文献情報
文献番号
202119015A
報告書区分
総括
研究課題名
一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究
課題番号
20HA2002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 康幸(国際医療福祉大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 徳田 浩一(東北大学病院 感染管理室)
- 倭 正也(地方独立行政法人りんくう総合医療センター 感染症センター)
- 忽那 賢志(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
- 氏家 無限(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の役割は一類感染症等の患者の医療を担当する特定及び第一種感染症指定医療機関を支援し,国の厚生行政に貢献することである.最新の知見を情報収集し,研修会や診療の手引きの公表を通じて,国内の医療従事者に還元を図ることを目的とする.2021年2月に指定感染症から新型インフルエンザ等感染症に指定された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の臨床的課題について,迅速に解決を図る必要がある.
研究方法
感染管理
分担研究者の徳田らは宮城県内の14保健所を対象に,COVID-19の他の感染症対策への影響を調査する目的で質問紙調査を行った.13施設から回答があり,9施設で問題が生じ,臨時で人員を増やす等の対策を行なったものの十分な解決に至らない状況が明らかとなった.
集中治療
分担研究者の倭らはりんくう総合医療センターに入院したCOVID-19患者(2020年3月〜2021年11月)777例(レムデシビル投与306例,非投与471例)について,後方視的にレムデシビルの有効性を解析した.その結果,全生存と28日生存において,統計学的に有意に有効性があることを確認した.
医療従事者の研修
分担研究者の忽那らは第一種感染症指定医療機関等の医療従事者や行政関係者等を対象に医療体制整備を目的とした研修会を企画し,オンラインで開催した(2022年2月19日).内容はエボラ出血熱の臨床的対応における進歩に加えて,わが国の感染症医療体制の経緯や国内外での患者発生状況のレビューが含まれ,500名が参加登録した.
感染症危機管理に関する情報収集
分担研究者の氏家らは国際感染症等の人材育成に関して,国際協力機構と意見交換会を行なった.
新型コロナウイルス感染症対策
研究班の研究者が協力して, 下記を実施した.
1. 診療の手引きの改訂
COVID-19の国内流行に対応するため,診療の手引きを改訂した.昨年度と同様に,日本感染症学会,日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本小児科学会,日本産婦人科学会,日本救急医学会から委員の推薦を受け,診療の手引き検討委員会を組織した.新規治療薬や医療逼迫を背景に発出された事務連絡等の周知を図るよう,第5.0版(5月),第5.1版(6月),第5.2版(7月),第5.3版(8月),第6.0版(11月),第6.1版(12月),第6.2版(1月),第7.0版(2月)と計9回改訂した.
2. 診療の手引き別冊:罹患後症状のマネージメントの作成
新型コロナウイルス感染症対策推進本部の要請を受けて,診療の手引き別冊として,罹患後症状のマネージメント(暫定版)を12月に発行した.呼吸器内科,循環器内科,神経内科,精神神経科,アレルギー膠原病科,耳鼻咽喉科,感染症内科,小児科,リハビリテーション医学,産業医学等の専門家からなる編集委員会を組織した.これは罹患後症状に関する国民的な関心に応えるものである.次いで,最新の知見を反映した第1版を3月から作成に着手した.
分担研究者の徳田らは宮城県内の14保健所を対象に,COVID-19の他の感染症対策への影響を調査する目的で質問紙調査を行った.13施設から回答があり,9施設で問題が生じ,臨時で人員を増やす等の対策を行なったものの十分な解決に至らない状況が明らかとなった.
集中治療
分担研究者の倭らはりんくう総合医療センターに入院したCOVID-19患者(2020年3月〜2021年11月)777例(レムデシビル投与306例,非投与471例)について,後方視的にレムデシビルの有効性を解析した.その結果,全生存と28日生存において,統計学的に有意に有効性があることを確認した.
