文献情報
文献番号
202118024A
報告書区分
総括
研究課題名
児童・思春期精神疾患の診療実態把握と連携推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GC1019
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 隆(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 小枝 達也(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部)
- 小倉 加恵子(国立成育医療研究センター こころの診療部)
- 奥野 正景(医療法人サヂカム会 三国丘病院 精神科)
- 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,854,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
全国の児童思春期精神医療を実施している基幹病院での①カルテ調査、②全国の児童思春期精神医療を実施している担当医へのアンケート調査、③児童思春期精神医療関連の学会や団体での研修実態の調査を通して、児童青年期の精神疾患の診療実態と各学会等での研修の実態を明らかにすることを目的とした。
研究方法
① カルテ調査は、子どもの心の診療ネットワーク事業参加自治体(21自治体)の拠点施設(29施設)と日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)加盟施設(36施設)、全国児童青年精神科医療施設協議会会員施設(35施設)に協力を依頼して、初診の2015年4月から2020年3月までの5年間を半年ごとの計10回において、受診の有無や他機関連携の実施状況について後ろ向きコホート調査を行った。
② アンケート調査は、児童思春期精神疾患や発達障害の診療実態に関する施設調査で、初診患者の対象疾患、初診時年齢と性別、診療継続の状況、福祉機関や保健機関、教育機関との連携の状況を調べた。日本児童青年精神医学会、全国児童青年精神科医療施設協議会、日本児童青年精神科・診療所連絡協議会、日本小児神経学会、全国肢体不自由児施設運営協議会、日本小児心身医学会、日本小児科医会、一般社団法人子どもの心専門医機構に協力を依頼し、その会員が所属する医療機関に対してなるべく重複が発生しないように配慮した上で、計3294の調査票を配布した。
③ 研修実態調査は、日本精神神経学会、日本児童青年精神医学会、日本思春期青年精神医学会、日本精神科病院協会、全国児童青年精神科医療施設協議会、日本児童青年精神科・診療所連絡協議会、日本小児精神神経学会、日本小児科学会、日本小児神経学会、日本小児心身医学会、日本小児科医会、日本公認心理士協会、日本臨床心理士会に対して、子どものこころの診療と捉えている範疇、会員数、資格制度の有無、研修会の内容などを尋ねるアンケート調査と学術集会や研修会の抄録データを収集した。
② アンケート調査は、児童思春期精神疾患や発達障害の診療実態に関する施設調査で、初診患者の対象疾患、初診時年齢と性別、診療継続の状況、福祉機関や保健機関、教育機関との連携の状況を調べた。日本児童青年精神医学会、全国児童青年精神科医療施設協議会、日本児童青年精神科・診療所連絡協議会、日本小児神経学会、全国肢体不自由児施設運営協議会、日本小児心身医学会、日本小児科医会、一般社団法人子どもの心専門医機構に協力を依頼し、その会員が所属する医療機関に対してなるべく重複が発生しないように配慮した上で、計3294の調査票を配布した。
③ 研修実態調査は、日本精神神経学会、日本児童青年精神医学会、日本思春期青年精神医学会、日本精神科病院協会、全国児童青年精神科医療施設協議会、日本児童青年精神科・診療所連絡協議会、日本小児精神神経学会、日本小児科学会、日本小児神経学会、日本小児心身医学会、日本小児科医会、日本公認心理士協会、日本臨床心理士会に対して、子どものこころの診療と捉えている範疇、会員数、資格制度の有無、研修会の内容などを尋ねるアンケート調査と学術集会や研修会の抄録データを収集した。
結果と考察
