血友病HIV感染者に対する癌スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202120004A
報告書区分
総括
研究課題名
血友病HIV感染者に対する癌スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立に関する研究
課題番号
19HB1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
  • 大野 達也(群馬大学)
  • 石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所、難治性疾患研究)
  • 木内 英(東京医科大学 臨床検査医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病HIV感染者において癌患者が散見される。先行のFDG-PETを用いた癌スクリーニング研究で、68例中6例に癌が見つかり高率であった。この結果は、癌スクリーニングの重要性を示唆した。しかし、FDG-PETを用いたスクリーニングでは、全国施設への均霑化はできないため、一般施設でも実施可能なスクリーニング法を検討する課題が残った。また、血友病患者においては、非観血的かつ非侵襲的な治療法を確立する必要性も高い。本研究では、従来の研究で明らかになってきたこれらの課題を克服する目的で、以下の5つの研究を実施する。分担1血友病HIV感染者に対する癌スクリーニング法の確立に関する研究。分担2血友病HIV感染者に対する消化管の癌スクリーニングと治療に関する研究。分担3血友病/HIV/HCV重感染患者の肝細胞癌に対する重粒子線治療の安全性・有効性試験。分担4HIVに関連する液性因子による血友病HIV感染者の癌スクリーニングの研究。分担5血友病HIV感染者における二重特異性抗体に対応した新規凝固検査の開発研究。
研究方法
分担1/2では、甲状腺・前立腺を含んだ胸腹部CTスキャン、上部内視鏡と便潜血及び腫瘍マーカー3種類の検査を実施。今回は、先行研究から統合し最終結果とした。さらに、分担2では、癌診断後の臨床経過から診断時の癌ステージと予後との関連を検討。分担3の研究は、血友病患者に対する重粒子線治療の有効性・安全性に関し検証。分担4は、分担研究者の開発したHIVのVprと抗Vpr抗体を検出するELISAを用い、血中Vprが血友病患者の易発癌性に関連するか基礎検討を行う。分担5では、二重特異性抗体医薬について、合成基質法をベースとした凝固モニタリング方法を基礎的に開発。
結果と考察
分担1/2:少なくとも1回スクリーニングを実施したのは77名。1回目実施時の平均年齢は48.3歳。1回目スクリーニングで4例のNADMを発見、prevalenceは5.19%。2017年から2021年終了までの平均検査期間約3.3年間に、69 名が最大4回のスクリーニングを実施。この間6例のNADMを新たに発見、238.97人・年の解析でNADMのincidenceは2.51/100PY。5年間のスクリーニング全体で77名に10例のNADM。現在日本で生存している血友病HIV感染者約700名から約36名のNADM未発見者と毎年18人前後新たなNADMが発症と推定。HIV感染後40年近く経過しているこの集団の高発癌リスクが示された。また、血友病以外も含めた観察で、約9年間に1,001例中NADMを61例認めた。累積NADM発生率は10年で6.4%と見積もられた。一般人口と比しHIV感染者のハイリスクNADMは、胃癌(SIR 8.4)、大腸癌(SIR 9.3)、肝臓癌(SIR 24.3)、肺癌(SIR 4.9)であった。同観察期間で死亡は76例、累積死亡率は10年で7.6%。観察期間にNADMを認めた患者は、死亡リスクが有意に上昇(HR 3.4, p<0.001)。ステージIIIとIVの癌で発見された患者は、ステージIとIIで発見された患者と比較し死亡リスク上昇(年齢と性別を調整したハザード比, 2.7 [95% CI, 1.0–7.7], p=0.046)。NADM早期発見プログラムの重要性が再認識された。分担3の登録症例数は5例。年齢中央値は64歳。重粒子線治療は全例で完遂。Grade2以上の急性期有害反応は認められなかった。観察期間の中央値12か月時点において、局所制御は全例で得られた。引き続き登録を継続し、有効性と安全性の評価を行う。分担4では、癌を発症した126例のHIV患者と癌と診断されなかった278例の非癌症例の末梢血検体について、Vprと抗Vpr抗体量を測定。担癌症例では、Vpr陽性率が高く、抗Vpr抗体陽性率は低い傾向を認めた。血中Vprが検出される頻度は、膵癌(5例中4例、80%)や胃癌(7例中5例、71%)発症例で高頻度に検出されたが、肝癌(4例中0例、0%)や皮膚癌(3例中0例、0%)で低く、血中Vprが特定の臓器の癌化に影響している可能性が示唆された。分担5では、合成基質法、凝固波形検査、トロンビン生成試験(TGA)のいずれもエミシズマブ血中濃度とⅧ因子等価活性が線形関係にあることが示された。エミシズマブ定常状態(340nM)におけるⅧ因子等価活性は、合成基質法で29.3%、TGAで14.7%であり、合成基質法を1/2することでTGAに近似できた。
結論
本研究で血友病HIV感染者のNADMのPrevalenceおよびIncidenceが検出できた。この成果をもとに、このグループに対する癌スクリ-ニングの指針を作成し、全国の血友病HIV感染者に対し癌スクリーニング推奨したい。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202120004B
報告書区分
総合
研究課題名
血友病HIV感染者に対する癌スクリーニング法と非侵襲的治療法の確立に関する研究
課題番号
19HB1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 尚義(東京医科大学 消化器内視鏡学)
  • 大野 達也(群馬大学)
