薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究

文献情報

文献番号
202119016A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究
課題番号
20HA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大曲 貴夫(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大毛 宏喜(国立大学法人広島大学 病院 感染症科)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 倉井 華子(静岡県立静岡がんセンター感染症内科)
  • 村木 優一(京都薬科大学 医療薬科学系 臨床薬剤疫学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
14,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の前身である厚生労働行政推進調査事業費研究「薬剤耐性(AMR)アクションプランの実行に関する研究」では薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに必要なサーベイランス、教育手法、医療経済的影響について検討した。これによる一定の知見を得て行政施策に反映させることができたが、地域におけるAMR対策の推進等未解決の課題がある。よってそれらの課題を解決しAMR)アクションプランを更に推進することを本研究の目的とする。
必要性:薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの実行においてはサーベイランス、抗菌薬使用量・適正使用、教育啓発、医療経済の知見を得る必要がある。加えて地域でのAMR対策を検討する必要がある。
研究方法
以下について研究を遂行した:
1.医療関連感染(HAI)サーベイランスに関する研究
2.抗菌薬使用量サーベイランスに関する研究
3.抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究
4.AMR対策の教育啓発に関する研究
5.AMRの医療経済的評価に関する研究
6.抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究
7.地域でのAMR対策の推進モデルの確立のための研究
結果と考察
1. 医療関連感染(HAI)サーベイランスに関する研究では、J-SIPHEに蓄積されたデータを解析して院内感染対策および抗菌薬適正使用支援の状況を評価した。高齢者施設の医療関連感染症および抗菌薬使用の調査にて現状を確認し、抗菌薬適正使用の基礎調査を行った。JANISおよびレセプトデータを活用し、薬剤耐性菌の疾病負荷を推定した。さらに、レセプトデータと薬剤耐性菌のデータを結合し、より詳細な疾病負荷の指標を算出する準備を開始した。
2. 抗菌薬使用量サーベイランスに関する研究では、抗菌薬販売量やNDBを利用したAMUモニタリングにより, 抗菌薬適正使用支援を進めるべき対象がわかってきた. また, 様々な領域における抗菌薬使用に関する問題点が明確化した. 一方, 販売量とNDBそれぞれのデータの使用において, 両者ともに, 長所, 短所があるため, 特性を見極めて今後もサーベイランスを継続し, 適正使用支援へ活用することが重要である。
3. 抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究では本研究により, 抗菌薬適正使用支援として取り組むべき対象や課題がより明らかとなった. 今後も引き続き研究を行い, 実際の介入や支援につなげていく必要がある。
4. AMR対策の教育啓発に関する研究では、日本の薬剤耐性対策の取り組みは始まって数年であるが、その成果が現れるには数年かかると見込まれる。2018年から開始した一般市民のAMRに関する4回の意識調査(2017年は柳原班で実施)、診療所に勤務する医師の抗菌薬適正使用に関与する因子の検討については継続して分析し、今後は医療従事者、一般市民それぞれ対象別のアプローチを検討し、意識や行動変容を促していく必要があることを示した。
5. AMRの医療経済的評価に関する研究では院内感染対策の実態調査、大規模データによる分析を検討し、経済的負担、AMR対策・院内感染対策の要改善領域を明らかにした。また、AMR対策上重要な広域抗菌薬の適正使用を評価する指標の開発のため、まず肺炎入院患者における標準化広域抗菌薬使用割合を用いたO/E比を可視化した。
6. 抗微生物薬適正使用サーベイランスに関する研究では、抗菌薬使用状況の比較では施設間に大きな差を認め,必ずしも薬剤耐性状況および耐性菌の分子疫学解析結果と抗菌薬使用状況の間に相関が期待できる結果ではなかったことと、地域中核医療機関の薬剤耐性菌サーベイランスは診療所のアンチバイオグラムとして活用可能と考えられるが,抗菌薬使用状況データは関連が乏しい可能性があることを示した.
7. 地域でのAMR対策の推進モデルの確立のための研究では、AMR対策に地域差が出る要因として①歴史的経緯から実施主体にばらつきがあること、②行政が加わることにより継続した活動が維持できること、③新興感染症でできたネットワークを生かす地域が多く、他部門の連携にはAMR以外の感染症対策も同時に扱う必要があることが見えてきた。
結論
本研究ではAMRが社会に与える負荷をサーベイランスを行って明らかにしながら、AMR対策に実効性を持たせるための教育啓発の手法について研究を行ってきた。病院についてはサーベイランスの基盤ができたため、今後は対象を地域に広げていくことが必要である。また薬剤耐性や抗菌薬に関する一般国民の意識の変化には長い時間を要するため、今後学校教育を含め普及・啓発活動を広げていくことで、意識の変容を促していく必要がある。院内感染対策の経済的負担、院内感染対策の要改善領域を明らかにされたため、今後情報提供による介入効果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202119016Z