障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究

文献情報

文献番号
202118010A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究
課題番号
20GC1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 淳志(東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
  • 本名 靖(東洋大学大学院ライフデザイン研究科)
  • 祐川 暢生(社会福祉法人侑愛会 侑愛荘)
  • 庄司 妃佐(和洋女子大学 家政学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の高齢化に向けた健康/住まいなど様々な視点から支援者が行うべき準備を見据えた上で、本人が自ら不調や不安を訴えることの困難な知的・発達障害者の支援現場で、関係者が変化に気づき、連携して取り組むための支援モデルを開発することを目的とした。
研究方法
2年目である令和2年度は、以下の2つの調査・研究を行った。
(1)知的・発達障害者の高齢化に伴う変化の実態について把握することを目的として、高齢期の知的・発達障害者を支援している事業所199カ所を対象としたアンケート調査を行った。
(2)東京都が導入・実施している認知症者へのケアプログラム「DEMBASE」を参考にして令和2(2020)年に取りまとめた「高齢知的・発達障害者向け行動心理症状ケアプログラム」の効果や課題を把握することを目的として、障害福祉サービス事業所8カ所を対象とした支援現場での試行と意見の収集のための調査を行った。
結果と考察
(1)調査の結果、40~50歳代には、
・健康状態では、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病に関する疾病が多く見られた。また、認知症も含めた認知機能の低下が早期から見られ、他傷行為や暴言、大声や独語などの行為が見られる事例があった。
・心身機能・身体構造では、歩行の不安定が多く見られ、転倒リスクが高まることがわかった。また、嚥下機能の低下にともない食事摂取が困難となる事例があった。
・活動では、健康状態や心身機能の低下にともない、移動や食事、排泄などのADLの低下が多く見られた。
・参加では、日中活動や仕事、行事などの参加が難しくなる事例が多かった
・環境因子では、入所施設やグループホームなどへの居住場所の変化や、紙おむつ、車いす、介護ベッドなど福祉器具等の使用等による生活環境の変化が多く見られた。
これらの高齢化に伴う変化を踏まえた、若い頃からの健康管理や運動や食事の習慣、支援記録の継続的な引き継ぎ・管理なども、今後の研究課題として重要になると考えられた。
また、ICFを活用したライフマップにより、健康状態や心身機能の低下によって活動や参加に変化が生じる、また、環境因子の変化によって参加や心身機能に影響が生じる、といった状況が多く見られた。本人の全体を捉えた上でライフステージごとに起こりうる状況に対して適切な対応を行っていくために、今回の暫定的に作成したライフマップを、今後もデータを多くの収集し、改訂を重ねていくことが必要であると考えられた。
(2) 試行調査の結果、評価として、「見立てや仮説が立てやすくなり、背景要因を気づくきっかけとなる」、「課題の見える化、焦点化ができ、課題の抽出がスムーズになる」、「ニーズを構造的に捉えられ、支援の方向性、優先順位を示しやすくなる」、「会議の効率化が図れ、支援者間で共有しやすくなる」等の効果があった。また、実践事例では、ケアプログラムを活用することで、課題を明確にして、処方薬を見直し、継続して支援と評価を行うことで減薬につなげることができていた。
これらの結果より、知的・発達障害者支援において認知症ケアの分野で活用されているケアプログラムを活用することも有用であり、高齢期の支援について障害福祉分野で普及していくことにより、一般高齢者を対象とした介護保険分野とも共通のツールを使用することによる支援者間の交流や研究の進展などが期待されるようになると考えられた。課題としては、「実施期間が適切かどうかの検討が必要」、「判断に迷う項目の精査が必要」、「事前説明(学習)が必要」等が今回の試行調査で把握された。
結論
本研究により、①知的・発達障害者の高齢化に伴う長期的な変化の実態について把握し、若年期から終末期までの心身の状況や支援について概観できるライフマップ、②集中的に対応しなければならない行動への対応に効果を上げている認知症者へのケアプログラムを参考にした知的・発達障害者向け行動心理症状ケアプログラムを作成した。また、知的・発達障害者の高齢化に伴う支援についてのイメージをより認識しやすくするための普及用の視聴覚教材を作成した。
本研究で開発した成果物は、主に高齢期の知的・発達障害者を支援するためのツールとして活用することで、支援者が現状に比べ、高齢期に生じる様々な変化を認識した上で目の前の利用者の変化に気づき関係者間で一貫した支援を行うことが可能となる。また、加齢にともない起こりうる様々な事象を想定した予防的観点での支援を行うことを強く意識するようになることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118010B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者の高齢化による状態像の変化に係るアセスメントと支援方法に関するマニュアルの作成のための研究
課題番号
20GC1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 淳志(東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
