障害児相談支援における基礎的知識の可視化のための研究

文献情報

文献番号
202118009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児相談支援における基礎的知識の可視化のための研究
課題番号
20GC1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
  • 岩本 彰太郎(三重大学医学部附属病院周産期母子センター)
  • 鈴木 敏彦(和泉短期大学 児童福祉学科)
  • 大塚 晃(日本発達障ネットワーク)
  • 菊池 紀彦(三重大学 教育学部)
  • 宇野 洋太(大正大学 カウンセリング研究所)
  • 稲田 尚子(帝京大学文学部心理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 ・研究分担者 大塚晃 専門学校高崎福祉医療カレッジ(令和3年4月1日~令和3年5月31日) → 日本発達障害ネットワーク (令和3年6月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 障害児の相談支援事業が創設されて約10年が経過し、障害児を対象とした相談支援専門員や相談支援事業所が増加してきた。一方で、セルフプラン率がいまだ高く、地域による格差も大きい。また、成長や変化の著しい子どもの時期に関わる相談支援専門員が、多様な障害の相談支援に対する適切なスキルを有し、その役割を適切に果たせているのかどうか、現在の相談支援の現状と課題について、いまだ明らかではない。このような状況では、現在の障害児福祉に求められるICFの視点から環境因子の観点を重視し、合理的配慮やソーシャルインクルージョンの理念が適切に反映されているのか懸念が生じる。
 本研究の最終目標は、障害児の相談支援の現状と課題を把握した上で、日本全国で地域や障害種別、障害の軽重による格差なく、ICFの視点を重視し障害児に対して合理的配慮が適切に行え、障害児のソーシャルインクルージョンを実現するために、障害児の相談支援員が活用できるサポートブックの作成を行うことであった。1年目である令和2年度の研究は、障害児の相談支援専門員、保護者、自治体に対して面接調査を実施し、質的調査によりその実態を把握することを目的として実施した。最終年度である令和3年度の研究は、障害児の相談支援専門員および保護者を対象にWebアンケート調査を実施し、量的調査により現状と課題を把握すること、また、質的調査、量的調査の結果をもとに、障害児相談支援のサポートブックを作成することを目的として実施した。
研究方法
研究1:アンケート調査の実施
対象
1)相談支援専門員:福島県、新潟県、愛知県、東京都世田谷区、東京都中野区、神奈川県横浜市内の全障害児相談支援事業所および相談支援専門員協会会員に対して、郵送またはメールでWebアンケートへの回答を依頼した。調査期間は令和 3 年11 月 15 日から令和 3 年 12 月 31 日で、有効回答311名分を分析対象とした。
2)保護者:障害児相談支援を利用する保護者に対しては、研究代表者および研究分担者がホームページおよび知り合いを通じて郵送またはメールでWebアンケートへの回答を依頼した。調査期間は令和 3 年1月20 日から令和 4年3 月 10 日であり、有効回答156名分を分析対象とした。
研究2:障害児相談支援サポートブックの作成
相談支援専門員にとって理解が容易で、かつ質の向上に資する内容であり、障害児相談支援を実践する上で求められる役割と必要なスキルについて障害種別、ライフステージに応じた指針を盛り込み福祉・教育・医療など支援関係者が業種を超えて共有できる内容を目指して作成したサポートブックについて、テーマ別にオンラインでミニ検討会を実施した。参加者は、令和2年度の面接調査に参加した相談支援専門員等15名および研究代表者、研究分担者であった。設定した3つのテーマは、アセスメントシート作成、関係職種との連携、自己決定支援であった。
結果と考察
 質的調査からは、相談支援専門員が適切に機能していない事例の背景として、個人レベルでは、障害特性の理解やソーシャルワーク機能の不足があることが示された。また、都市部では、障害児支援事業所が乱立し、不適切な競合が起きている一方で、地方では、利用者のニーズに対応できる障害児支援事業所が不足し、適切な相談支援の実施が困難である実態が明らかとなった。さらに、経営面や運営面の課題により、丁寧な相談支援が実施できない状況も示された。セルフプランについてもその質や背景は多様であり、一概にセルフプランは質が低いと結論できず、セルフプラン率の比率を相談支援が円滑に行われている指標にはできないことも明らかとなった。相談支援専門員が個人レベルで研鑽するべきこと、制度や施策レベルで対応するべきことに分けて、それぞれへの提言につながる内容が整理された。A4サイズ約170ページの「障害児相談支援サポートブック」が完成した。
結論
 本研究により、障害児相談支援の現状と課題が質的調査および量的調査の両面から明らかとなり、それらのエビデンスに基づく障害児相談支援のサポートブックが完成した。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118009B
報告書区分
総合
研究課題名
障害児相談支援における基礎的知識の可視化のための研究
課題番号
20GC1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
  • 岩本 彰太郎(三重大学医学部附属病院周産期母子センター)
  • 鈴木 敏彦(和泉短期大学 児童福祉学科)
  • 大塚 晃(日本発達障ネットワーク)
  • 菊池 紀彦(三重大学 教育学部)
  • 宇野 洋太(大正大学カウンセリング研究所)
