急性弛緩性麻痺、急性脳炎・脳症等の神経疾患に関する網羅的病原体検索を含めた原因及び病態の究明、治療法の確立に資する臨床疫学研究

文献情報

文献番号
202119002A
報告書区分
総括
研究課題名
急性弛緩性麻痺、急性脳炎・脳症等の神経疾患に関する網羅的病原体検索を含めた原因及び病態の究明、治療法の確立に資する臨床疫学研究
課題番号
19HA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,634,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202119002B
報告書区分
総合
研究課題名
急性弛緩性麻痺、急性脳炎・脳症等の神経疾患に関する網羅的病原体検索を含めた原因及び病態の究明、治療法の確立に資する臨床疫学研究
課題番号
19HA1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202119002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
原因不明症例の31%から急性脳炎・脳症の原因と考えられる病原体遺伝子が検出された。日本脳炎、ダニ媒介脳炎は全例で否定されたが、正確に診断されていないJE患者あるいはTBE患者が存在する可能性を考慮する必要がある。自己免疫性脳炎に関する検討では、免疫組織化学を用いた抗神経抗体の新規検出法を確立し,抗体価定量法を開発した。自己免疫性脳炎の約8割は神経学的予後良好であったが,社会復帰は約6割にとどまった。国内で販売されている免疫グロブリン製剤すべてにおいてEV-D68に対する中和抗体が検出された。
臨床的観点からの成果
2015年発症AFMは1〜2肢麻痺として運動障害持続率は高いが、障害レベルは発症3年で全般的に改善した。2018年発症AFMは重症例(4肢麻痺、人工呼吸管理)が多かった。AFM症例の画像所見は類似し、長大な脊髄縦走病変が半数、急性期に灰白質+白質に病変を認める例が多かった。神経生理学的特徴は、M波振幅の低下とF波出現率の低下であり、運動神経軸索型障害を呈し、脊髄前角細胞の障害を示唆する所見であった。小児入院症例全例調査可能な福島県で3年間に発生した急性脳炎・脳症は19例であった。
ガイドライン等の開発
AFPについては、2018年5月から全数届出制度が始まったが、2015年に作成した「急性弛緩性麻痺を認める疾患のサーベイランス・診断・検査・治療に関する⼿引き」を改訂し第2版を作成した。現時点では、AFP症例でポリオ検索のため2回の便検査を受けた症例は少なかった。
その他行政的観点からの成果
WHO西太平洋地域でポリオの届出ができていなかったわが国で、2022年1月からAFP症例の届出開始に貢献することができた。多くの地衛研で、急性脳炎・脳症例から病原体検索を実施しており、約50%で陽性所見が得られていた。地衛研ではAFP86症例からのべ140種類の病原体が検出された結果、コクサッキーウイルスが最も多く、ライノウイルス、EV-D68、EBV, CMV、HHV6, 7、がこれに続いた。EV-D68は25.6%から検出され、鼻咽頭拭い液が72.7%、その他の検体からは少なかった。
その他のインパクト
感染症発生動向調査に基づき報告された急性脳炎・脳症は12年間で6,147人で、2021年の報告数は直近10年間で最低であった。AFPは2021年までに275人が報告され、2021年は報告開始以降で最低であった。適切な時期の適切な種類の検体採取・保管・搬送が極めて重要であり、急性期検体の確保/保存の重要性を手引き等で周知する必要があると考えられた。小児科定点によるサーベイランスのデータとGoogle Trendsによる検索回数との間には強い正の相関関係を認め、流行察知の一助になりうると考えられた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
感染症発生動向調査票の改訂1件、手引き作成1件、手引き第2版作成1件、WPROへの報告開始1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
作成した手引きのHPへの掲載1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Chong PF, Torisu H, Yasumoto S, et al
Clinical and electrophysiological features of acute flaccid myelitis: A national cohort study.
Clinic Neurophysiol. , 132 (10) , 2456-2463  (2021)
原著論文2
Chong PF, Kira R, Torisu H, et al
Three-Year Longitudinal Motor Function and Disability Level of Acute Flaccid Myelitis.
Pediatr Neurol. , 116 , 14-19  (2021)
原著論文3
Nagai T, Hanaoka N, Katano H, et al
A fatal case of acute encephalopathy in a child due to coxsackievirus A2 infection: a case report.
BMC Infect Dis. , 21 (1) , 1167-  (2021)
原著論文4
Shimizu H.
Inactivated enterovirus A71 vaccines and moving forward.
The Lancet Regional Health - Western Pacific. , 16 , 100292-  (2021)
原著論文5
