医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究-患者ハラスメントに焦点をあてて-

文献情報

文献番号
200835027A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全に係るコミュニケーションスキルに関する研究-患者ハラスメントに焦点をあてて-
課題番号
H19-医療・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(国立大学法人 三重大学医学部附属病院 安全管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 廣瀬 昌博(国立大学法人 島根大学医学部附属病院 病院医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者ハラスメント(以下PH)の実態を把握し、効果的な発生防止対策と発生時の対処方法を提言することを目的とする。PHの実態や対処方法についての定期的な発信は、患者と医療者の良好な関係構築に寄与し、医療現場における労働環境の改善つながりことから、医療安全の推進とともに医療提供者の離職防止、医療現場の崩壊に歯止めをかけることも目的とする。
研究方法
主任研究者の兼児はPH事例を全国の30施設から400事例以上を収集したが、まず、特定機能病院4施設の139事例について検討し、PHを暴力、セクシャルハラスメント(以降セクハラ)、暴言・不当な要求に分けて解析を行った。分担研究者の廣瀬は性格の異なる2病院、特定機能病院および臨床研修病院の全職員を対象にアンケート方式でPH調査を実施した。
結果と考察
収集されたPHの内訳は暴力と暴言・不当な要求がともに41%でセクハラが15%であった。暴力事例の85%以上は患者の精神状態に起因する偶発的で単発の暴力事例であるが、根本的な対応は困難であり、現状を広く発信し現場の処遇改善を訴えていく必要がある。患者の病的精神状態に起因しない暴力に対しては警察の支援を求める。セクハラは90%前後が確信犯であり、病院だから許されるという認識を一掃し、痴漢行為には毅然と対応することが求められる。暴言・不当な要求によるPHは50%の事例で医療側にも原因があることからその被害は深刻でありながら対応は困難である。被害者は他のPHとは異なり、厭世的気分、自信喪失に陥る事例が多く、また、当該部署全体が機能不全に陥ることも少なくない。現時点では有効な対策は困難であり、今後の課題である。
アンケート結果は特定機能病院では回答者の10.3%、臨床研修病院では12.9%の職員がPH被害を経験していた。その差は施設のある地域や提供する医療の特性などによると推測された。両施設とも若年の女性に被害経験が多く、患者や家族は経験の浅いことや患者という立場に乗じていると推測された。職種別では両施設とも看護師がもっとも多く、患者により近い職種や患者に直接触れる職種に被害経験が多いことが分かった。
結論
深刻なPH被害の現状が明らかになった。PHを暴力、セクハラ、暴言・不当な要求と分類し対策を講じることが効果的であると考えられるが、暴言・不当な要求によるPH対策は今後の検討課題である。

公開日・更新日

公開日
2009-06-25
更新日
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