文献情報
文献番号
200835043A
報告書区分
総括
研究課題名
医療者と患者を結ぶ情報伝達手段としての媒介物(人工物)の機能とその安全性に関する研究
課題番号
H19-医療・一般-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 すが(東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科)
研究分担者(所属機関)
- 貝瀬 友子(東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科 )
- 新野 由子(医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2005年に医療安全対策検討会議でまとめられた「今後の医療安全対策」の3本柱の一つが、患者、国民との情報共有と患者、国民の主体的参加の促進である。患者参画には患者と医療者の目線を合わせ、情報の自由な交換が不可欠である。平成19年度の調査において、対象の特性や治療経過にあわせた情報提供が、患者の参画意識を高め、自己管理や自己決定力を強化して行動変容を促す契機となっていることが確認された。2年目は、調査対象を拡大し、患者―医療者間の情報共有を促進する情報媒介物の機能と要素ついて検討した。
研究方法
都内医療機関を対象に、患者への情報提供の現状と、「がん患者」に提供された情報媒介物と利用場面、効果について質問紙調査と聞取り調査を実施した。
結果と考察
質問紙調査は46施設から外来60、入院76の事例が提供された。聞取り調査は3施設で実施した。それらの情報は、外来・入院の時系列に整理して情報媒介物の機能を検討した。その結果、全経過を通じて情報提供者の大部分は医師であり、看護師の関与は医師に比べて少なかった。情報の機能は、外来・入院の全過程において、患者・家族の「不安解消」と「知識伝達」が最多である。「信頼関係」は、治療計画と治療の詳細説明時に「不安解消」「知識伝達」とともに増加する。回復期・リハビリテーション期は医療者の係わりが全ての項目で低下し、退院準備期に再び増加する。「患者の行動変容」はこの時期に最多であった。「病気の受容」「医療への参加意識の向上」は全過程で低値であった。各医療機関は情報共有の重要性を認識しているが、1.患者に対し、必ずしも効果的な情報提供はなされていない、2.患者-医療者間の問題は双方の確認不足によって発生し、対応に多くの資源が割かれる、3.医療専門職が専門性を発揮してチームで情報提供するシステムが有効と考えられている、4.がんのような治療が長期に継続し、生活全体に影響を与える疾患では、退院後の生活、経済面まで含めた長期的・包括的な視点で療養生活を支援する情報提供システムが必要である、5.患者・家族が医療の主体者として機能するためには、自分の人生を決定する生死観の醸成や自己責任に対する教育が必要である。
結論
患者・家族が当事者として参加し、早い段階から、治療や療養生活についての見通しを、医療者と共に「合わせる」機会を設定することが、患者が主体となり医療への参画が実現できる鍵となろう。
公開日・更新日
公開日
2009-06-25
更新日
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