障害分野の研修及び実地教育(OJT)の効果の検証及び効果的な実施のための要因解明のための研究

文献情報

文献番号
202118037A
報告書区分
総括
研究課題名
障害分野の研修及び実地教育(OJT)の効果の検証及び効果的な実施のための要因解明のための研究
課題番号
21GC1006
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 温(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 相馬 大祐(福井県立大学 看護福祉学部社会福祉学科)
  • 鈴木 敏彦(和泉短期大学 児童福祉学科)
  • 大村 美保(筑波大学人間系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は相談支援専門員の法定研修(初任研修、現任研修、主任研修)における研修内容と実地教育の効果の検証と効果的な実施の要因の解明及びその知見をもとに障害福祉分野における実践者に対する実地教育への一般化を目的とする。次の4つの研究目的を設定した。①研修内容、カリキュラムからみた研修効果視点の検討、②法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因の解明、③実地教育の研修評価法の開発、④効果的な法定研修及び実地教育の実施マニュアル等の開発。2021年度の研究では、このうち、①研修内容、カリキュラムからみた研修効果視点の検討、②法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因の解明を明らかにすることを目的とした。
研究方法
研修内容、カリキュラムからみた研修効果視点の検討では、対象者は、相談支援専門員に対して基幹相談支援センター等において実地研修を行っている長野県、埼玉県、福井県を取り上げ、実際に実地研修に関わっている相談支援専門員を対象にした。その結果、実地教育指導者養成研修の受講者(30名)を選定し、2020年度に開発した実地教育指導者の養成研修のカリキュラム案及び教材を使用して、実際にモデル研修を実施し、その効果等を検証した。
法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因の解明では、実地研修指導者養成研修の受講者に対してグループインタビューなどを実施し、モデル研修に対して知識・技能の習得、効果的な実施環境についての意見を聴取し整理することで、モデル研修の内容に関する妥当性とモデル研修の実施条件、法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因に関して検討した。受講者へのインタビューに加えて、法定研修における実地教育を行っている都道府県(47都道府県)・政令市(2政令市)の研修担当者に対して質問紙調査を行い、実地教育を行う上での現状と課題を把握し、法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因に関して検討した。
結果と考察
研修内容、カリキュラムからみた研修効果視点の検討では、実地教育従事者養成モデル研修の受講者への質問紙調査では、実地教育の内容について把握した。最も多いのが、地域の相談員による電話やメール等の相談への対応であり、ついで、地域の相談員が行う会議や面談等への同行、スーパービジョンの実施が多い傾向にあった。次に、実地教育従事者のコンピテンシーについて、回答時の自身の評価を5段階で把握した。また、謙虚なリーダーシップ尺度と心理的安全性に関する尺度を活用して、自身及び自身の地域の状況についても回答時の自身の評価を7段階で把握した。その結果、コンピテンシーの自己評価の平均値は「地域の相談員に対して、敬意を持った姿勢で接することができる」が最も高く、謙虚なリーダーシップ尺度の平均値は「自分よりも他人の方が多くの知識やスキルを持っているとき、そのことを認める」が最も高く、心理的安全性に関する尺度の平均値は「このチームでは、私の努力をわざと無駄にしようと振り舞うメンバーはいない」が最も高かった。
法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因の解明では、実地教育従事者養成モデル研修の受講者を対象にしたヒアリングを実施した。その結果、受講生の事前の都道府県の育成ビジョンの理解、法定研修指導者としての経験、基幹相談支援センターにおける実地研修の推進体制の3点の重要性が示された。このヒアリング調査に加えて、法定研修及び実地教育の現状と課題に関して都道府県・政令市調査を実施した。2021年度の法定研修の実施状況は初任者研修、現任研修に比べると主任相談支援専門員研修は68.6%に留まっていた。
結論
実地教育従事者養成研修(モデル研修)を実施し、受講者及びその地域の相談支援専門員の変化を把握することにより、実地教育従事者のコンピテンシー、実地教育従事者養成研修のカリキュラム案及び教材を深化させ、研修効果の視点を示した。法定研修及び実地教育の効果的な実施の要因の解明では、実地教育従事者養成研修の受講者へのヒアリングにより、効果的な実施の条件について考察した。
都道府県・政令市の担当者調査では、地域の相談支援体制、基幹相談支援センターの整備状況といった実地研修の基盤に課題があるという指摘がみられた。その上で、法定研修の実地教育を円滑に進めるためのモデル事例や参考になる指針(ガイドライン)の整備の要望も高く、今後、好事例をふまえた実地研修のガイドラインを検討する必要があることが示された。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118037Z