① カルテ調査:1003症例を半年ごとの後ろ向きコホート調査として、診療情報を収集した。初診時の年齢は11歳(±4.4歳)で、10-14歳がもっとも多い年齢層であった。男女比は6:4であった。診断名では、F8心理的発達の障害がもっとも多く、次いでF4神経症性、ストレス関連障害および身体表現性障害や、F9小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害が多かった。これら3つの疾患群で患者総数の83%に達していた。平均の続期間は1.4年で、対象者の47%が2年以上治療継続し、27%の対象者が5年以上治療継続していた。
② アンケート調査:881件の回答があり、737件(86%)が児童思春期精神疾患の診療を行っていた。それらのうちR468不登校、F7知的障害、F8心理的発達の障害、F9小児期および青年期に通常発症する行動及び情緒の障害は約9割の施設で診療されていた。精神科系標榜の診療科では小児科系と比較し、いずれの疾患群も診療している割合が高かった。全疾患群で未就学児は小児科系標榜科でより高頻度に診療されており、高校生以上20歳未満で精神科系標榜科でより高頻度に診療されるという傾向が見られた。2年以上診療を継続するケースが多かったのは、F2、 F7、F8、F9であった。
③ 研修実態の調査:精神科系の学会等では、子どものこころの診療に専門的と考えられる団体では、その対象を、児童期におこりうる精神疾患というだけでなく、予防をも含むより広い病態像、状態像とし、また、養育者や地域、こどもの成長や幸せなどの視点をも含み、子どもに関わる多職種が関与し、多機関との連携が必要であることを示した。小児科系では、全ての専門団体において構成員数の増加が認められ、資格基準が明確になっていた。子どもの心の診療の範疇として2005年度は一部の児童思春期精神疾患を対象としていたが、2021年度にはこころの発達から児童思春期精神疾患までの幅広い対象となっていた。さらに、本人の診療だけでなく、家族支援、母子保健・児童福祉領域や保育・教育など他領域との連携もこころの診療の一部としていた。心理学系では、資格認定制度が整っていて、数千人から2万人を超える有資格者を輩出している団体がある。更新条件も整っていると思われる。研修内容は、医療という視点で幅広く捉えているが、障害に関するテーマが多かった。
② アンケート調査:881件の回答があり、737件(86%)が児童思春期精神疾患の診療を行っていた。それらのうちR468不登校、F7知的障害、F8心理的発達の障害、F9小児期および青年期に通常発症する行動及び情緒の障害は約9割の施設で診療されていた。精神科系標榜の診療科では小児科系と比較し、いずれの疾患群も診療している割合が高かった。全疾患群で未就学児は小児科系標榜科でより高頻度に診療されており、高校生以上20歳未満で精神科系標榜科でより高頻度に診療されるという傾向が見られた。2年以上診療を継続するケースが多かったのは、F2、 F7、F8、F9であった。
③ 研修実態の調査:精神科系の学会等では、子どものこころの診療に専門的と考えられる団体では、その対象を、児童期におこりうる精神疾患というだけでなく、予防をも含むより広い病態像、状態像とし、また、養育者や地域、こどもの成長や幸せなどの視点をも含み、子どもに関わる多職種が関与し、多機関との連携が必要であることを示した。小児科系では、全ての専門団体において構成員数の増加が認められ、資格基準が明確になっていた。子どもの心の診療の範疇として2005年度は一部の児童思春期精神疾患を対象としていたが、2021年度にはこころの発達から児童思春期精神疾患までの幅広い対象となっていた。さらに、本人の診療だけでなく、家族支援、母子保健・児童福祉領域や保育・教育など他領域との連携もこころの診療の一部としていた。心理学系では、資格認定制度が整っていて、数千人から2万人を超える有資格者を輩出している団体がある。更新条件も整っていると思われる。研修内容は、医療という視点で幅広く捉えているが、障害に関するテーマが多かった。
結論
児童青年期精神疾患の診療の実態調査と研修に関する実態調査を実施した。全国規模の診療実態の把握は本邦では初めてである。研修に関しても2005年度の調査を基に10数年間の変化に着目して比較して検討することができた。
公開日・更新日
公開日
2023-01-17
更新日
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