障害者の地域生活におけるICTを活用した障害福祉サービス等の業務の効率化と効果の検証

文献情報

文献番号
202118033A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の地域生活におけるICTを活用した障害福祉サービス等の業務の効率化と効果の検証
課題番号
21GC1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 明翫 光宜(中京大学心理学部)
  • 高柳 伸哉(愛知教育大学 心理講座)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
  • 浮貝 明典(特定非営利活動法人PDDサポートセンターグリーンフォーレスト 地域生活支援部)
  • 鈴木 勝昭(浜松医科大学医学部)
  • 与那城 郁子(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部 発達障害情報・支援センター)
  • 曽我部 哲也(中京大学 工学部)
  • 熊崎 博一(長崎大学 医歯薬学総合研究科医療科学専攻精神神経科学)
  • 渡辺 由美子(市川市教育委員会 生涯学習部社会教育課南行徳公民館)
  • 杉山 文乃(特定非営利活動法人アスペエルデの会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 発達障害者や精神障害者等の地域生活の支援は,共同生活援助や自立生活援助,就労定着支援等があり,その業務ではサービス利用者の状態把握と支援計画作成等が必須である。しかし,現状では障害福祉サービス現場の人手不足や業務過多,支援の専門性の問題による支援サービス上の課題がある。サービス利用者の状態把握が効率的に行われ,かつ支援サービスの質の向上を可能にするICT活用が求められている。
 2021年度は,障害福祉分野,特に,成人期の地域生活支援を中心にした分野において,ICT活用においてどういう課題や可能性があるのかを検討した上で,全国の障害者福祉施設におけるICTを用いた業務や支援について把握するため大規模調査を行い,ICTの活用の実践および期待,課題・ニーズについて実態把握を行った。また,当事者団体へのヒアリングにより支援者および当事者の生活支援におけるICT活用の好事例やICT活用のニーズの実態調査も行った。これらの実態調査から支援者の業務負担や支援サービス向上につながるためのICT活用(活用好事例と課題)について整理を行うことを研究目的とした。
研究方法
 障害者福祉サービス事業者のICT活用の実態の調査計画と分析結果の解釈については、専門家らによる意見交換会を2回開催した(2021年7月22日;2022年2月8日)。
 調査研究のうち①のICT活用のアンケートでは,意見交換会およびメール会議にて調査項目を確定したのち,全国の障害者福祉施設(グループホーム10130 施設)、就労移行支援センター2080 施設、就労定着支援センター988 施設、就業・生活支援センター334 施設、発達障害者支援センター94 施設)の合計13383 施設あることがわかり、リストを作成し、郵送にて調査協力を依頼した。最終的な回答数は総数1883例となり、全体回収率は14.07%であった。②のヒアリング調査では、研究協力者または分担研究者の紹介ならびにICT活用に関するアンケート調査への回答から,ヒアリング調査協力が可能と答えた事業所に協力を依頼した。その結果、グループホーム13施設、自立生活援助7施設から調査協力が得られ、インタビューガイドに沿って施設概要・インターネット設備・事務業務・支援業務・ICT活用と業務効率・ICT活用の展望について尋ねた。
結果と考察
 ①ICT活用のアンケート調査の分析の結果、障害者福祉サービスのうちグループホームにおいてICT活用に施設間で格差があることが明らかになった。またICT活用は業務効率向上に寄与し、大きな可能性を有するが、ICT設備状況だけでなく、ICTを使いこなせることが重要であることがうかがえた。
 ②ICT活用の好事例におけるヒアリング調査では、グループホームと自立生活援助施設において,ICTによる事務効率の向上についてはいずれも顕著な改善効果がみられた。ICTを十分に活用するためにはシステムを導入するだけでなく,実際に使用する職員が習熟することなどが必要であることがわかった。支援業務に関するICT活用では,グループホームにおいては利用者の余暇支援や利用者同士のオンライン交流など,様々な活用の仕方と肯定的な反応が多く見られた一方で,自立生活援助施設では利用者の症状や特性などによってICT機器・ツールの使用に留意が必要であることが示唆された。またICT推進に対して自治体との連携や行政のシステムとの関連での課題が浮かび上がった。それは事業所がICT化を進めても行政認証のペーパーレス化が進んでおらず,各種届や申請では紙媒体の提出を求められることや,制度変更の際に1月に通知を受けるものの,4月までに書類フォーマットや体制を変更することが困難であること,自治体間でもICT導入の状況が異なり,担当地区によって対応が異なり苦慮していることなどが報告された。ICT活用が本当の意味で業務負担軽減につながるためには、行政・自治体のICT化が推進することが重要であることが確認された。
結論
 本研究の結果,障害者福祉サービスのうちグループホームにおいてICT活用に格差があることが明らかになった。またICT活用は業務効率向上に寄与し,大きな可能性を有するが,ICT設備状況だけでなく,ICTを使いこなせることが重要であることがうかがえた。
 ICT活用が本当の意味で業務負担軽減になるためには,行政・自治体のICT化が推進することが重要であることが改めて確認された。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
2024-03-26

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
6,995,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,091,353円
人件費・謝金 464,440円
旅費 71,870円
その他 3,867,805円
間接経費 1,500,000円
合計 6,995,468円

備考

備考
精算所要額が1,000未満切り捨てであることから、468円を自己資金として計上したため。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-