精神科救急医療体制整備の均てん化に資する研究

文献情報

文献番号
202118041A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科救急医療体制整備の均てん化に資する研究
課題番号
21GC1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医療センター)
  • 橋本 聡(独立行政法人国立病院機構熊本医療センター 精神科救急医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築において、精神障害を有する方々等の地域生活を支えるための重要な基盤の一つとして求められる精神科救急医療体制の整備について、R2年度の精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループで課題となった下記3点(①精神科救急医療施設のうち常時対応型と病院群輪番型の機能分担が不明瞭②自治体ごとに体制が大きく異なる点や精神科救急医療圏域の概念と圏域ごとの体制整備の考え方が十分に定まっていない③身体合併症対応施設の整備が進んでいない)に対する解決策となる検討を行う。
研究方法
①常時対応型施設の機能が期待される全国の精神科救急入院料病棟を届出する医療機関(N=179)を対象に22問からなるアンケート調査を行い、その結果分析及び有識者協議により、精神科救急医療体制における各医療機関類型を都道府県が指定するための基準案を提案した。②例年調査および新たなアンケートを行い、都道府県毎の状況を示すマップを作成したうえで、専門学術団体(日本精神科救急学会)の協力と有識者協議により「精神科救急医療体制の均てん化を図るうえで、各自治体の精神科救急医療体制整備事業を評価する基準」やガイドラインを策定した。③Complexity Interventions Units(CIU)調査の質問紙票を基に、精神科身体合併症対応の病棟機能類型を用い、全国の精神科救急入院料認可施設(157施設)並びに有床精神総合病院(257施設)を対象に質問紙調査した。
結果と考察
①調査の回答率は54.7%で、調査結果を踏まえ、常時対応型施設の指定基準案を作成し、必須条件に24時間365日、受診前相談機能の併設、診療実績開示、満床時の対応確保、参考開示要件として身体合併症対応機能、退院に向けた取り組み、退院後支援の実施、時間外診療体制(指定医、専任看護師、PSW当直)、コメディカルの病棟配置状況、専門的な診療機能、社会貢献機能を採用した。②R2年度公開統計の集計・分析およびアンケート調査を実施し、都道府県単位の情報マップを作成した。そのうえで、専門学術団体(日本精神科救急学会)の協力および有識者間の意見交換により既存の「手引き」や「基準」を改訂して、「精神科救急医療体制の整備と運用のためのガイドライン2022」及び「達成度評価シート」を作成した。また、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所が主催する自治体担当者向けの研修会で講義を担当し、情報伝達・交換した。③精神科救急病院(以下、PEH)から60施設(回答率38.2%)、有床精神総合病院(以下、GHP)から113施設の回答を得た(回答率44.0%)。身体合併症患者の入院治療に特化した病床があるのはPEH6施設、GHP29施設で、CIUタイプ4を運営するPEHは1施設、GHPは62施設あった。CIUタイプ2に該当するPEHは9施設で好事例もあったが、CIUタイプ4と比較すると人的資源、夜間休日の検査・処置の提供体制などに弱さがあった。
①整備事業の実施要項に定義される精神科救急医療施設について、解釈や関連要因によって機能の多様性が生じているところ、結果的に整備事業における実施要綱上の定義を逸脱することなくより具体的で、各都道府県が関係者協議の中で医療施設の指定の適否を判断するために、必要かつ十分な内容を提供する指定基準案を設定できた。全体把握により機能水準を検討する作成手順、エキスパート・オピニオンの採用は妥当かつ必要であった。今後実用と同時並行的なブラッシュアップが必要と考えられる。②整備事業の中核的機能は感受性、責任性、医療の質といった要素に、基盤的機能は、包括性、客観性、透明性という要素に分節化できる。以上の観点に基づいて、指標を一覧表示するマップを作成し、ベンチマーク指標の活用によって客観評価を容易にする新たな評価シートを作成した。この情報ツールを自治体内で共有し、研修会等で他の自治体との意見交換を行うことにより、事業の持続的な均てん化が担保されると考えられる。③CIUタイプごとに求められる施設体制および診療体制(検査・処置体制、設備、身体科医師の配置、充分な精神科および身体科看護技術を有する看護師の配置、診療実績、身体合併症割合等)を提案した。今後の医療計画では、CIUタイプを活用した体制整備の考え方が有用と考えられ、病院機能分化と病病連携の促進が図られる可能性があるが、その際病床区分を超えた連携を行う場合には制度上の配慮等により診療の質を損ねないようまた患者利益に資するような対応が望まれる。
結論
精神科救急医療体制整備に係るワーキンググループにて課題とされた諸点に対し分担研究を設置して検討した。いずれも一定の解決的価値を示す成果が得られ、今後の医療政策に資すると考えられるが今後も継続的な見直しが必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118041C

収支報告書

文献番号
202118041Z