バイオテロ対策のための備蓄されている細胞培養痘そうワクチンの備蓄等,バイオテロ病原体への検査対応,公衆衛生との関連のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
202119018A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテロ対策のための備蓄されている細胞培養痘そうワクチンの備蓄等,バイオテロ病原体への検査対応,公衆衛生との関連のあり方に関する研究
課題番号
20HA2005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 英輔(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科)
  • 齋藤 智也(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 鈴木 基(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所感染病理部)
  • 前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 吉河 智城(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
21,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際情勢の不安定化が進んでいる。現在ロシアのウクライナへの軍事侵攻が国際社会の安全を揺るがし、生物・化学兵器の使用も危惧されている。日本では2021年に東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)が開催された。今後のバイオテロ対策に資する活動基盤を整備する。
研究方法
1)高度弱毒化痘瘡ワクチン(LC16m8)研究:LC16m8株は41℃ではプラークを形成しないという特徴を有し、それが安全性を担保する。しかし、LC16m8ワクチン製造過程で、その特徴を失うmedium size plaque(MSP)を形成するようになる。そのMSPをウイルスレベルでより簡便、迅速、かつ特異的に検出できる検査法開発のためにLC16m8及びMSPの共通抗体及びMSP特異抗体を作製し、その品質評価における有用性を評価した。
2)LC16m8を土台とした高病原性ウイルス感染症に対するワクチン開発:狂犬病ウイルスG蛋白質発現組換えワクシニアウイルスを作製した。SARS-CoV-2 WK-521株のS、S1、S2遺伝子をコードする組換えm8(m8-S_full、m8-S1、m8-S2)のin vitroに於ける感染細胞での遺伝子発現を確認した。シリアンハムスターを用いたSARS-CoV-2感染モデルを用いて、その有効性を評価した。
3)高病原性病原体検査法開発・改良、維持:感染性のあるクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)のBagdad株(アジア1型)、Kosova Hoti株(ヨーロッパ1型)、IbAr10200株(アフリカ3型)、UK株(アジア1型)をVeroE6細胞で増殖させる系で、中和抗体測定法を開発・整備した。
4)国際連携強化:バイオテロに関連する国際会議に出席した。
5)感染症情報、疫学の調査手法の改良と開発:定量的、定性的な手法をあわせた方法で疑似症サーベイランスシステムを評価した。
6)バイオテロ対策の強化に関する研究:日本における類鼻疽のリスクを検討し、原因菌B. pseudomalleiを利用したバイオテロについても考察した。
7)情報提供関連活動:バイオテロホームページの作成と最新の情報への更新を行った。
結果と考察
1)LC16m8、LC16mO及びMSPのB5R共通抗原及びLC16mO及びMSPのB5R特異的抗原に対するウサギ由来抗血清を作製した。これらの抗体を用いて、flow cytometryや蛍光抗体法により、ウイルスレベルでのMSPを検出できることが示唆された。LC16m8の品質管理試験法の簡略化等に有用である。
2)狂犬病ウイルスのG蛋白が発現している組換えワクシニアウイルスをプラーク純化繰り返し、最終的な狂犬病ウイルスG蛋白発現組換えLC16m8を作製した。
3)m8-S_full、m8-S1、m8-S2、対照としてm8を免疫したハムスターにSARS-CoV-2をチャレンジした後4日間の体重推移と、4日目の肺中のウイルス量、及び血中の中和抗体価を調べた。対照群であるm8と比較してm8-S_full、m8-S1、m8-S2は体重の減少が緩やかであった。m8-S_full、m8-S1、m8-S2を免疫した群で有意にウイルス量が減少し、特にm8-S_full免疫群で顕著であった。血中の中和抗体価はm8-S_fullが最も高かった。m8-S_full免疫群では、肺胞野において急性肺炎を示唆する所見はなかった。
4) CCHFV UK株での中和抗体価が最も高かった。CCHFVに対する中和抗体測定には、CCHFV UK株が適当であった。
5)2021年11月3-4日に開催されたWHO痘瘡ウイルス研究専門家アドバイザリーコミティーに出席し、痘瘡ワクチン備蓄や痘瘡ウイルスを用いたバイオテロ対策のあり方に関する情報を収集した。
6)東京オリパラ期間中にバイオテロ関連と考えられる事象はなかった。
7)今般発生した米国の類鼻疽流行2事案は、輸入製品あるいは輸入観賞魚からの感染であり、短期間で終息した。COVID-19に関する項目とメリオイドーシス(鼻疽菌・類鼻疽菌)の事例などによる注意喚起をバイオテロホームページに追加した。
結論
痘瘡ウイルスによるバイオテロに備える上で、LC16m8を生産・備蓄している日本は重要な役割を果たし、本研究班の活動が高く貢献している。組換えLC16m8ワクチン作出法を開発し、COVID-19や狂犬病のワクチンが開発された。2021年には東京オリパラが開催された。本研究班はバイオテロに備えて疫学調査、検査への支援体制の整備、対策本部感染症対策アドバイザーを担当するなどして、安全対策に貢献した。バイオテロ対策強化の研究課題は、開発途上である。今後もLC16m8に関連する研究、品質管理法の改良、疫学調査、国際連携、社会への情報提供のあり方を検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

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2024-06-07
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文献番号
202119018Z