精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202118002A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の推進に資する研究
課題番号
19GC1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 光爾(東洋大学 ライフデザイン学部生活支援学科生活支援学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 立森 久照(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神保健計画研究部)
  • 山口 創生(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部)
  • 田村 綾子(聖学院大学 心理福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,661,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では,計画相談支援を利用した精神障害者における①障害福祉サービスの利用状況ならびにアウトカム(精神科病院への入院日数等)状況の把握、②アウトカムの良好群/不良群間のサービス提供状況や地域環境要因の差を検討し、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の活用についてエビデンスに基づいた提言を行おうとするものである。
研究方法
1)相談支援事業者に対する2次調査:①対象者に対する計画相談支援(サービス等利用計画)における支援プロセスの描写と②『計画相談利用中の2年間の精神科病院への入院日数が9週間以上』等の入院アウトカムの予後不良群/予後良好群に関連する要因の検討を行うことを目的とした。令和2年度に実施された1次調査をもとに2021年10月〜2022年1月に調査を行い、①対象利用者票:150件、②相談支援専門員調査票:60件、③事業所調査票:43件を回収した。
2)地域環境データを利用した地域特性とアウトカムの関連の検討:本分担研究(分担研究者:立森久照)では別途公開されているReMHRADのデータを用いてアウトカムに対する地域環境の影響についての解析を行った。
3) 相談支援事業所の支援における医療機関連携と関連要因の検討:本分担研究(分担研究者山口創生)では、相談支援事業所の連携の実態を分析し、連携回数に影響する機関要因・職員要因を探索的に検証することを目的として、相談支援事業所のデータを分析した。
4) 非自発的入院の防止に向けた相談支援専門員と精神科医療スタッフの連携のあり方に関するグループインタビュー調査:本研究(分担研究者:田村綾子)では1)の調査結果をフィードバックしながら精神科医療機関との連携の内実の一端を把握し、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けて求められることについて考察した。
結果と考察
1)計画相談支援の契約後2年間における「9週間以上の精神科医療機関への入院」「非自発的入院」「非予定の入院」の発生を基準として、これを目的変数としたロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った。外来の連携体制が充実していると各種の入院アウトカムを抑制している可能性が示唆された。他方で、導入時の連携体制の充実は各種の入院を増やす可能性も示唆された。
2)対象者の特徴と医療連携状況と同時に地域資源量を加えても,入院の発生と有意な関連があった地域資源量の変数はほとんどなかったことから,入院の発生の予測に地域資源量が対象者の特徴と医療連携状況で説明される以上の独自の情報は多くはないと考えられた。
3)上記2次調査のデータを利用し、利用者に対して計画相談を実施している相談支援事業者およびスタッフについて、入院アウトカムと関連していた「医療機関との連携」に影響する要因を把握した。結果、各職能団体主催の研修や職場主催の研修が外来時の連携回数について正の関連を示したのに対して、相談支援従事者現任者研修が連携回数と負の関連を示した。入院に関するアウトカムに影響を及ぼしていた外来連携についての促進を図ることは重要な要素だと考えられるが、精神障害者ケアや他機関連携を促す研修内容の再検討と阻害となる内容の特定は今後の大きな課題として提示された。
本研究結果に関して、一定の経験のある相談支援専門員にフィードバックを行うとともに、半構造化グループインタビューを行い、本研究結果に関する解釈や、計画相談支援とくに精神科医療機関との連携の在り方について解釈を行うことした。結果、「入院=ネガティブな事象では必ずしもないが、入院を前提としないこと・本人の意思を尊重した入院を重視することが重要であること」「入院時から外来連携まで含めた医療機関のスタッフとの関係構築の重要性」「研修機会の提供と人材育成」が重要であることが語られた。
結論
計画相談支援における外来連携体制を臨床面・行政面ともに意識・強化する重要性を示唆するとともに、導入時の連携については「入院の適切な利用なのか」「バックベッドに依存した地域ケアなのか」2面性を意識する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202118002B
報告書区分
総合
研究課題名
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた障害福祉サービス等の推進に資する研究
課題番号
19GC1009
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 光爾(東洋大学 ライフデザイン学部生活支援学科生活支援学専攻)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者総合支援法(旧自立支援法)では計画相談支援の枠組みが導入され、精神障害者もそのサービス対象となり、ケアマネジメントおよび障害福祉サービス利用支援の枠組みが導入されているが、実際にいかなる効果があるのかは明らかになっていない。そこで本研究では計画相談支援により障害福祉サービスを利用した精神障害者が、①実際にいかなる障害福祉サービスを利用しその結果どのようなアウトカム(精神科病院への入院日数・社会機能等)の状況にあるか、②よいアウトカムを出している利用者と困難な事例の間には医療連携やサービス提供状況や地域環境要因にいかなる違いがあるかを検討し、障害福祉サービス等の活用についてエビデンスに基づいた提言を行おうとするものである。
研究方法
【令和元年度】
令和元年度については研究デザインを検討し①福祉サービス利用あり群/なし群において入院日数状況に差がある状況を統計的検出力0.8で把握できるサンプル数を各群100(合計200)とした。また②調査に必要なテストバッテリーを構築した。さらに③計画相談に関する文献レビューを行った。

