ペアレントトレーニングの効果測定のための日本語版児童愛着面接/親子社会サポート評価面接/MRI信号評価の実用化と実施者養成研修カリキュラムの開発-オンライン提供を含めて

文献情報

文献番号
202118025A
報告書区分
総括
研究課題名
ペアレントトレーニングの効果測定のための日本語版児童愛着面接/親子社会サポート評価面接/MRI信号評価の実用化と実施者養成研修カリキュラムの開発-オンライン提供を含めて
課題番号
20GC1020
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
石井 礼花(東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 向井 隆代(聖心女子大学 現代教養学部)
  • 田中 恭子(国立成育医療研究センター こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、発達障害や慢性疾患を持つ児の親のペアレントトレーニングの効果を評価する為、愛着の安定性を測定する Child attachment interview(CAI)の日本語版、親子への社会サポートの量と質を評価する面接法、磁気共鳴画像(MRI)による客観的指標の開発実用化を行う。また、評価を行う人材育成ぺアレントトレーニング実施者養成研修の確立を目的とする。
研究方法
Child Attachment Interview (CAI) は、イギリスのアンナ・フロイト・センター(AFC)で開発された半構造化面接法であり、45分程度のインタビューにより、8歳から15歳の児童の養育者への愛着を査定するツールとして妥当性が検証され、国際的に用いられている。本研究は、日本人児童を対象とするCAIの実用化を目指し、研修プログラムと教材の開発を行う。
結果と考察
愛着と社会サポートに関連したMRI信号については、
愛着形成と情動表出との関連性は、近年の先行研究より示唆されているものの、愛着と情動の双方をつなぐ神経基盤はいまだ明らかにされていない。そこで本研究は、定型発達児と ADHD 児を対象とし、愛着形成と情動表出に関連する神経基盤の解明を目的とした。愛着の安定性と情動が児の脳部位の体積が媒介することを明らかにした。また児への社会サポートも同部位を介して情動に関連することがわかった。
ペアレントトレーニング実施者養成研修の確立については、
2021年12月14日、2022年1月18日の2回、37 名に対し研修をオンラインで実施、 改善点について聴取した。研修内容を「理解できた」という 回答が 90%以上であったにも関わらず、64%が「実施できない と思う」という結果であった。できないと思う理由として、 診療報酬の問題、スタッフ不足、より具体的な詳細を扱う研 修、スーパーバイズの必要性などがあげられていた。
CAIの研修プログラムと教材の開発については、2020年度は、CAI面接実施要領を日本語に翻訳し、日本語版を作成した。次にAFCで実施されている3日間の研修内容を参考に、日本での実施者養成プログラム案を作成した。臨床心理士3名に、定型発達児2例の面接実施を含むパイロット研修とフィードバックを体験してもらった。その結果、事前課題、2例のCAI実施と個別フィードバック、および3日間の全体研修プログラムにより、定型発達児に対するCAI面接実施者を養成する目的はほぼ達せられることを確認した。並行して、研修教材の一部として使用する定型発達児の面接動画(8歳女児1名、8歳男児1名、11歳男児1名、12歳女児1名)の作成も開始した。2021年度は、2020年度に実施された面接録画を詳細に分析し、日本人児童の反応例や日本語で実施する際の注意事項を含め、面接者養成研修プログラムを改訂した。愛着査定の経験はない臨床心理士3名は、CAIの実施とフィードバックを含む計3回の研修の受講により、CAI面接をおおむね適切に実施することが可能であった。
慢性疾患の子供を持つ親へのペアレントトレーニング開発については、アンケート調査の結果より慢性疾患をもつ子どもと親は、療養に伴いトラウマ症状が遷延し親子昨日に影響を与えている可能性があることがわかり、支援にはトラウマインフォームドの視点を踏まえたオンラインペアトレ:OSPを開発し、実施者養成研修を行った。
結論
本課題の研究成果により、発達障害の患者とその親へのサポートを効果的に行なっていく方法として、発達障害を持つ児へ社会サポートについての実態把握ができ、また、医療が提供できる社会サポートとしてのペアレントトレーニングの効果を測定できた。実施者用テキストと実施者養成プログラムを確立し、提供できた。さらに、COVID-19流行による影響が心配される中、オンラインで、発達障害児を持つ親、および、慢性疾患を持つ親へのペアレントトレーニング、および実施者養成研修を行うというニーズにも応えられる成果が得られた。また、愛着や、社会サポートに関連する脳部位の同定を行うことができ、今後客観的指標としての応用を目指していく。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118025B
報告書区分
総合
研究課題名
ペアレントトレーニングの効果測定のための日本語版児童愛着面接/親子社会サポート評価面接/MRI信号評価の実用化と実施者養成研修カリキュラムの開発-オンライン提供を含めて
課題番号
20GC1020
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
石井 礼花(東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 向井 隆代(聖心女子大学 現代教養学部)
  • 田中 恭子(国立成育医療研究センター こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的1)バイアスの少ないペアレントトレーニング(PT)の評価法開発(CAI、社会サポート、MRI 信号)と その評価者養成:ランダム化比較試験の評価指標として開発研究しているCAI、社会サポート評価、MRI 信号について施行を続け解析し有用性検討と実用化。
目的2)オンラインでの提供も含めたペアレントトレーニング(発達障害)と実施者養成研修のプログラムの確立。