  • 稲田 尚子(帝京大学 文学部心理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 ・研究分担者 大塚晃 専門学校高崎福祉医療カレッジ(令和3年4月1日~令和3年5月31日) → 日本発達障害ネットワーク (令和3年6月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の最終目標は、障害児の相談支援の現状と課題を把握した上で、日本全国で地域や障害種別、障害の軽重による格差なく、ICFの視点を重視し障害児に対して合理的配慮が適切に行え、障害児のソーシャルインクルージョンを実現するために、障害児の相談支援員が活用できるサポートブックの作成を行うことであった。1年目である令和2年度の研究は、障害児の相談支援専門員、保護者、自治体に対して面接調査を実施し、質的調査によりその実態を把握することを目的として実施した。最終年度である令和3年度の研究は、障害児の相談支援専門員および保護者を対象にWebアンケート調査を実施し、量的調査により現状と課題を把握すること、また、質的調査、量的調査の結果をもとに、障害児相談支援のサポートブックを作成することを目的として実施した。
研究方法
(1)相談支援専門員、保護者、自治体に対する面接調査
相談支援専門員27名、保護者16名、8自治体が参加した。
「地域資源に関する情報」、「地域アセスメント」、「障害特性を含めた子どもに関するアセスメント」、「(アセスメント結果に基づく)障害児支援利用計画書作成」、「評価(モニタリング)」、「ライフステージに沿った移行支援」、「関係機関との連携」、「家族支援(含家族アセスメント)」、「セルフプラン」に関する9項目について、その現状と課題それぞれについて半構造化面接を実施した。
(2)相談支援専門員、保護者対象のアンケート調査
1)相談支援専門員:福島県、新潟県、愛知県、東京都世田谷区、東京都中野区、神奈川県横浜市内の全障害児相談支援事業所および相談支援専門員協会会員に対して、郵送またはメールでWebアンケートへの回答を依頼し311名分を分析対象とした。
2)保護者:障害児相談支援を利用する保護者に対しては、研究代表者および研究分担者がホームページおよび知り合いを通じて郵送またはメールでWebアンケートへの回答を依頼し156名分を分析対象とした。
(3)相談支援専門員対象のサポートブック作成および相談支援専門員対象のサポートブック検討会
相談支援専門員を中心に15名が参加した検討会の意見を踏まえ、研究代表者および研究分担者を中心に、サポートブックを作成した。
結果と考察
 面接調査の結果から、障害児相談支援の実態は地域により多様であり、本来の障害児相談支援のあり方とは大きく異なった運用がされている自治体の存在が明らかになった。また、障害児相談支援の質の高低の指標にセルフプラン率を用いることの限界も示唆された。現状の障害児相談支援では、家族支援やライフステージを考慮した支援への視点が乏しく、障害児通所支援等のサービス提供事業所が提供するサービス内容との適切な連携がなされることが難しい実態も明らかになった。サービス提供事業者と相談支援事業者の役割のあり方を見直す必要がある。
 障害児相談支援の現状と課題が質的調査および量的調査の両面から明らかとなり、それらのエビデンスに基づく障害児相談支援のサポートブックが完成した。
結論
 全体の面接調査で抽出された課題として、障害児相談支援の本来的な機能を果たしていない事例があること、障害特性を含めたアセスメントの視点の共通理解がないこと、アセスメントのフォーマットがないことがあげられ、障害特性を含め、個人の全体的な生活機能に関する簡便なアセスメントシートの開発が必要と考えられた。課題として、障害児相談支援事業の認知度、人的問題や人材育成、相談支援事業所の不採算性などがあげられた。 課題解決に向けて、日本全国で地域や障害種別、障害の軽重による格差なくICF の視点を重視し、障害児に対して合理的配慮が適切に行え、障害児のソーシャルインクルージョンを実現するために、これらの実態調査に基づき、相談支援専門員が活用できるサポートブック等の整備が喫緊の課題である。対策としては相談支援の役割や重要性を障害児に関与する医療者や保育者、教育者など関係者が認識し制度の活用を図ることと相談支援専門員と情報交換を密に行うように意識すること、相談支援専門員の専門性を高めること、相談支援専門員が十分に活動できるような報酬体制を整備することが挙げられる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
障害児を対象とする相談支援専門員と障害児相談支援事業所を利用している保護者に対して、それぞれ質的調査と量的調査を実施し、これまで明らかにされていなかった、障害児の相談支援の実態について多面的な知見を得ることができた。
臨床的観点からの成果
相談支援に必要とされる役割・スキルを明確化し、自己チェックのための評価ツール(活動指標)、共通のアセスメントシート、および地域資源一覧リストのフォーマットを作成した。スキルチェックができ、今後習得するべきスキルが明確化される。地域格差の解消および初任者の相談支援専門員のスキルアップへの貢献が期待される。これらの成果は、相談支援事業者を対象とした国や自治体の研修内容に反映することができる。
ガイドライン等の開発
本研究により、障害児相談支援の現状と課題が質的調査および量的調査の両面から明らかとなり、それらのエビデンスに基づく障害児相談支援のサポートブック(草稿)が完成した今後、さらに攻勢を行い広く公開していく。
その他行政的観点からの成果
障害児相談支援の最新の知見に基づくサポートブックを作成中である。Webアンケートに回答した相談支援専門員の約半数から、完成したサポートブックの送付に関する要望があることからも分かるように、高い関心が寄せられている。本研究の成果物として、このサポートブックがWeb上からダウンロードできるようになれば、自治体や障害児相談支援事業所が自由に活用でき、障害児の相談支援の質の向上につながり、行政的意義は大きい。
その他のインパクト
サポートブック内の末尾には、障害児に対する相談支援専門員の振り返りチェックシートがあり、現在の自分の立ち位置と今後の研鑽内容についてセルフアセスメントができるようになっており、相談支援の質の向上に寄与するものと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202118009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,158,691円
人件費・謝金 2,014,095円
旅費 22,054円
その他 1,959,160円
間接経費 1,846,000円
合計 8,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-