【令和2年度】
令和2年度には障害者総合支援法の計画相談支援利用者(精神障害)に対する振り返りによる研究を行った。
1)相談支援事業者に対する1次調査
①対象者の基礎属性やサービス利用等に関する平均像の描写および、併せて②『計画相談利用中の2年間の精神科病院への入院日数が9週間以上』の予後不良群となる要因についての検討を行うため調査を実施した。

【令和3年度】
 令和2年度に行った計画相談支援の利用者の1次調査対象者について、支援のプロセスをより詳細に把握する2次調査を行った。
1)相談支援事業者に対する2次調査
1次調査のうち一定の基準でケアマネジメントを必要とする利用者(Intensive Case Management Screening Sheetで1点以上)を抽出し2021年10月〜2022年1月に調査を行い、対象利用者票:150件,事業所調査票:43件 を回収した。
結果と考察
【令和2年度】
対象者の平均像を描写においてサービス等利用計画の作成者は、契約前2年間と比較して契約後の精神科入院週数が有意に減少していることが明らかになった。また、対象者を4層に分けて分析した結果、基準の入院を抑制する説明変数として「社会参加系サービスの利用量」「外来受診時の同行」、促進する可能性がある説明変数として「サービス等利用計画作成導入時会議での医療機関スタッフの同席」などが影響を与えている可能性が示唆された。

【令和3年度】
1)対象者のアウトカムに対するロジスティック回帰分析の結果、アウトカム「2年間で9週間以上の入院」「非自発的入院の発生」「相談支援事業者側からみた非計画的入院」において、「外来の連携体制」の充実が発生を抑制する可能性が示唆された。他方で「導入時の連携体制」や「導入時の医療スタッフとのケア会議」などは入院・非自発的入院・計画された入院を増加させる傾向にあることが示唆された。

2)地域環境データを利用した地域特性とアウトカムの関連の検討
ReMHRADのデータを用いて地域環境の影響に関して解析を行った結果、投入した社会資源等の環境変数はアウトカムに影響していないことが示唆された。

3)相談支援事業所の支援における医療機関連携と関連要因
2次調査のデータを利用し、計画相談を実施していた相談支援事業者およびスタッフについて、入院アウトカムと関連していた「医療機関との連携」に影響する要因を把握した。結果、各職能団体主催の研修や職場主催の研修が外来時の連携回数について正の関連を示したのに対して、相談支援従事者現任者研修が連携回数と負の関連を示した

4)非自発的入院の防止に向けた相談支援専門員と精神科医療スタッフの連携のあり方に関するインタビュー調査
本研究結果に関して、一定の経験のある相談支援専門員にフィードバックを行い、本研究結果に関する解釈や、計画相談支援とくに精神科医療機関との連携の在り方についてフォーカスグループインタビューを行った。結果、「入院=ネガティブな事象では必ずしもないが、入院を前提としないこと・本人の意思を尊重した入院を重視することが重要であること」「入院時から外来連携まで含めた医療機関のスタッフとの関係構築の重要性」「研修機会の提供と人材育成」が重要であることが語られた。
結論
本研究では、計画相談支援のアウトカムを入院関連の指標に置いた場合には、①外来連携体制の充実が良好な予後に影響している可能性が示唆されており、臨床面・行政面ともに日頃の外来連携を意識・強化する重要性を示唆するとともに、②導入時連携については「入院の適切な利用なのか」「バックベッドに依存した地域ケアなのか」という連携がもたらす2面性を意識しながら支援を行う必要が示された。

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-01-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202118002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
精神障害者に対するサービス等利用計画作成後の2年間を振り返り調査することにより、予後(入院関連のアウトカム)に関連する要素を見出した。相談支援事業と医療の外来時連携が入院・非自発的入院を抑制することが示され、このことを推進することは患者の地域生活を改善することが予想される。
臨床的観点からの成果
相談支援事業と医療の外来時連携が入院アウトカムを抑制することが示されたこと、他方で相談支援導入時の連携が入院・非自発的入院を増加させることは、医療と福祉の連携強化が患者の生活のどのように影響するかの1つの方向性を示すと考えられ、今後、研修や行政への反映などを通じて普及すべき知見と考えられた。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等は開発していないが、本研究成果を論文等で公表予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究の医療・福祉の連携についての結果は精神障害福祉課および関係者間で共有された。これを元に2022年度よりの厚労科研『精神科医療機関における包括的支援マネジメントの普及に向けた精神保健医療福祉に関わるサービスの提供体制構築に資する研究』(22GC0301)での継続研究を行い、医療福祉の外来連携の強化促進の方策を引き続き探索する予定である。
その他のインパクト
本研究成果について日本精神障害者リハビリテーション学会での学会発表および日本相談支援専門員協会への報知などを行う予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
202118002Z