現状の障害認定基準の課題の整理ならびに次期全国在宅障害児・者等実態調査の検討のための調査研究

文献情報

文献番号
202118029A
報告書区分
総括
研究課題名
現状の障害認定基準の課題の整理ならびに次期全国在宅障害児・者等実態調査の検討のための調査研究
課題番号
20GC2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩谷 力(長野保健医療大学)
  • 江藤 文夫(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 伊藤 利之(横浜市リハビリテーション事業団)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 森尾 友宏(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今後の身体障害者認定基準の見直しのあり方を明らかにすることを目的とした。また、見直しの根拠となる障害福祉データの利活用を推進し、障害福祉制度および障害福祉データに関する国内外の動向把握も併せて行った。
研究方法
(1)身体障害認定基準に関する研究
身体障害認定基準の見直しについて、これまで行われた改正の経緯を整理した。またH29~R元年度に実施した原発性免疫不全症候群(PID)患者の生活実態調査結果について、社会参加の程度をWHODAS2.0 (The World Health Organization Disability Assessment Schedule)の第4領域「人との交わり」、第5領域「生活」、第6領域「参加」から選んだ8項目について分析した。
(2)障害福祉制度・障害統計に関する研究
次期全国在宅障害児・者等実態(生活のしづらさなどに関する)調査に関して、昨年度実施したプレ調査のうち、災害時避難、余暇と運動、障害の原因疾患の詳細分析を行った。また次期全国調査票の項目案を作成した。
結果と考察
(1)身体障害者認定基準に関する研究
心臓機能障害・肢体不自由では、医学・医療技術の進歩により、日常生活活動の制限の程度が改善する可能性があることを踏まえ、ペースメーカ植え込みから一定期間後に再認定を行うこととなった。また、人工骨頭又は人工関節については、置換術後の経過が安定した時点の機能障害の程度により判定することとなった。
聴覚障害では、詐聴や機能性難聴が疑われる場合、他覚的聴力検査を実施するとともに、聴覚障害に係る指定医の専門性の向上を図ることとなった。
肝臓機能障害では、日常生活の制限が長期間続いている実態にあわせて認定基準を緩和し、対象を拡大した。
じん臓機能障害では、既存の指標に加え、臨床的に有用な検査を指標として追加した。
視覚障害では、両眼の視力の和ではなく、良い方の眼の視力で認定すること、新しい計測機器による認定基準を新たに設けることとなった。
また、PID患者155名のうち障害等級に相当すると医師が判断したのは37名23.8%(重症群)であった。重症群と軽症群の間でWHODAS2.0による社会参加に関する制限に有意差が最も多かったのは未成年診断成人群であった。
(2)障害福祉制度・障害統計に関する研究
次期生活のしづらさなどに関する調査項目に、災害時避難を入れた。また、余暇・スポーツ活動については、吟味が必要なことを指摘し、原因疾患については、次期調査から外すことを提案した。さらに、同調査に導入予定の国際障害者統計のワシントン・グループの指標を高齢者調査に試験的に用いた。
結論
(1)身体障害者認定基準に関する研究
医学的側面と社会的側面の双方を考慮し、その時代の要請にかなう身体障害認定基準を設定していく努力を続けていくことが肝要と考える。PID患者については、成人期に達する前から、成人期に制限が多いことが示された項目への対処及び支援策の検討を開始することは今後の課題である。
(2)障害福祉制度・障害統計に関する研究
次期調査における災害に関する設問案を、個別避難計画を構成する要素の準備が整っているかどうかを聞くように再構成して提案した。余暇・スポーツ活動については、障害者手帳所持者では、屋外で行う余暇活動、運動・スポーツ活動の実施に制約が大きいことが明らかになった。ただし、スポーツ庁による障害者を対象としたスポーツの参加促進のための施策策定と連動した調査も定期的に行われていることから、次期調査での余暇・スポーツ活動に関する設問の採用については今後の課題とし、存在する調査結果をどのように活用するかについて十分に検討することを提言する。また、障害の原因を尋ねる設問については、以下を提案する。①原因疾患を調査するのか、健康状態を調査するのか、施策に生かすためには分析の目的を明確にすることが必要であるため、時間をかけて検討する。②原因疾患を調査する場合には、知的障害など除外する障害種別を明記し、障害種別ごとに選択肢の設定に工夫が求められる。H18調査とH23調査の比較からは、以下を提案する。③医療機関の受診頻度に関する設問は、H18調査のように1年間の受診日数とする。さらに、「障害に関する受診」と「それ以外の受診」を分けて聞くことで、平成18年以前との比較が可能になり、また、受診の意味も明確になると考える。④3障害別だけでなく、身体障害内の障害種別および障害等級別の集計を加える。国際連合の国際障害統計ワシントン・グループの指標(WG-SS)は、介護保険サービスを利用していない65才以上の高齢者(健康老人)の約4割を「障害がある」と判定することを明らかにした。また、WG-SSによる健康老人の障害発生率の判定には性差があり、若年層ほど性差がある項目が多かった。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118029Z