  • 石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所、難治性疾患研究)
  • 木内 英(東京医科大学 臨床検査医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病HIV感染者において癌患者が散見される。先行のFDG-PETを用いた癌スクリーニング研究で、68例中6例に癌が見つかり高率であった。この結果は、癌スクリーニングの重要性を示唆した。しかし、FDG-PETを用いたスクリーニングでは、全国施設への均霑化はできないため、一般施設でも実施可能なスクリーニング法を検討する課題が残った。また、血友病患者においては、非観血的かつ非侵襲的な治療法を確立する必要性も高い。本研究では、従来の研究で明らかになってきたこれらの課題を克服する目的で、以下の5つの研究を実施する。分担1血友病HIV感染者に対する癌スクリーニング法の確立に関する研究。分担2血友病HIV感染者に対する消化管の癌スクリーニングと治療に関する研究。分担3血友病/HIV/HCV重感染患者の肝細胞癌に対する重粒子線治療の安全性・有効性試験。分担4HIVに関連する液性因子による血友病HIV感染者の癌スクリーニングの研究。分担5血友病HIV感染者における二重特異性抗体に対応した新規凝固検査の開発研究。
研究方法
分担1/2では、甲状腺・前立腺を含んだ胸腹部CTスキャン、上部内視鏡と便潜血及び腫瘍マーカー3種類の検査を実施。今回は、先行研究から統合し最終結果とした。さらに、分担2では、癌診断後の臨床経過から診断時の癌ステージと予後との関連を検討。分担3の研究は、血友病患者に対する重粒子線治療の有効性・安全性に関し検証。分担4は、分担研究者の開発したHIVのVprと抗Vpr抗体を検出するELISAを用い、血中Vprが血友病患者の易発癌性に関連するか基礎検討を行う。分担5では、二重特異性抗体医薬について、合成基質法をベースとした凝固モニタリング方法を基礎的に開発。
結果と考察
分担1/2:少なくとも1回スクリーニングを実施したのは77名。1回目実施時の平均年齢は48.3歳。1回目スクリーニングで4例のNADMを発見、prevalenceは5.19%。2017年から2021年終了までの平均検査期間約3.3年間に、69 名が最大4回のスクリーニングを実施。この間6例のNADMを新たに発見、238.97人・年の解析でNADMのincidenceは2.51/100PY。5年間のスクリーニング全体で77名に10例のNADM。現在日本で生存している血友病HIV感染者約700名から約36名のNADM未発見者と毎年18人前後新たなNADMが発症と推定。HIV感染後40年近く経過しているこの集団の高発癌リスクが示された。また、血友病以外も含めた観察で、約9年間に1,001例中NADMを61例認めた。累積NADM発生率は10年で6.4%と見積もられた。一般人口と比しHIV感染者のハイリスクNADMは、胃癌(SIR 8.4)、大腸癌(SIR 9.3)、肝臓癌(SIR 24.3)、肺癌(SIR 4.9)であった。同観察期間で死亡は76例、累積死亡率は10年で7.6%。観察期間にNADMを認めた患者は、死亡リスクが有意に上昇(HR 3.4, p<0.001)。ステージIIIとIVの癌で発見された患者は、ステージIとIIで発見された患者と比較し死亡リスク上昇(年齢と性別を調整したハザード比, 2.7 [95% CI, 1.0–7.7], p=0.046)。NADM早期発見プログラムの重要性が再認識された。分担3の登録症例数は5例。年齢中央値は64歳。重粒子線治療は全例で完遂。Grade2以上の急性期有害反応は認められなかった。観察期間の中央値12か月時点において、局所制御は全例で得られた。引き続き登録を継続し、有効性と安全性の評価を行う。分担4では、癌を発症した126例のHIV患者と癌と診断されなかった278例の非癌症例の末梢血検体について、Vprと抗Vpr抗体量を測定。担癌症例では、Vpr陽性率が高く、抗Vpr抗体陽性率は低い傾向を認めた。血中Vprが検出される頻度は、膵癌(5例中4例、80%)や胃癌(7例中5例、71%)発症例で高頻度に検出されたが、肝癌(4例中0例、0%)や皮膚癌(3例中0例、0%)で低く、血中Vprが特定の臓器の癌化に影響している可能性が示唆された。分担5では、合成基質法、凝固波形検査、トロンビン生成試験(TGA)のいずれもエミシズマブ血中濃度とⅧ因子等価活性が線形関係にあることが示された。エミシズマブ定常状態(340nM)におけるⅧ因子等価活性は、合成基質法で29.3%、TGAで14.7%であり、合成基質法を1/2することでTGAに近似できた。
結論
本研究で血友病HIV感染者のNADMのPrevalenceおよびIncidenceが検出できた。この成果をもとに、このグループに対する癌スクリ-ニングの指針を作成し、全国の血友病HIV感染者に対し癌スクリーニング推奨したい。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202120004C

収支報告書

文献番号
202120004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
42,900,000円
(2)補助金確定額
40,604,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,296,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,639,827円
人件費・謝金 18,125,765円
旅費 161,700円
その他 9,777,225円
間接経費 9,900,000円
合計 40,604,517円

備考

備考
新型コロナウイルス感染症流行により会議がオンライン開催となり海外旅費が不要となった等。

公開日・更新日

公開日
2023-04-11
更新日
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