文献情報
文献番号
202116010A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅・介護施設等における事故報告に関連する事故の予防及び再発防止の研究
課題番号
21GA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
- 後 信(公益財団法人 日本医療機能評価機構)
- 森山 葉子(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,772,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
介護施設において、安全な介護の実施が求められている。今後、超高齢化社会を迎えて、介護施設の果たす役割は益々大きくなるため、国民の介護施設に対する様々な要求が高まる可能性が考えられる。しかし各介護施設の環境要因に関する問題点として、介護施設の種類で医療的ケアを実施する職種や構成が異なることから、介護施設で発生する介護ケアに関する事故については、発生するプロセスや背景要因、根本原因などは、介護施設に特有の事故である可能性が示唆される。従って、介護施設において発生した介護事故等の事例を収集し、詳細に分析し、介護施設で実施するべき再発防止策の範囲、施設の規模・機能や法学的観点を含めて考慮した介護事故の類型化、介護施設とともに事故の予防・再発防止に欠かせない入所者や家族等の協働を促進する事例解説を策定することが求められる。そこで、本研究では、介護老人保健施設等を対象とした調査・ヒアリング、既存調査・研究・文献(判例を含む)の検索も実施し、研究1年目は、介護安全の取組みの全体像と、とくに転倒について深めた分析を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では、様々な形態で運営・提供されている介護施設について、介護老人保健施設などを中心に、調査・ヒアリングを実施する。また既存調査、研究、文献の検索も実施する。
研究1年目:
○ 既存調査、研究、文献(判例、海外での取組み等含む)の検索・調査
○ 介護施設へのヒアリング調査
○ 収集した事故状況や取組みを分析(介護安全の取組みの全体像と、とくに転倒について深めた分析)
研究2年目:
○ 関係団体の協力のもとに全国の介護施設・市町村に調査票を用いた調査
(とくに2021年度から開始された事故の報告統一様式の運用状況などについて)
○ 前年度及び当該年度の検証に基づく事故の予防及び再発予防策の提案
(転倒に加えて、頻度の多い事故(誤薬、誤嚥など)を対象に、介護安全の全体構成(案)(図)を考慮して)
○ 事故の予防及び再発予防策の検証
○ 介護事故の類型化及び事例解説を策定
研究1年目:
○ 既存調査、研究、文献(判例、海外での取組み等含む)の検索・調査
○ 介護施設へのヒアリング調査
○ 収集した事故状況や取組みを分析(介護安全の取組みの全体像と、とくに転倒について深めた分析)
研究2年目:
○ 関係団体の協力のもとに全国の介護施設・市町村に調査票を用いた調査
(とくに2021年度から開始された事故の報告統一様式の運用状況などについて)
○ 前年度及び当該年度の検証に基づく事故の予防及び再発予防策の提案
(転倒に加えて、頻度の多い事故(誤薬、誤嚥など)を対象に、介護安全の全体構成(案)(図)を考慮して)
○ 事故の予防及び再発予防策の検証
○ 介護事故の類型化及び事例解説を策定
結果と考察
【結果】
1)介護施設等における転倒に関わる判例のレビュー
【期間と件数】
判決日:1988(S63)年12月26日~2019(H31)年3月14日
件数:52件
2)海外における転倒予防に関する取組み
イギリス、オーストラリア、アメリカ、カナダなどで行政機関等によりステートメント・指針が発出され、高齢者個別の転倒リスクの把握・介入の重要性、転倒後の適切な対応について言及されている。
3)介護現場の取組み状況についてのヒアリング・意見交換結果概要
【対象】6法人(団体)・9施設
【介護現場の安全の取組み状況(概要)】
- 報告する文化が根づいていない
- 報告例:転倒・転落、誤薬、皮膚剥離、誤嚥、異食、施設内外の外傷、苦情
- 報告する内容は、各施設によってかなりの差がある
- KYT(Kiken Yoch Training)は実施されているが、RCA(Root Cause Analysis)分析(体系的な根本原因分析)はされていない
- 虐待に関しての指導が中心的で、虐待防止、苦情対応の意識が強い
- 「個人が気をつければ事故は起きない」との認識が強い(システム志向が必要)
- 介護安全の教育が不足している
【考察】
判例や国内外での取組みなどから、検討すべき転倒に関わる対応策の類型化として、以下の6つの段階が考えられた:①転倒しやすさ(利用者の状態、及び環境)の把握と対応、②転倒につながり得る行動の早期発見、③転倒してもケガをさせない予防、④有害事象(転倒後)の早期発見、⑤有害事象(転倒後)の早期治療、⑥訴訟に発展させない取組み。さらに介護現場の取組み状況についてのヒアリング・意見交換会からは、報告する文化が根づいていない、体系的な根本原因分析はされていない、「個人が気をつければ事故は起きない」との認識が強い(システム志向が必要)、介護安全の教育が不足している、などが指摘された。事故予防に取組むための仕組み(報告、分析、対策立案など)が、体系的に整備されておらず、これらの支援体制が求められている。
1)介護施設等における転倒に関わる判例のレビュー
【期間と件数】
判決日:1988(S63)年12月26日~2019(H31)年3月14日
件数:52件
2)海外における転倒予防に関する取組み
イギリス、オーストラリア、アメリカ、カナダなどで行政機関等によりステートメント・指針が発出され、高齢者個別の転倒リスクの把握・介入の重要性、転倒後の適切な対応について言及されている。
3)介護現場の取組み状況についてのヒアリング・意見交換結果概要
【対象】6法人(団体)・9施設
【介護現場の安全の取組み状況(概要)】
- 報告する文化が根づいていない
- 報告例:転倒・転落、誤薬、皮膚剥離、誤嚥、異食、施設内外の外傷、苦情
- 報告する内容は、各施設によってかなりの差がある
- KYT(Kiken Yoch Training)は実施されているが、RCA(Root Cause Analysis)分析(体系的な根本原因分析)はされていない
- 虐待に関しての指導が中心的で、虐待防止、苦情対応の意識が強い
- 「個人が気をつければ事故は起きない」との認識が強い(システム志向が必要)
- 介護安全の教育が不足している
【考察】
判例や国内外での取組みなどから、検討すべき転倒に関わる対応策の類型化として、以下の6つの段階が考えられた:①転倒しやすさ(利用者の状態、及び環境)の把握と対応、②転倒につながり得る行動の早期発見、③転倒してもケガをさせない予防、④有害事象(転倒後)の早期発見、⑤有害事象(転倒後)の早期治療、⑥訴訟に発展させない取組み。さらに介護現場の取組み状況についてのヒアリング・意見交換会からは、報告する文化が根づいていない、体系的な根本原因分析はされていない、「個人が気をつければ事故は起きない」との認識が強い(システム志向が必要)、介護安全の教育が不足している、などが指摘された。事故予防に取組むための仕組み(報告、分析、対策立案など)が、体系的に整備されておらず、これらの支援体制が求められている。
結論
事故予防に取組むための仕組み(報告、分析、対策立案など)が、体系的に整備されておらず、これらの支援体制が求められている。このとき介護安全の全体構成(案)が参考となる。これらの結果を踏まえて、研究2年目の研究を推進し、介護施設における事故に対する対応力の向上に資する。
公開日・更新日
公開日
2022-06-03
更新日
2023-05-01