Murphy OC, Messacar K, Benson L, et al
Acute flaccid myelitis: Etiology, diagnosis, and management.
Lancet. , 397 (10271) , 334-346  (2021)
原著論文6
Banno F, Shibata S, Hasegawa M, et al
Acute flaccid myelitis presumably caused by coxsackie virus A10.
Pediatr Int. , 63 (1) , 104-105  (2021)
原著論文7
Nishida H, Kohyama K, Kumada S, et al
Evaluation of the Diagnostic Criteria for Anti-NMDA Receptor Encephalitis in Japanese Children.
Neurology. , 96 (16) , e2070-e2077  (2021)
原著論文8
Hara Makoto, Nakajima H, Kamei S. et al
Practical approach for the diagnosis of disorders associated with antibodies against neuronal surface proteins.
Neurology and Clinical Neuroscience. , 9 , 56-62  (2021)
原著論文9
Chong PF, Yoshida T, Yuasa S, et al
Acute flaccid myelitis with neuroradiological finding of brachial plexus swelling.
Pediatr Neurol. , 109 , 85-88  (2020)
原著論文10
Nakamura R, Chong PF, Haraguchi K, et al
Disseminated cortical and subcortical lesions in neonatal enterovirus 71 encephalitis.
J Neurovirol. , 26 (5) , 790-792  (2020)
原著論文11
Okumura A, Numoto S, Iwayama H, et al
Respiratory illness and acute flaccid myelitis in the Tokai district in 2018.
Pediatr Int. , 62 (3) , 337-340  (2020)
原著論文12
Chong PF, Yoshida T, Yuasa S, et al
Acute Flaccid Myelitis With Neuroradiological Finding of Brachial Plexus Swelling.
Pediatr Neurol. , 109 , 85-88  (2020)
原著論文13
Okumura A, Mori H, Fee Chong P, et al
Serial MRI findings of acute flaccid myelitis during an outbreak of enterovirus D68 infection in Japan.
Brain Dev. , 41 (5) , 443-451  (2019)
原著論文14
Funakoshi Y, Ito K, Morino S, et al
Enterovirus D68 respiratory infection in a children's hospital in Japan in 2015.
Pediatr Int. , 61 (8) , 768-776  (2019)
原著論文15
Hatayama K, Goto S, Yashiro M, et al
Acute flaccid myelitis associated with enterovirus D68 in a non-epidemic setting.
IDCase. , 17 , e00549-  (2019)
原著論文16
Okumura A, Mori H, Fee Chong P, et al
Serial MRI findings of acute flaccid myelitis during an outbreak of enterovirus D68 infection in Japan.
Brain Dev. , 41 , 443-451  (2019)
原著論文17
Chong PF, Kira R, Tanaka-Taya K.
Description of restrictively defined acute flaccid myelitis.
JAMA Pediatr. , 173 (7) , 702-  (2019)
原著論文18
Nanishi E, Hoshina T, Sanefuji M, et al
A nationwide surveyof pediatric-onset Japanese encephalitis in Japan.
Clin Infect Dis. , 68 , 2099-2019  (2019)
原著論文19
Shima T, Okumura A, Kurahashi H, et al
A nationwide survey of norovirus-associated encephalitis/encephalopathy in Japan.
Brain Dev. , 41 (3) , 263-270  (2019)

公開日・更新日

公開日
2024-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202119002Z