医療従事者の研修
分担研究者の忽那らは第一種感染症指定医療機関等の医療従事者や行政関係者等を対象に医療体制整備を目的とした研修会を企画し,オンラインで開催した(2022年2月19日).内容はエボラ出血熱の臨床的対応における進歩に加えて,わが国の感染症医療体制の経緯や国内外での患者発生状況のレビューが含まれ,500名が参加登録した.
感染症危機管理に関する情報収集
分担研究者の氏家らは国際感染症等の人材育成に関して,国際協力機構と意見交換会を行なった.
新型コロナウイルス感染症対策
研究班の研究者が協力して, 下記を実施した.
1. 診療の手引きの改訂
COVID-19の国内流行に対応するため,診療の手引きを改訂した.昨年度と同様に,日本感染症学会,日本呼吸器学会,日本集中治療医学会,日本小児科学会,日本産婦人科学会,日本救急医学会から委員の推薦を受け,診療の手引き検討委員会を組織した.新規治療薬や医療逼迫を背景に発出された事務連絡等の周知を図るよう,第5.0版(5月),第5.1版(6月),第5.2版(7月),第5.3版(8月),第6.0版(11月),第6.1版(12月),第6.2版(1月),第7.0版(2月)と計9回改訂した.
2. 診療の手引き別冊:罹患後症状のマネージメントの作成
新型コロナウイルス感染症対策推進本部の要請を受けて,診療の手引き別冊として,罹患後症状のマネージメント(暫定版)を12月に発行した.呼吸器内科,循環器内科,神経内科,精神神経科,アレルギー膠原病科,耳鼻咽喉科,感染症内科,小児科,リハビリテーション医学,産業医学等の専門家からなる編集委員会を組織した.これは罹患後症状に関する国民的な関心に応えるものである.次いで,最新の知見を反映した第1版を3月から作成に着手した.
結果と考察
本年度の活動の中心にあった新型コロナウイルス感染症診療の手引きは厚労省から事務連絡で周知されるようになり,全国の医療機関等で利用されているものと考えられる.患者の予後改善には,その時点における標準的な治療法を多くの患者に提供することが重要と考えられる.本手引きがその一助となることが期待される.検討委員会委員は第一線で活動している臨床医や研究者であり実際の医療現場の状況が得られやすいほか,厚労省新型コロナウイルス対策推進本部との緊密な連携が9回も改訂を実施できた背景にあると考えられる.
COVID-19から回復後も倦怠感等が持続する罹患後症状は世界中で大きな臨床的課題となっている.多くの患者において,半年から1年以上かけて症状は消失するものと考えられているが,標準的な治療やケアが確立していない.手引き別冊:罹患後症状のマネージメントはこのような状況の改善につながるものと期待される.今後の新たな知見に応じて,改訂が図られる必要がある.
医療従事者に対する研修はオンラインを活用して計画通り実施された.海外渡航の再開に応じて,エボラ出血熱やサル痘等の輸入症例が発生するリスクがあり,感染症指定医療機関や保健所等の関係者は準備を進めていくことが必要である.
COVID-19から回復後も倦怠感等が持続する罹患後症状は世界中で大きな臨床的課題となっている.多くの患者において,半年から1年以上かけて症状は消失するものと考えられているが,標準的な治療やケアが確立していない.手引き別冊:罹患後症状のマネージメントはこのような状況の改善につながるものと期待される.今後の新たな知見に応じて,改訂が図られる必要がある.
医療従事者に対する研修はオンラインを活用して計画通り実施された.海外渡航の再開に応じて,エボラ出血熱やサル痘等の輸入症例が発生するリスクがあり,感染症指定医療機関や保健所等の関係者は準備を進めていくことが必要である.
結論
COVID-19流行を受けて,その臨床的課題の解決に努めた.診療の手引きの改訂や別冊の発行など,医療の均てん化という面で国の厚生行政に大きく寄与したものと考える.
公開日・更新日
公開日
2024-06-07
更新日
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