文献情報
文献番号
202117006A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症施策の評価・課題抽出のための研究:領域横断・融合的アプローチと大規模データベースの実践的活用
課題番号
20GB1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 広井 良典(京都大学 こころの未来研究センター)
- 山田 文(京都大学 法学研究科)
- 佐々木 一郎(同志社大学 商学部)
- 前田 昌弘(京都大学 人間・環境学研究科)
- 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学 )
- 佐々木 典子(京都大学 医学研究科)
- 武地 一(藤田医科大学 医学部)
- 中村 桂子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
- 村上 玄樹(産業医科大学 大学病院)
- 原 広司(横浜市立大学 国際商学部)
- 國澤 進(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
認知症施策推進大綱(2019年6月)施策の進捗を確認する2022年に向けて「共生」と「予防」の進捗把握と評価方策を確立するために以下を目的とする。(1)「共生」概念を、学際的アプローチを以て、多側面から社会・生活環境の具体的なあり方を表現し、それらを、認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりのガイドとして示す。(2)「共生」の側面に加え、「予防」の側面から社会経済因子、関連資源、疫学指標等を基盤として、指標間の関連を明らかにしながら、自治体レベルで評価できるよう、包括的な評価指標体系を構築する。重要なアウトカム指標として、健康余命(平均自立期間)や、認知症の自立度のデータに基づく健康余命(以下、認知症自立度健康余命と呼ぶ)を全国の市町村において計測するなど、「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標を開発する。
研究方法
(1)昨年度の成果(全体枠組みの構築、現場のエビデンス、学際的な理論共有など)をもとに、「共生」の概念を社会のあり方として具体的に示す。認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりガイドの作成を目標としているので、その基盤づくりとして、今年度は、「共生」の社会のあり方を示すコンセプトシートを、包括的に、学術・臨床・生活の多側面から作成する。
(2)「共生」「予防」の視点から、全国の市町村レベルや二次医療圏で認知症関連の施策・社会状況を可視化・評価するための指標体系を構築する。今年度は、認知症高齢者の日常生活自立度を不健康とした場合の健康余命(以下、認知症自立余命)の算出及び可視化、認知症にやさしいまちづくりに関する地域の各側面の指標を収集・分類したデータベースの構築、認知症自立余命の地域差の要因分析を行う。
(2)「共生」「予防」の視点から、全国の市町村レベルや二次医療圏で認知症関連の施策・社会状況を可視化・評価するための指標体系を構築する。今年度は、認知症高齢者の日常生活自立度を不健康とした場合の健康余命(以下、認知症自立余命)の算出及び可視化、認知症にやさしいまちづくりに関する地域の各側面の指標を収集・分類したデータベースの構築、認知症自立余命の地域差の要因分析を行う。
結果と考察
(1)「共生」の概念整理については、認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりガイドのベースとして表現することに繋げるべく、コンセプトシートを作成した。
コンセプトシートは、包括的・学際的に、①認知症の人と取り巻く人々の視点から[1 社会参加・認知症カフェ・サロン、2.1 地域保健、地域ケア、2.2 市民参加・認知症サポーター、2.3 社会参加]、②制度・社会システムの視点から[3 社会的包摂・認知症の人を支える家族、4 人権・権利擁護・成年後見制度・紛争解決、5 高齢者雇用・年金、6 学校教育、生涯教育、マスメディア、7 医療、8 介護サービス等、9 地域包括ケアシステム]、③まちづくりの視点から[10 社会にやさしいコミュニケーションと情報、11 健康まちづくり]、④制度・社会システムの視点から[12 都市計画・交通/住環境、13 認知症にやさしい健康なまち]、という構成とした。
(2)「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標開発にあたりDementia Free Life Expectancyに関連しうる研究をレビューし、認知症自立余命(認知症自立度健康余命)を開発し全国各地域で計測した。即ち、要介護度1・2、認知症自立度1・2の各時点を基準として市町村、二次医療圏ごとに算出した。グラフ、地図等で可視化し地域差を示した。
また、評価指標体系の基礎として地域レベルの多様な社会経済資源等の指標データベースを、SDGsの17分類を参照し9グループに分類・整理し、構築した。地域差の要因分析では、統計モデルにPartial Least Square回帰モデルを用いて解析を行い、認知症自立余命に関して男性が女性より居住地の特徴に大きく影響されることが示唆された。また男女ともに、認知症自立余命と65歳以上人口あたり認知症サポーター数、短大以上卒割合が正に、15歳以上人口あたりたばこ税が負に関連した。なお、市町村単位の健康余命は、人口規模の小さい場合の指標値不安定に対して、Shrinkage calculationの手法を用いて対応した。
今後、学際的な理論的アプローチに加え、健康余命指標の要因分析なども検討し、認知症諸施策の包括的な評価体系を構築していく。
コンセプトシートは、包括的・学際的に、①認知症の人と取り巻く人々の視点から[1 社会参加・認知症カフェ・サロン、2.1 地域保健、地域ケア、2.2 市民参加・認知症サポーター、2.3 社会参加]、②制度・社会システムの視点から[3 社会的包摂・認知症の人を支える家族、4 人権・権利擁護・成年後見制度・紛争解決、5 高齢者雇用・年金、6 学校教育、生涯教育、マスメディア、7 医療、8 介護サービス等、9 地域包括ケアシステム]、③まちづくりの視点から[10 社会にやさしいコミュニケーションと情報、11 健康まちづくり]、④制度・社会システムの視点から[12 都市計画・交通/住環境、13 認知症にやさしい健康なまち]、という構成とした。
(2)「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標開発にあたりDementia Free Life Expectancyに関連しうる研究をレビューし、認知症自立余命(認知症自立度健康余命)を開発し全国各地域で計測した。即ち、要介護度1・2、認知症自立度1・2の各時点を基準として市町村、二次医療圏ごとに算出した。グラフ、地図等で可視化し地域差を示した。
また、評価指標体系の基礎として地域レベルの多様な社会経済資源等の指標データベースを、SDGsの17分類を参照し9グループに分類・整理し、構築した。地域差の要因分析では、統計モデルにPartial Least Square回帰モデルを用いて解析を行い、認知症自立余命に関して男性が女性より居住地の特徴に大きく影響されることが示唆された。また男女ともに、認知症自立余命と65歳以上人口あたり認知症サポーター数、短大以上卒割合が正に、15歳以上人口あたりたばこ税が負に関連した。なお、市町村単位の健康余命は、人口規模の小さい場合の指標値不安定に対して、Shrinkage calculationの手法を用いて対応した。
今後、学際的な理論的アプローチに加え、健康余命指標の要因分析なども検討し、認知症諸施策の包括的な評価体系を構築していく。
結論
(1)各領域の専門家による「共生」の包括的な概念の具現化に向け、「認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくり」のガイドの基盤となるコンセプトシートを、包括的・学際的視点から作成した。
(2)認知症諸施策の包括的な評価体系を構築するべく、地域レベルの多様な指標のデータベースの構築を進めるとともに、認知症高齢者の日常生活自立度データを活用して開発した健康余命指標(認知症自立度健康余命など)・各種健康余命を、自治体毎・二次医療圏毎に計測した。さらに、それらの地域差の要因分析を進めた。
(2)認知症諸施策の包括的な評価体系を構築するべく、地域レベルの多様な指標のデータベースの構築を進めるとともに、認知症高齢者の日常生活自立度データを活用して開発した健康余命指標(認知症自立度健康余命など)・各種健康余命を、自治体毎・二次医療圏毎に計測した。さらに、それらの地域差の要因分析を進めた。
公開日・更新日
公開日
2022-08-23
更新日
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