文献情報
文献番号
202118015A
報告書区分
総括
研究課題名
特別児童扶養手当(精神の障害)の認定事務の適正化に向けた調査研究
課題番号
20GC1010
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
- 篠山 大明(信州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、特別児童扶養手当(知的障害・精神の障害用)の認定事務について課題の分析を行い、認定の際に客観性を確保するための改善策について研究することである。
平成29年度~平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業)にて行われた「特別児童扶養手当等(精神の障害)の課題分析と充実を図るための調査研究」(研究代表者:齊藤万比古、以下、「先行研究」)の中で、特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)の改定素案が提案された。本研究では、初年度(令和2年度)にこの改定素案をさらに発展させ、障害基礎年金との整合性のある認定診断書改定案および作成要領案を作成した。また、2年目である今年度にこの改定案を用いたサンプル調査を行うための準備として、日本児童青年精神医学会の学会員(医師)を対象としてサンプル調査協力の意志の有無に関するアンケート調査を行った。
2年目となる今年度は、初年度に作成した認定診断書改定案とその作成要領案を用いたサンプル調査に取り組み、ガイドライン作成のための基礎資料を得ることを目的とした。
平成29年度~平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業)にて行われた「特別児童扶養手当等(精神の障害)の課題分析と充実を図るための調査研究」(研究代表者:齊藤万比古、以下、「先行研究」)の中で、特別児童扶養手当認定診断書(知的障害・精神の障害用)の改定素案が提案された。本研究では、初年度(令和2年度)にこの改定素案をさらに発展させ、障害基礎年金との整合性のある認定診断書改定案および作成要領案を作成した。また、2年目である今年度にこの改定案を用いたサンプル調査を行うための準備として、日本児童青年精神医学会の学会員(医師)を対象としてサンプル調査協力の意志の有無に関するアンケート調査を行った。
2年目となる今年度は、初年度に作成した認定診断書改定案とその作成要領案を用いたサンプル調査に取り組み、ガイドライン作成のための基礎資料を得ることを目的とした。
研究方法
1.模擬症例のビネット作成
先行研究にて作成した13の模擬症例について研究代表者、研究分担者、研究協力者がオンライン会議およびメール審議で検討し、認定診断書改定案によるサンプル調査に用いる症例として適切であるかどうかを検討し、適切と思われる症例については、さらに必要に応じて内容の加筆修正を行った。
2.認定診断書改定案によるサンプル調査
初年度に実施した事前調査で本調査への協力を意志表示した医師は、634名であったが、今年度初頭にさらに2名から協力の意志表示の連絡が入った。これを合わせた計636名に、模擬症例のうちの1症例をランダムに割り付けた。割り当てた模擬症例および特別児童扶養手当認定診断書改定案に基づいて作成したGoogleフォームのホームページアドレス(URL)を電子メールにて送付し、その模擬症例についてGoogleフォーム上の回答を依頼した。
先行研究にて作成した13の模擬症例について研究代表者、研究分担者、研究協力者がオンライン会議およびメール審議で検討し、認定診断書改定案によるサンプル調査に用いる症例として適切であるかどうかを検討し、適切と思われる症例については、さらに必要に応じて内容の加筆修正を行った。
2.認定診断書改定案によるサンプル調査
初年度に実施した事前調査で本調査への協力を意志表示した医師は、634名であったが、今年度初頭にさらに2名から協力の意志表示の連絡が入った。これを合わせた計636名に、模擬症例のうちの1症例をランダムに割り付けた。割り当てた模擬症例および特別児童扶養手当認定診断書改定案に基づいて作成したGoogleフォームのホームページアドレス(URL)を電子メールにて送付し、その模擬症例についてGoogleフォーム上の回答を依頼した。
結果と考察
1.模擬症例のビネット作成