研究方法
分担研究課題1「研究全体デザイン、社会サポート評価の開発、脳画像評価開発、ペアレントトレーニング実施者養成研修の確立」では、ペアレントトレーニング(PT)の評価法開発とその評価者養成、オンラインでの提供も含めたPT開発と実施者養成を行う為、以下の研究1から3を行った。
研究1.PTの評価法開発とその評価者養成
研究2:評価法の妥当性検討と実施者養成パイロット研修のためのPT
研究3:PT実施者養成プログラムの開発
分担研究課題2では「ペアレントトレーニングの効果測定方法(半構造化面接(CAI))の実施者養成のための研修プログラムと教材の開発」を行なった。CAI面接要領日本語版の確定と実施者養成研修プログラムの作成を目標として、3日間のパイロット研修プログラムを用意し、3名の心理士に研修を受講してもらい、各自に2例ずつ定型発達児に対するCAIの実施を求めた。研修プログラムは、CAIプロトコルの和訳に面接実施例等の補足資料を加え、実施した面接に対する個別フィードバックも含めた。
分担研究課題3「慢性疾患児を持つ母への PT シングルアーム試験と実施者養成プログラムの作成 」では、15名の慢性疾患を持つ児と親に対し、 慢性疾患に特化した PT をオンラインの提供も含めて整備し、実施した。支援を希望した群に対して介 入を行い観察的に追跡し、前後の評価を発達障害への PT と同様の評価法を用い、妥当性検討した。
結果と考察
分担研究課題1では、MRI撮像をADHD母子、定型発達母子に対して行なった。線形回帰分析にて、母親への愛着からネガティブ情動、父親への愛着からネガティブ情動の有意な負の関係性が示された。また、父親への愛着から児の脳部位体積、母親への愛着から児の脳部位体積に有意な負の関係性が認められた。さらに、児の脳部位体積からネガティブ情動の有意な正の関係性が示された。
児の愛着の質が、脳部位の体積を媒介して情動に関連するという新たな知見を見出したのは国際的にみても新規性が高く
、また、ペアレントトレーニングの効果を客観的に評価するための指標としても有用である可能性があり、社会的意義が大きい。
分担研究課題2では、CAI面接実施要領を 日本の文化・言語的特徴を踏まえ日本語 に翻訳し、日本語版を作成した。次に AFC で実施されている3日間の研修内容を参 考に、日本での実施者養成プログラム案 を作成した。臨床心理士 3 名に、定型発 達児 2 例の面接実施を含むパイロット研修とフィードバックを体験してもらった。3日間の全体研修と2例の実施例に対すフィードバックにより8歳から定型発達児を対象とする面接者養成は可能であった。
分担研究課題 3では、慢性疾患児の保護者に向けたペアレントトレーニング(全5セッション)を2021年6月より開始し、2022年2月までに4クール、参加希望者18名中、全5セッション参加者は15名(父親4名、母親11名)、途中辞退者は3名(母親3名)であった。前後で愛着や親の育児ストレス、子供の問題行動の変化を測定し、予備解析を行なった。
結論
Child Attachment Interview(CAI)日本語版の確立と面接実施者養成カリキュラムの開発という当初の目的は、ほぼ達成できた。
MRI検査については、愛着に関連する脳部位の特定にまでいたった。発達障害のペアレントトレーニングのRCTは、60組を目指しているため、あと18組を組み入れたい。今年度のCOVID−19の感染状況を鑑みて、MRI撮像を含んで42組の組み入れを完了しているのは、解析が可能なところまで達成したと言えるため、達成度は高いと考えられる。
また、ペアレントトレーニングの実施者養成研修については、テキストの作成を完了し、プログラムを作成、2回の研修施行が完了し、さらには、継続して国立精神神経医療研究センターの研修に組み込むことができたため、成果は大きいと言える。
 慢性疾患の児のためのペアレントトレーニングも、プログラムを確定し、15名に行うことができた。
今後実装に向けて、RCTの完了し、効果を分析し論文化国際学術雑誌に出版し、その上で、ペアレントレーニングを医療として提供できるように、保険診療化を目指して学会とも協調しながら真の実装化に向けて進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
MRI撮像をADHD母子、定型発達母子に対して行なった。線形回帰分析にて、母親への愛着からネガティブ情動、父親への愛着からネガティブ情動の有意な負の関係性が示された。また、父親への愛着から児の脳部位体積、母親への愛着から児の脳部位体積に有意な負の関係性が認められた。さらに、児の脳部位体積からネガティブ情動の有意な正の関係性が示された。
児の愛着の質が、脳部位の体積を媒介して情動に関連するという新たな知見を見出したのは国際的にみても新規性が高い。
臨床的観点からの成果
オンラインでペアレントトレーニングの実施者y法制が行うことができるようになり、COVID-19感染拡大下、および、遠方の地域からの研修参加が可能となったため、今後、医療機関へのペアレントトレーニングの実装化の促進に寄与すると考えられる。
ガイドライン等の開発
注意欠如・多動症ADHDの診断・治療ガイドライン 第5版に「ADHDへのペアレントトレーニング」として、ペアレントトレーニングについての説明と治療としての必要性を明記した。
その他行政的観点からの成果
今後、児童青年精神医学会等における診療報酬要求策定の基礎資料として活用予定。
その他のインパクト
2022年より、国立精神神経医療研究センターにて年1回、ペアレントトレーニングの実施者養成研修を行う予定となり、7月4日に行なった。2023年3月のADHD学会にて、サテライトトレーニングとして、ペアレントトレーニングの実施者養成研修を行う予定。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドラインを作成した
その他成果(普及・啓発活動)
8件
講演 3件、実施者養成研修6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
A. Suzuki, R. Yamaguchi, A. Ishii-Takahashi te al
Effectiveness of mock scanners and preparation programs for successful magnetic resonance imaging: a systematic review and metaanalysis
Pediaric Radiology  (2022)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202118025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,324,000円
(2)補助金確定額
3,324,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 277,038円
人件費・謝金 2,033,676円
旅費 0円
その他 246,286円
間接経費 767,000円
合計 3,324,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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