WHO統合国際診断面接第5版(CIDI 5.0)日本語版の開発と信頼性・妥当性の検証および活用のための体制整備に資する研究

文献情報

文献番号
202118028A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO統合国際診断面接第5版(CIDI 5.0)日本語版の開発と信頼性・妥当性の検証および活用のための体制整備に資する研究
課題番号
20GC1023
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 智博(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野)
  • 倉田 明子(広島大学病院 精神科)
  • 小笠原 一能(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 木村 充(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 臨床研究部)
  • 高橋 美保(東京大学 教育学研究科臨床心理学コース)
  • 吉岡 京子(東京大学大学院 医学系研究科健康科学・看護学専攻地域看護学分野)
  • 大西 弘高(東京大学 医学系研究科 医学教育国際研究センター医学教育国際協力学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 WHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview, CIDI)は、WHOが開発、公表している現時点では唯一の、うつ病、不安障害などの比較的頻度の高い精神疾患の診断をつけるための情報を包括的に収集できる精神保健疫学調査用の構造化面接である。精神障害の国際的診断基準がDSM-IVからDSM-5に、ICD-10からICD-11に変更されたことに伴い、CIDIは第5版(CIDI 5.0)に改訂された。CIDI 5.0を日本でも使用できるように整備することは、わが国の精神障害の疫学研究の基盤整備として、精神障害に関するさまざまな臨床研究で共通して診断、症状評価を行う上で、またDSM-5やICD-11による精神障害の診断を国内に広く普及する上で、きわめて有用と考えられる。
 本研究は、CIDI 5.0の日本語版を開発し、その信頼性と妥当性をDSMチェックリストやICD診断との比較、および少数の精神疾患群と地域住民群との比較により検討することを目的とする。
研究方法
1.トレーニングパッケージの完成、ウエブシステムの改良
面接員トレーニングパッケージを完成させ、それを活用した研修会を面接員対象に実施した。また、2020年度中に開発したCIDI 5.0の面接システムのベータ版(PC上で各設問が表示され回答を入力するとインターネット上のサーバーに回答が保存できるもので、対面の面接にも用いられるもの)の改良修正を行った。
2.患者群における信頼性、妥当性の検討
精神疾患群に関しては、精神病性障害群、うつ病、双極性障害、不安症群、強迫性障害、心的外傷およびストレス因関連障害群、食行動障害および摂食障害群、アルコール使用障害について目標症例数を各疾患20人ずつとして、研究を実施した。
3.地域住民におけるフィージビリティ研究
性別、年齢を層別化した地域住民100人をリクルートし、CIDI 5.0および精神科医・臨床心理士等によるDSMチェックリスト・ICDチェックリストを用いた面接を実施した。
4.精神保健に関する様々な専門家との連携に関する検討
上記1で述べた研修会にプライマリケア医・保健師・公認心理師等にも参加いただき、研修時間等に関してフィードバックを受けた。
結果と考察
結果
1.ウエブシステムに関しては複数の精神保健の専門家や翻訳者によるシステムの動作チェックを行った。また、ボランティアによる模擬面接を行い、質問の意図が正確に理解されるかを調査した。
2.統合失調症、うつ病、パニック障害、強迫性障害、アルコール使用障害、摂食障害の計11人をリクルートした。
双極性障害とPTSDに関しては既存の共同研究機関では研究参加者の確保が困難と考えられたため、2施設に研究参加者の確保を依頼し、共同研究機関に追加することに関して主機関(東京大学)の倫理審査で承認を得た。
3.計100人の地域住民を対象にCIDI 5.0およびDSMチェックリストを用いた面接を実施し、調査を完了した。
4.保健師との連携に関しては、地域における保健師の保健活動のみならず、保健師のアセスメント技術の標準化やケアの質の向上にも資する可能性があると考えられた。一方で、回答のプロセスにおいて住民が過去のネガティブな体験をフラッシュバックした場合の対応方法について学ぶ必要性が示唆された。
心理師との連携に関しては、精神科医療を必要とする他領域での活用可能性や、医療領域のコメディカルとして協働する心理職の教育、さらには研究での活用可能性があると考えられた。一方、面接者・被面接者双方の負担の大きさについても指摘がなされた。
プライマリケア医との連携に関しては、プライマリケア医自身がCIDIを直接利用することは想定しにくいものの、心理師や看護師の補助、あるいは自記式の質問紙等に落とし込まれた場合には利用の可能性が生まれると思われると考えらえた。

考察
トレーニングパッケージの完成、ウエブシステムの改良、地域住民を対象とした研究、様々な専門家との連携に関する検討に関しては、当初計画通りに研究が進捗している。
患者群を対象とした研究に関しては、摂食障害と強迫性障害に関しては来年末までのリクルート完了が確実に見込める一方で、他の疾患に関しては研究参加者を確保する新たな対策を講じる必要があると考えられ、来年度中にリクルートが完了するよう対策を講じている。
結論
 CIDI5.0日本語版のトレーニングパッケージの完成、ウエブシステムの改良、地域住民を対象とした研究、様々な専門家との連携に関する検討を予定通りに実施した。患者群を対象とした研究に関しては、いくつかの疾患でリクルートが予定より遅れており、来年度中に予定通りリクルートが完了するよう対策を講じている。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202118028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,325,437円
人件費・謝金 35,700円
旅費 41,420円
その他 2,449,404円
間接経費 1,153,000円
合計 5,004,961円

備考

備考
自己資金:4,961円

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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