文献情報
文献番号
202117009A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度認知障害の人における進行予防と精神心理的支援のための手引き作成と介入研究
課題番号
21GB1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 孝(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター もの忘れセンター)
研究分担者(所属機関)
- 藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 清家 理(立命館大学 スポーツ健康科学部)
- 大塚 礼(国立長寿医療研究センター 老化疫学研究部)
- 山田 実(筑波大学 人間系)
- 木下 文恵(名古屋大学 医学部附属病院)
- 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
12,046,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
軽度認知障害(MCI)は、認知症のハイリスク群であり、認知症への進行を予防するため、ライフスタイルの改善や精神的支援が必要である。現在、認知症への進行を抑止する薬剤はなく、進行遅延のための十分な指導を受けず、置き去りにされているケースがみられる。そこで本研究班は、MCIの進行予防のために2つの研究を行う。①手引きの作成:MCIの進行予防・心理的支援について文献調査を行い、エビデンスに基づいた手引きを作成、②手引きを用いた介入研究:MCIの人に対する手引きに沿った指導を12ヶ月間行う介入研究により、手引きによる啓発と支援の実現可能性を検証し、認知機能や行動変容をアウトカムとした介入の効果を明らかにすることである。初年度は、MCI進行予防のための「手引きの作成」を中心に行った。
研究方法
初年度は、MCI進行予防のための「手引き」の作成を中心に行った。手引きのユーザビリティを向上させるため、京都精華大学デザイン学科の伊藤ガビン教授(コンテンツビジネス・編集)が研究協力者として研究班に参加し、デザインの観点からコンテンツの整理を行なった。具体的には、Patient Question (PQ)の設定、ヒアリング調査、Clear Communication Index (CCI)を用いた資料の評価を行った。PQは9領域、38個のリストを作成した。ヒアリング調査はMCI高齢者とその家族7名に半構造化面接を行い、内容分析を行った。
結果と考察
MCI進行予防のための「手引きの作成」にあたり、ヘルスリテラシーの考えや当事者参加型のアプローチを導入した。Qの作成にあたっては、診療ガイドラインによるClinical Question(CQ)の考えをベースとしながらも、患者の視点を取り入れるPQの考えを参考にした。また、PQとその解説の作成段階から、当事者の意見を取り入れつつ、多職種チームとコンテンツビジネスを専門とする専門家、デザイナー、編集者と学際的なチームを組んでの作成を進めた。
班員が作成したドラフトに対するCCIの評価では、「専門用語のより平易な用語への言い換え」や「数値の示し方の工夫」、「イラストなどの視覚情報の有効活用」「行動変容につながる具体的な情報」などの改善点が挙げられた。また、当事者へのヒアリング調査により、もの忘れに関してどのような情報が求められているか、予防活動への動機づけについて整理を行った。その結果、単に認知症に関する情報を体系的に伝えるだけではなく、認知症をどのように受け止めるのか、生活への影響はどのようなものか等、心理的な側面や生活面への影響に関する情報を加える必要性があると考える。また、運動教室起点のコミュニケーションが予防活動の促進につながることなど、ソーシャルネットワークに関する知見も得られ、冊子を通じて、当事者同士がつながる仕組みも必要だと考えられた。
以上の情報をデザインチームと班員で共有し、冊子が当事者同士、当事者と医療者がつながるコミュニケーションツールとしての機能を、介入試験でも検討・検証していきたい。
班員が作成したドラフトに対するCCIの評価では、「専門用語のより平易な用語への言い換え」や「数値の示し方の工夫」、「イラストなどの視覚情報の有効活用」「行動変容につながる具体的な情報」などの改善点が挙げられた。また、当事者へのヒアリング調査により、もの忘れに関してどのような情報が求められているか、予防活動への動機づけについて整理を行った。その結果、単に認知症に関する情報を体系的に伝えるだけではなく、認知症をどのように受け止めるのか、生活への影響はどのようなものか等、心理的な側面や生活面への影響に関する情報を加える必要性があると考える。また、運動教室起点のコミュニケーションが予防活動の促進につながることなど、ソーシャルネットワークに関する知見も得られ、冊子を通じて、当事者同士がつながる仕組みも必要だと考えられた。
以上の情報をデザインチームと班員で共有し、冊子が当事者同士、当事者と医療者がつながるコミュニケーションツールとしての機能を、介入試験でも検討・検証していきたい。
結論
MCI進行予防のための手引きについて、作成段階からデザインの専門家と当事者・家族が参加することにより、ユーザビリティに配慮した手引きの開発を進められたと考える。来年度、さらに手引きの作成を進め、有用性を検証するために前向き試験を実施する予定である。
公開日・更新日
公開日
2023-05-17
更新日
-