文献情報
文献番号
202118047A
報告書区分
総括
研究課題名
睡眠薬・抗不安薬の処方実態調査ならびに共同意思決定による適正使用・出口戦略のための研修プログラムの開発と効果検証研究
課題番号
21GC1016
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
高江洲 義和(琉球大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 清水 栄司(千葉大学 大学院医学研究院)
- 家 研也(聖マリアンナ医科大学 総合診療内科)
- 渡邊 衡一郎(杏林大学 医学部精神神経科学教室)
- 坪井 貴嗣(杏林大学 医学部精神神経科学教室)
- 青木 裕見(聖路加国際大学 大学大学院看護学研究科 精神看護学)
- 稲田 健(北里大学 医学部 精神科学)
- 三島 和夫(国立大学法人秋田大学 大学院医学系研究科医学専攻 病態制御医学系 精神科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ベンゾジアゼピン受容体作動薬の睡眠薬・抗不安薬は精神科に限らず、広く一般診療科で処方されている。一方で、同薬剤の多剤併用・長期処方による依存形成認知機能低下、転倒リスクの増大などが指摘されており、医療者、当事者共に大きな懸念点であることが認識されている。しかしながら、実臨床において多剤併用・長期処方に陥ると、身体依存により減薬は容易ではなく、長期処方から脱却できないケースも少なくない。そのため、睡眠薬・抗不安薬の適正使用ならびに出口戦略の確立とその普及・実装化は喫緊の課題となっている。
本研究事業においては、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期処方抑止を目的とした診療報酬改定の効果に関するレセプトデータベース研究、睡眠薬・抗不安薬の出口戦略の実践のために、全国の医療者・当事者双方から睡眠薬・抗不安薬の減薬・継続の是非や、減薬・継続を判断する基準や具体的な方法について調査研究を行った。並行して日本睡眠学会、日本不安症学会、日本プライマリ・ケア連合学会の専門医を対象に睡眠薬・抗不安薬の減薬に向けたエキスパートコンセンサスを作成中である。また、精神科医のみならずプライマリ・ケア医でも実施可能な実践的なwebプログラムを開発中であり、webプログラムを実施し、その効果の検証を行う予定である。これらの成果を元に、睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略の普及・実装化に資することを本研究の目的とした。
本研究事業においては、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期処方抑止を目的とした診療報酬改定の効果に関するレセプトデータベース研究、睡眠薬・抗不安薬の出口戦略の実践のために、全国の医療者・当事者双方から睡眠薬・抗不安薬の減薬・継続の是非や、減薬・継続を判断する基準や具体的な方法について調査研究を行った。並行して日本睡眠学会、日本不安症学会、日本プライマリ・ケア連合学会の専門医を対象に睡眠薬・抗不安薬の減薬に向けたエキスパートコンセンサスを作成中である。また、精神科医のみならずプライマリ・ケア医でも実施可能な実践的なwebプログラムを開発中であり、webプログラムを実施し、その効果の検証を行う予定である。これらの成果を元に、睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略の普及・実装化に資することを本研究の目的とした。
研究方法
日本医療データセンターより抽出条件を指定し、2005年4月~2021年3月に健康保険組合に加入していた加入者(勤労者及びその家族)の診療報酬情報を抽出した。診療報酬改定の効果研究の結果、睡眠薬の適正使用を目的とした計4回にわたる診療報酬改定の睡眠薬長期処方に対する効果を調査を行った。質問紙を用いた睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略に向けた意識調査では、公益社団法人日本精神神経科診療所協会に所属する医師、全日本病院協会、日本プライマリ・ケア連合学会の会員、日本精神薬学会、精神科臨床薬学研究会、日本病院薬剤師会、日本調剤株式会社、日本保険薬局協会、有限会社サワカミ薬局の各団体の薬剤師、特定非営利活動法人地域精神保健福祉機構・コンボのメーリングリストの登録者に対しメールを活用してアンケートフォームのURLを配信し、回答を求めた。
結果と考察
診療報酬改定の効果研究の結果、睡眠薬・抗不安薬の長期・高用量処方の実態に大きな変化はなく、診療報酬改定の効果を示すことはできなかった。質問紙を用いた睡眠薬・抗不安薬の適正使用・出口戦略に向けた意識調査では、プライマリ・ケア医251名、精神科医543名、薬剤師3021名、当事者104名より回答を得た。
本調査結果から、現時点では睡眠薬・抗不安薬の長期・高用量処方に関しては大きな変化がなく、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の出口戦略は十分に普及・実装化がなされていないことが示唆された。プライマリ・ケアにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用に向けて非薬物的介入を含む出口戦略への教育・普及、そして補助資材の提供は有効な手段であることが示唆された。精神科医の調査結果からは、共同意思決定において、患者・医師・薬剤師が連携して遂行していくことが、睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止実現に重要であることが示唆され、心理社会療法や減薬方法に関する当事者向けの資材の作成が精神科医から求められており、このような補助資材の作成も重要な課題であることが示された。薬剤師に対する調査では、薬剤師は睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止に高い関心を持っているものの、その方法について十分周知されていないこと、方法についてのコンセンサスを形成し、周知するための資材を作成することが求められていた。また、当事者の対する調査結果から、多くの当事者が症状改善後早期に減薬を開始することを望んでいるにも関わらず、減薬に関する適切な情報を十分には持ち合わせていないことが示唆された。ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬可能な症状や病態や、減薬の適切な時期、そして具体的な減薬法に関する情報を当事者にわかりやすい形で提供し、出口戦略に向けた共有意思決定のための方略を検討していく必要があると考えられた。
本調査結果から、現時点では睡眠薬・抗不安薬の長期・高用量処方に関しては大きな変化がなく、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の出口戦略は十分に普及・実装化がなされていないことが示唆された。プライマリ・ケアにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用に向けて非薬物的介入を含む出口戦略への教育・普及、そして補助資材の提供は有効な手段であることが示唆された。精神科医の調査結果からは、共同意思決定において、患者・医師・薬剤師が連携して遂行していくことが、睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止実現に重要であることが示唆され、心理社会療法や減薬方法に関する当事者向けの資材の作成が精神科医から求められており、このような補助資材の作成も重要な課題であることが示された。薬剤師に対する調査では、薬剤師は睡眠薬・抗不安薬の減薬・中止に高い関心を持っているものの、その方法について十分周知されていないこと、方法についてのコンセンサスを形成し、周知するための資材を作成することが求められていた。また、当事者の対する調査結果から、多くの当事者が症状改善後早期に減薬を開始することを望んでいるにも関わらず、減薬に関する適切な情報を十分には持ち合わせていないことが示唆された。ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬可能な症状や病態や、減薬の適切な時期、そして具体的な減薬法に関する情報を当事者にわかりやすい形で提供し、出口戦略に向けた共有意思決定のための方略を検討していく必要があると考えられた。
結論
本調査結果から、医療者・当事者ともにベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬・中止を望んでいるにも関わらず、減薬可能な症状や病態や、減薬の適切な時期、そして具体的な減薬法に関する適切な知識がないことや医療者間、医療者と当事者間での十分な話し合いができていないことにより出口戦略の実装化がなされていない現状が明らかとなった。今後、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の適正使用・出口戦略の実装化のために、医療者・当事者にわかりやすい形で情報提供し、出口戦略に向けた共有意思決定の明確な指針を示していくことが重要と考えた。
公開日・更新日
公開日
2023-01-17
更新日
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