先行研究で作成された模擬症例は、ICD-10(WHO)の「精神障害の分類の知的障害(ICD-10におけるF7)」、「心理的発達の障害(F8)」、「行動及び情緒の障害(F9)」のそれぞれにおいて軽度から最重度までの重症度を想定した12ジャンルに対して、F8中度のみ2症例、それ以外は1症例ずつ作成されていた。今回の研究では、F8中度については2症例のうち1症例のみを採用した。また、検討会議のなかで、F9の最重度を重度と区別して想定することが難しいため、F9最重度の模擬症例は不要ではないかとの意見が出され、検討の結果、F9最重度を想定した模擬症例はなしとした。残る11症例について文言の微修正等を行い、模擬症例を完成させた。
2.認定診断書改定案によるサンプル調査
636名の協力意志表示者のうち連絡先不明等を除いた626名に調査依頼を行った。190名の回答が得られ、的外れ回答8名(例:模擬症例に基づいていない記載が行われている)を除外した182名の回答を解析対象とした。有効回答者182名の属性は、小児科医かつ精神科医20名、小児科医30名、精神科医132名であった。
182名から得られた有効回答を集計・統計解析し、認定診断書改定案に記載された「障害のため要する援助の程度」の妥当性と信頼性を評価した。さらに、認定診断書改定案に記載された「日常生活能力の判定」および「障害のため要する援助の程度」と、各模擬症例で想定されていた重症度との関係を明らかにした。その結果、「障害のため要する援助の程度」は、模擬症例で想定されていた重症度と関連し、また評価者間信頼性が保たれていることが確認できた。さらに、「日常生活能力の判定」と「障害のため要する援助の程度」の判定が重いほど、各模擬症例で想定されていた重症度は高い傾向が見られた。
本研究結果より、認定診断書改訂案は妥当性、信頼性とも一定の基準を満たしていると考えられた。
先行研究で作成された模擬症例は、ICD-10(WHO)の「精神障害の分類の知的障害(ICD-10におけるF7)」、「心理的発達の障害(F8)」、「行動及び情緒の障害(F9)」のそれぞれにおいて軽度から最重度までの重症度を想定した12ジャンルに対して、F8中度のみ2症例、それ以外は1症例ずつ作成されていた。今回の研究では、F8中度については2症例のうち1症例のみを採用した。また、検討会議のなかで、F9の最重度を重度と区別して想定することが難しいため、F9最重度の模擬症例は不要ではないかとの意見が出され、検討の結果、F9最重度を想定した模擬症例はなしとした。残る11症例について文言の微修正等を行い、模擬症例を完成させた。
2.認定診断書改定案によるサンプル調査
636名の協力意志表示者のうち連絡先不明等を除いた626名に調査依頼を行った。190名の回答が得られ、的外れ回答8名(例:模擬症例に基づいていない記載が行われている)を除外した182名の回答を解析対象とした。有効回答者182名の属性は、小児科医かつ精神科医20名、小児科医30名、精神科医132名であった。
182名から得られた有効回答を集計・統計解析し、認定診断書改定案に記載された「障害のため要する援助の程度」の妥当性と信頼性を評価した。さらに、認定診断書改定案に記載された「日常生活能力の判定」および「障害のため要する援助の程度」と、各模擬症例で想定されていた重症度との関係を明らかにした。その結果、「障害のため要する援助の程度」は、模擬症例で想定されていた重症度と関連し、また評価者間信頼性が保たれていることが確認できた。さらに、「日常生活能力の判定」と「障害のため要する援助の程度」の判定が重いほど、各模擬症例で想定されていた重症度は高い傾向が見られた。
本研究結果より、認定診断書改訂案は妥当性、信頼性とも一定の基準を満たしていると考えられた。
結論
今年度は、初年度(令和2年度)に作成した特別児童扶養手当(知的障害・精神の障害用)認定診断書改定案の妥当性、信頼性の評価を行い、認定診断書改定案を用いた判定によって、診断書作成医による差異が少ない判定が可能であることが示された。また、認定診断書改定案の「日常生活能力の判定」と「障害のため要する援助の程度」を組み合わせた判定基準を設けることが、重症度を適切に判定する上で効果的であることが示唆された。
今後、認定業務の地域格差が是正され、適切に業務が行われるよう、このデータをもとにした特別児童扶養手当認定のガイドラインを作成することが求められる。
今後、認定業務の地域格差が是正され、適切に業務が行われるよう、このデータをもとにした特別児童扶養手当認定のガイドラインを作成することが求められる。
公開日・更新日
公開日
2023-01-17
更新日
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