認知症の家族のための「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法プログラム」の開発と効果検証のための研究

文献情報

文献番号
202117004A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の家族のための「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法プログラム」の開発と効果検証のための研究
課題番号
20GB1001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(国立大学法人 大阪大学 医学系研究科 精神医学)
研究分担者(所属機関)
  • 数井 裕光(高知大学医学部神経精神科学講座)
  • 小杉 尚子(専修大学・ネットワーク情報学部)
  • 山中 克夫(筑波大学人間系)
  • 鈴木 麻希(大阪大学 連合小児発達学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法(CBT)プログラム」の2つのコンポーネントからなる認知症の家族介護者(family caregiver: FC)に対する教育的支援システムを開発し、その有効性をランダム化比較試験(RCT)で検証することである。今年度は「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別認知行動療法(CBT)プログラム」の改良と完成を目指した。
研究方法
「パーソナルBPSDケア電子ノート」はFCが必要なケア情報が集約された携帯可能な電子ノートである。電子ノートに実装する4種類のコンテンツのうち、最も重要なコンテンツは個別性が高い「利用する認知症の人の原因疾患、要介護度、性別の情報に基づいて計算される奏功確率が高いBPSD対応法」である。今年度は研究分担者の數井が開発・運営している認知症ちえのわnetに対してケア体験の投稿を促す活動をおこない、蓄積されるBPSD対応法の種類を増やすことで、奏功確率の信頼性の向上を図った。次に認知症ちえのわnetに投稿された膨大のケア体験の中から「ケアする人が困った、認知症の人の発言や行動」と「その発言や行動に対してケアする人がやむを得ずとった対応法」の組み合わせが類似したものを半自動的に抽出する人工知能(AI)プログラムを開発することで、より簡便に奏功確率を求められる体制の構築を試みた。一方、「疾患別CBTプログラム」は疾患教育とCBTからなるプログラムであるが、初年度にwithコロナ時代に適応すべくオンラインを主体とした個別セッション(計6セッション)に変更した。今年度はこの変更によって生じうる問題点を詳細に検討し、セラピストによって指導の質に偏りが出ないようセッションごとにシナリオ文書を作成した。また大阪大学医学部附属病院神経科・精神科に通院中の意味性認知症患者のFCに対して本プログラムをベースとした家族介入を予備的に実施した。FCおよび見学者として参加した認知症ケアに関わる専門職から満足度(日本語版Client Satisfaction Questionnaire-8項目(CSQ-8)にて評価)と感想を聴取して内容の改良点を検討した。
結果と考察
「パーソナルBPSDケア電子ノート」開発研究では、電子ノートに実装する「利用する認知症の人の原因疾患、要介護度、性別の情報に基づいて計算される奏功確率が高いBPSD対応法」で提供する奏功確率の信頼性の向上を図るために、認知症ちえのわnetへのケア体験投稿を促すための活動を複数おこなった。直接の効果の検討は難しいが、投稿数の増加が確認されたことから、投稿の促進につながったことが推測された。一方で投稿数の増加により、従来の方法では「困った認知症の人の発言や行動」のうち同じ内容のものを抽出する、という作業は困難となりつつあった。今年度、半自動的に適切なケア体験を効率よく抽出できるAIプログラムを開発し、性能評価実験で問題なく動作することを確認できた。今後はより多くの奏功確率が公開できるものと考えられる。引き続き、本電子ノートと「疾患別CBTプログラム」と組み合わせた教育的支援プログラムの検証研究開始前までにより多くのケア体験の投稿を獲得し、奏功確率を公開する予定である。一方「疾患別CBTプログラム」開発研究」では、初年度のプログラムの内容と構成の変更によって生じうる問題点を詳細に検討し、セラピストによる指導の質を均一にする目的で各セッションに分かりやすさに配慮したシナリオ文書を作成した。また本プログラムをベースとした内容を意味性認知症患者のFCに予備的に実施し、FCと見学者として参加した認知症ケアの専門職の満足度を聴取した結果、満足度が非常に高かった(CSQ-8得点はFCが平均27.7/32点で、専門職が平均28.7/32点)。またFCと専門職の感想から、疾患別に特化しており個別性が高いこと、疾患教育とCBTの両方が一つのプログラムの中に含まれていることの有用性が見出された。
結論
「パーソナルBPSDケア電子ノート」と「疾患別CBTプログラム」の2つのコンポーネントからなる本教育的支援プログラムは、withコロナ時代に適したプログラムであり、疾患別に特化した個別性の高い内容であること、また疾患に関連する知識や具体的な対応方法および精神的セルフケアの実践方法までを包括的に含むことを特徴とするため、高い効果が得られることが期待される。最終年度は、本教育的支援プログラムのFCに対する有効性を検証するために前向き試験を実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2022-08-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-08-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202117004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,616,000円
(2)補助金確定額
8,616,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,691,983円
人件費・謝金 3,168,479円
旅費 1,590円
その他 3,757,081円
間接経費 2,584,000円
合計 11,203,133円

備考

備考
3133円自己負担額

公開日・更新日

公開日
2023-05-17
更新日
-