流行ベースラインの定量化を実現するために、具体的なモデルの定式化の検討、および自然史の文献を検討した。
④早期診断率の把握に向けた手法に関する基礎検討
HIV診断者の感染時期の推定に関する手法の基礎検討として、神奈川県衛生研究所で保管されている2019以降HIV陽性が判明した検体を用いてSedia HIV-1 Limiting Antigen Avidity EIAを実施し、診断までのスクリーニング検査系(イムノクロマト法、粒子凝集法、化学発光酵素免疫法等)、および確定検査系(Western Blotting、核酸増幅検査)の検査結果と比較した。
結果と考察
血清学的手法を用いた早期診断率の評価に関しては、研究全体として2016年以降の詳細は動向把握に向け順次解析を進めることを計画していたが、2020年以降日本国内で発生した新型コロナウイルス感染症のHIV検査・診断に及ぼす影響を優先的に解析するため2020年新規HIV診断者から得られた血液サンプルについて優先的に解析を進めた。現時点では、新型コロナウイルス感染拡大後の早期診断者割合の変動については地域で異なることが示唆された。この結果は新型コロナ肺炎の感染拡大の影響によりHIV検査が充分に行われなかった可能性、もしくは新たにHIVに感染した人(Incidence)が減少した可能性の2点が考えられる。令和4年度は更に詳細な解析を進めるため、今年度収集を開始している診断時CD4数を活用し、上記二つの可能性に関して科学的根拠を示すべく研究を推進する。
結論
日本国内のHIV感染症に関する詳細は動向把握に向け、地域別調査を実施し、早期診断率の推計、HIV検査・診断における新型コロナウイルス感染症の影響について評価した。2020年は日本国内でHIV診断数は減少しているものの、新たなHIV感染者(Incidence)数の増減、及びHIV検査・診断への新型コロナウイルス感染症の影響は地域により大きく異なるとが示唆される。令和4年度は新規HIV診断者から得れる情報について更に詳細な解析を進め、日本国内HIV感染者数、診断率の把握に反映させる。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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