千葉県における一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを検証・推進するための研究

文献情報

文献番号
202119008A
報告書区分
総括
研究課題名
千葉県における一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを検証・推進するための研究
課題番号
20HA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪狩 英俊(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 石和田 稔彦(千葉大学医学部附属病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,666,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性菌(AMR)アクションプラン2016-2020において、地域全体における各機関が連携してAMR対策を促進する「地域感染症対策ネットワーク」の懸念が提示されている。抗菌薬処方の多くは外来処方であり、抗菌薬適正使用促進のためには地域感染症対策ネットワークを一般診療所(開業医)まで広げる必要がある。一般診療所を中心とした外来抗菌薬処方に対する介入は標準モデルが確立していない。これまでの病院レベルの地域感染対策ネットワークに加えて、医師会および薬剤師会と大学病院が連携しながら一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを確立することが本研究の目的である。
研究方法
①保険薬局におけるモニタリングと一般診療所へのフィードバック
・千葉県全体の医療機関を調査対象として研究参加に同意した千葉県薬剤師会加入の保険薬局が応需する医療機関ごとのデータをレセプトコンピューターから抽出、毎月の全抗菌薬処方箋枚数と抗菌薬の種類別の処方箋枚数を千葉県医師会事務局で回収し集計した。
・調査結果は3か月ごとに千葉県医師会員ならびに薬剤師会員に機関誌等によりフィードバックした。AMRアクションプランが示された当時の抗菌薬使用実態を検証するため2017年のデータも抽出した(後ろ向き研究)。
・「保険薬局と連携した経口抗菌薬処方の実態把握とそれに基づく抗菌薬使用の省みの効果の検証」を積極的に行うことを希望する医療機関に対して、処方箋を応需している保険薬局に申し出て、当該医療機関のみの全抗菌薬処方箋枚数と抗菌薬系統別の処方箋枚数の集計結果を毎月当該保険薬局からフィードバックする。
②NDBを用いた千葉県内の抗菌薬処方量の検証
特別抽出にて医科外来レセプトおよび調剤レセプトより抗菌薬処方のある患者のレセプトを2017年度から解析する。千葉県全体、二次医療圏、市町村単位で抗菌薬の使用量を集計、上記モニタリングと同じ時間軸で集計して抗菌薬の処方量が減少傾向にあることを確認する。
③千葉県臨床検査技師会による微生物学的サーベイランスによる薬剤耐性菌動向の検証
千葉県臨床検査技師会のネットワークを利活用して千葉県内の二次医療圏ごとの薬剤耐性菌のサーベイランスシステムを作成する。
結果と考察
①保険薬局におけるモニタリングと一般診療所へのフィードバック
・モニタリングを実施している保険薬局が存在する市町村は27となった。2020年4-6月および2021年4-6月の応需処方箋枚数はそれぞれ272,865枚、289,065枚であり、2019年の同時期(282,489枚)と比較して大きな変化はなかった。その中での抗菌薬の処方箋は、2020年4-6月で7.4%、2021年4-6月で11.9%と前年同時期(11%)と比較して2020年は減少、2021年は増加している。2021年はRSウイルス感染の流行により抗菌薬の処方が増加したと考えられる。これらのデータを千葉県医師会報および薬剤師会報にて参加会員にフィードバックをしている。2020-2021年度の使用状況などを解析して、COVID-19による診療形態の問題点や呼吸器感染症の流行などによる抗菌薬処方の増加などリアルタイムに見出すことができており、これらに関して薬剤師会員および医師会会員にWeb講演という方法で周知を行った。また個別の診療所に対するフィードバックを開始した。
②NDBを用いた千葉県内の抗菌薬処方量の検証
・令和4年度におけるデータ解析を目標としてNDBの申請を行い、許可を得た。令和4年4月末にデータが到着する。到着次第解析する。
③千葉県臨床検査技師会による微生物学的サーベイランスによる薬剤耐性菌動向の検証
・千葉県臨床検査技師会の微生物班により、JANISの検査部門に参加している病院、すなわち二次医療圏の基幹病院で耐性菌データをまとめている施設に対して協力を求めて、千葉県の二次医療圏ごとの耐性パターンをNTTコミュニケーションズ(株)と共同で視覚化するシステムが2021年12月末に完成。令和3年度は2020年における二次医療圏ごとの耐性パターンおよびアンチバイオグラムを作成した。
結論
千葉県内における外来抗菌薬処方量のリアルタイムのモニタリングとフィードバックを行い、処方量の減少及び薬剤耐性菌の検出率を低下するか検証を進めている。二次医療圏ごとに抗菌薬処方量や薬剤耐性菌の検出パターンが異なることが判明した。地域の特性に合わせた抗菌薬適正使用の教育や介入が必要である。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202119008Z