就労系障害福祉サービス事業所におけるテレワークによる就労の推進のための研究

文献情報

文献番号
202118048A
報告書区分
総括
研究課題名
就労系障害福祉サービス事業所におけるテレワークによる就労の推進のための研究
課題番号
21GC1017
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山口 明日香(藤井 明日香)(高松大学 発達科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 八重田 淳(筑波大学 人間系)
  • 前原 和明(秋田大学 教育文化学部)
  • 縄岡 好晴(大妻女子大学人間関係学部)
  • 野崎 智仁(国際医療福祉大学 保健医療学部作業療法学科)
  • 北上 守俊(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科)
  • 藤川 真由(慶應義塾大学 医学部)
  • 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所・障害福祉研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、企業等における障害者テレワークの実態把握、事業所における在宅就労支援の現状把握と課題整理、発達障害、精神障害等の多様な障害に対応したテレワークによる就労の支援ノウハウの精査、支援効果に関する情報を収集し、事業所がICTを活用したテレワークによる就労の支援に取り組む上で活用できる支援マニュアルを作成し普及する。またテレワークによる就労を支援できる人材の育成としてオンライン研修等の実施、オンデマンド形式による研修プログラムの開発を行うことを目的とした。
研究方法
本研究は、就労系障害福祉サービス事業所におけるテレワーク雇用の推進及び人材育成研修プログラムの開発を目的に以下の研究によって実施した。「(Ⅰ)研究Ⅰ:企業雇用(特例含む)の障害者テレワークの現状把握」、「(Ⅱ)研究Ⅱ:就労サービス事業所のテレワーク支援の現状把握」、「(Ⅲ)研究Ⅲ:職業リハビリテーション訓練フェーズにおける支援ポイントの整理」、「(Ⅳ)研究Ⅳ:障害特性とテレワーク就労の適性の整理」【(Ⅴ)研究:支援マニュアル作成とオンライン研修の実施】の5つの研究の内研究Ⅳまでを実施した。研究Ⅰと研究Ⅱにより障害者のテレワークによる就労の現状を広く把握し、研究Ⅲでテレワークによる就労支援の内容を職業リハビリテーション支援プロセスに沿って整理し、支援プロセスの中で効果の高い支援を導き出した。研究Ⅳは障害特性による支援ポイントの違いや環境設定、支援者の関わり方を整理した。
結果と考察
 本研究の遂行にあたり,まず国際動向の把握と国内課題の整理を目的として実施した分担研究者八重田氏の知見から,国際動向からも障害者のテレワークを支える人材として,①テレワークに必要となる情報通信技術の準備ができる人,②,その使い方とテレワーク業務を教えながら援助できる人,③テレワーク業務に関連する情報保障・安全保障・法令遵守等の疑問を解決できる人,④専門的なコンサルテーションを事業所に提供できる人,⑤障がい特性に応じたテレワークの合理的配慮を定期的に確認修正できる人,⑥テレワーク雇用の継続に必要な雇用管理業務を請け負う人といった役割を担える人材が必要であることが明らかになった。研究分担者前原氏の研究では,知的障害のある者のテレワークの可能性を検討し,アセスメントの視点からテレワーク準備性とも呼べる従来の職業準備性の概念を拡張し,具体的なスキル内容の整理が課題となるこを明らかに,研究代表者の山口,分担研究者野崎氏,縄岡氏では,テレワーク就労の支援実績及び在宅による職業訓練実績のある国内の就労系障害福祉サービス事業所のヒアリング調査から,そのノウハウやアセスメントの視点,環境調整等の要素について整理し,従来の職業リハビリテーションサービスの支援の流れと「在宅訓練・テレ訓練」の導入について整理した。
研究分担者北上氏・藤川氏・清野氏は,高次脳機能障害又はてんかんを含む発達障害及び精神障害のある者のテレワークによる就労の適応性について検討した。その結果,発達障害及び精神障害の特性自体は,テレワークへの適応性が担保されることが確認されたが,ICT端末等や作業環境等が影響する認知的負荷の課題が指摘されていることから,管理者側の環境評価やデバイス等の適切な選択等が重要になることが明らかになった。また職業リハビリテーションサービスの支援者の7割以上がオンライン支援や業務の可能性を感じており,動画教材等のニーズやオンライン支援の業務やノウハウの蓄積と共有を求めていることが明らかになった。これらの知見から令和4年度に作成する就労系障害福祉サービス事業所のためのテレワークによる就労の支援マニュアル案を作成した。
結論
 従来障害者の職業自立を目指す職業リハビリテーションサービスの提供では,「通勤で働く」ことを前提とした職業訓練が行われてきており,「テレワーク・リモートワークで働く」ことを想定した職業訓練はこれまで一部の事業所を除き行ってきていない。しかし,新型コロナ禍による社会と労働環境の変化に伴うDXの進展に伴い,障害者がテレワークで働く機会は飛躍的に拡大したことが確認された。これからの職業訓練では「通勤だけで働く」ことを前提とするのではなく「通勤でも,テレワークでも働ける」ことを想定した訓練プログラムや職業訓練の機会を担保することが就労系障害福祉サービス事業所には求められていることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,940,000円
(2)補助金確定額
6,940,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,177,641円
人件費・謝金 221,568円
旅費 530,910円
その他 4,180,000円
間接経費 840,000円
合計 6,950,119円

備考

備考
総額6,950,119の内自己資金にて10,119円支出あり,補助金所要額は6,940,000。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-