  • 本名 靖(東洋大学大学院ライフデザイン研究科)
  • 祐川 暢生(社会福祉法人侑愛会 侑愛荘)
  • 庄司 妃佐(和洋女子大学 家政学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の高齢化に向けた健康/住まいなど様々な視点から支援者が行うべき準備を見据えた上で、本人が自ら不調や不安を訴えることの困難な知的・発達障害者の支援現場で、関係者が変化に気づき、連携して取り組むための支援モデルを開発することを目的とした。
研究方法
1年目となる令和2(2020)年度は、以下の3つの調査・研究を行った。
(1)障害者の高齢化の問題に関する先行研究の中で、特に高齢知的障害者の「認知症」、「機能低下」、「ダウン症」、「ターミナル」に係わる支援で、どのような問題および課題が示されているかを把握することを目的として、文献調査を行った。
(2)知的障害者の高齢化に伴う変化の実態について支援現場の職員が把握しやすくすることを目的として、高齢期の知的・発達障害者を支援する事業所の支援者を対象としたアンケート調査を行った。
(3)東京都が導入・実施している認知症者へのケアプログラム「DEMBASE」を参考にして、知的障害者の心理行動症状に対する適切なアセスメントや支援を行うためのプログラムを開発した。
 2年目となる令和3(2021)年度は、以下の2つの調査・研究を行った。
(4)知的・発達障害者の高齢化に伴う変化の実態について把握することを目的として、高齢期の知的・発達障害者を支援している事業所199カ所を対象としたアンケート調査を行った。
(5)東京都が導入・実施している認知症者へのケアプログラム「DEMBASE」を参考にして令和2(2020)年に取りまとめた「高齢知的・発達障害者向け行動心理症状ケアプログラム」の効果や課題を把握することを目的として、障害福祉サービス事業所8カ所を対象とした支援現場での試行と意見の収集のための調査を行った。
(6)高齢期の知的・発達障害者支援の状況や必要な支援、環境など、支援者や家族などにわかりやすく説明するための視聴覚教材、「高齢期の知的・発達障害者の生活と変化~入所施設・グループホーム編~(以下、視聴覚教材)」を作成した。
結果と考察
(1)先行研究より、高齢知的・発達障害者は身体機能の早期の低下や罹患する疾病の多さが指摘されており、その背景要因として、食事習慣や運動習慣などの関係があるが、本人の訴えに周囲が気づかず対応が手遅れになりやすい状況があるため、本人の変化に周囲の者が早期に気づくことが重要であることが確認された。
(2)調査で得た知的・発達障害者22名分のデータより、40~50歳代には、認知機能や身体機能の低下が早期から見られ、60歳代には、住まいや人間関係など環境面の変化が見られた。
(3)研究成果として「高齢知的・発達障害者向け行動心理症状ケアプログラム」を作成した。支援現場での導入に向けて、実際の現場での試行を行う必要があると考えられた。
(4)調査で得た103名分のデータより、40~50歳代には、健康状態では、生活習慣病に関する疾病、認知機能の低下、心身機能・身体構造では歩行の不安定、活動では、移動や食事、排泄などのADLの低下、参加では、日中活動や仕事、行事などの参加の制限、環境因子では、居住場所の変化や福祉器具等の使用等による生活環境の変化が多く見られた。本人の全体を捉えた上でライフステージごとに起こりうる状況に対して適切な対応を行っていくために、今回の暫定的に作成したライフマップを、今後もデータを多くの収集し、改訂を重ねていくことが必要であると考えられた。
(5)知的・発達障害者支援において認知症ケアの分野で活用されているケアプログラムを活用することが有用であることが把握できた。高齢期の支援について障害福祉分野で普及していくことにより、一般高齢者を対象とした介護保険分野とも共通のツールを使用することによる支援者間の交流や研究の進展などが期待されるようになると考えられた。
結論
本研究の成果として、以下を作成した。
①「高齢知的・発達障害者の変化と気づきのためのライフマップ」
②「高齢知的・発達障害者向け行動心理症状ケアプログラム」
③「高齢期の知的・発達障害者の生活と変化~入所施設・グループホーム編~」
上記で開発した成果物は、主に高齢期の知的・発達障害者を支援するためのツールとして活用することで、支援者が現状に比べ、高齢期に生じる様々な変化を認識した上で目の前の利用者の変化に気づき関係者間で一貫した支援を行うことが可能となる。 
また、加齢にともない起こりうる様々な事象を想定した予防的観点での支援を行うことを強く意識するようになることが期待できる。
今後高齢化が進んでいくことが想定される知的・発達障害者支援の現場において、高齢期の支援の概要や高齢期に備えて早期に行う準備、具体的な実践の手立てなどを検討するための研修等での活用が期待できるため、パッケージの普及について継続して取り組んでいくことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118010C

収支報告書

文献番号
202118010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
3,159,270円
差引額 [(1)-(2)]
1,840,730円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 110,000円
人件費・謝金 364,000円
旅費 444,120円
その他 1,241,150円
間接経費 1,000,000円
合計 3,159,270円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-