文献情報
文献番号
202116005A
報告書区分
総括
研究課題名
嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためのアルゴリズム等作成のための研究
課題番号
20GA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
倉田 なおみ(昭和大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 秋下 雅弘(東京大学 医学部附属病院 老年病科)
- 柴田 斉子(藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座)
- 戸原 玄(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野)
- 西村 美里(昭和大学 認定看護師教育センター)
- 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
- 鈴木 慶介(台東区立台東病院)
- 肥田 典子(昭和大学 薬学部 臨床薬学講座 臨床研究開発学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,805,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
嚥下専門医・スタッフのいない施設でも、摂食嚥下機能が低下した人の服薬に関するアルゴリズムを作成する。これにより服薬介助の手間を軽減できるようにする。
研究方法
現状のエビデンスが少ないため、まずは1.服薬状況2.口腔内残薬に関する調査を実施する。調査で得られた結果も参考にし、委員会を開催してアルゴリズムを作成する。
結果と考察
1. 服薬状況調査
服薬介助時に錠剤を粉砕してとろみやゼリー、食事に混ぜて服薬させることが多かった。粉砕した錠剤は、原薬の強烈な苦味・におい・刺激などが露出することがある。食事などに混ぜると拒食につながる可能性もあるため避けるべき行為であるが、日常的に実施されていることが明確になった。
2. 口腔内残薬調査
口腔内に残薬があったのは3.3%と少なかった。しかし残薬を見たことがある介護職員は多く、今後さらなる調査が必要である。
3. アルゴリズムの作成
上記調査内容も参考にして「嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためのアルゴリズム」を作成した。アルゴリズムは、嚥下専門医や専門スタッフがいない在宅、施設等において、錠剤粉砕などの薬を加工することにより生じる問題をなくし、患者・入居者に必要な薬を安全に服用してもらうようにするため、できるだけ粉砕はせずに適した剤形が分かるアルゴリズムを目指して作成することとした。食物は食形態を工夫して経口摂取、だめなら胃瘻(経鼻胃管)投与、経口+胃瘻の場合でも薬は一方から投与する。そこで、食事状況をスタートとして「錠剤が服用できない際のアルゴリズム」「胃瘻から投与する際のアルゴリズム」を作成した。「錠剤が服用できない際のアルゴリズム」では、服薬媒体が、水、とろみ水、オブラート、食事・デザート、簡易懸濁とろみ法のそれぞれの場合に、「推奨する剤形」、「推奨しない剤形」、「服用可能な剤形の条件が分かるアルゴリズムとした。つぶさなくても適する剤形があることが分かれば、薬剤師との連携ができる。剤形以外でも、服用薬が多い場合、ポリファーマシーの場合などの「薬を飲みやすくする方法」の一覧も作成した。薬剤性嚥下障害では、新たに薬剤一覧表を作成し嚥下5期のどの期に対応するかを示した。また、胃ろうからの投薬の剤形選択、簡易懸濁法不適薬のアルゴリズムも作成した。また、薬がスムーズに服用できないできない際に連携する職種を示すアルゴリズムも作成した。
アルゴリズム作成以外では、施設内の他のスタッフ(医師、薬剤師、事務員等)の嚥下障害にかかわる役割等が分かる一覧表も作成し、多職種連携の充実に活用されたい。さらに入退院(所)時における施設外の地域スタッフと、摂食嚥下障害者の服薬に関する情報を共有するツールを成果物として作成した。成果物のリストを以下に示す。
・摂食嚥下機能低下時に適する剤形選択のアルゴリズム
・錠剤が飲めない際のアルゴリズム
・薬をより飲みやすくするための対策
・胃瘻(経鼻胃管)から投与する際のアルゴリズム
・簡易懸濁法のアルゴリズム
・摂食嚥下障害の原因となる薬剤一覧
・薬がスムーズに服用できない際の多職種連携パス
・薬の副作用と摂食嚥下障害
これらの成果物は書籍(タイトル:介護施設・在宅医療のための、食事状況から導く薬の飲み方ガイド)にまとめ、㈱社会保険研究所より令和4年夏~秋を目途に出版する。
書籍の出版により、患者や施設入所者が錠剤を粉砕しなくても、安全に服薬できる薬剤があることを知り、薬剤師との連携が強化される。また、必要のない錠剤粉砕がなくなり、粉砕によって血中濃度高値になって副作用が生じるアクシデントや薬効が減じることを未然に防止できるようになる。
服薬介助時に錠剤を粉砕してとろみやゼリー、食事に混ぜて服薬させることが多かった。粉砕した錠剤は、原薬の強烈な苦味・におい・刺激などが露出することがある。食事などに混ぜると拒食につながる可能性もあるため避けるべき行為であるが、日常的に実施されていることが明確になった。
2. 口腔内残薬調査
口腔内に残薬があったのは3.3%と少なかった。しかし残薬を見たことがある介護職員は多く、今後さらなる調査が必要である。
3. アルゴリズムの作成
上記調査内容も参考にして「嚥下機能低下に伴う服薬困難に対応するためのアルゴリズム」を作成した。アルゴリズムは、嚥下専門医や専門スタッフがいない在宅、施設等において、錠剤粉砕などの薬を加工することにより生じる問題をなくし、患者・入居者に必要な薬を安全に服用してもらうようにするため、できるだけ粉砕はせずに適した剤形が分かるアルゴリズムを目指して作成することとした。食物は食形態を工夫して経口摂取、だめなら胃瘻(経鼻胃管)投与、経口+胃瘻の場合でも薬は一方から投与する。そこで、食事状況をスタートとして「錠剤が服用できない際のアルゴリズム」「胃瘻から投与する際のアルゴリズム」を作成した。「錠剤が服用できない際のアルゴリズム」では、服薬媒体が、水、とろみ水、オブラート、食事・デザート、簡易懸濁とろみ法のそれぞれの場合に、「推奨する剤形」、「推奨しない剤形」、「服用可能な剤形の条件が分かるアルゴリズムとした。つぶさなくても適する剤形があることが分かれば、薬剤師との連携ができる。剤形以外でも、服用薬が多い場合、ポリファーマシーの場合などの「薬を飲みやすくする方法」の一覧も作成した。薬剤性嚥下障害では、新たに薬剤一覧表を作成し嚥下5期のどの期に対応するかを示した。また、胃ろうからの投薬の剤形選択、簡易懸濁法不適薬のアルゴリズムも作成した。また、薬がスムーズに服用できないできない際に連携する職種を示すアルゴリズムも作成した。
アルゴリズム作成以外では、施設内の他のスタッフ(医師、薬剤師、事務員等)の嚥下障害にかかわる役割等が分かる一覧表も作成し、多職種連携の充実に活用されたい。さらに入退院(所)時における施設外の地域スタッフと、摂食嚥下障害者の服薬に関する情報を共有するツールを成果物として作成した。成果物のリストを以下に示す。
・摂食嚥下機能低下時に適する剤形選択のアルゴリズム
・錠剤が飲めない際のアルゴリズム
・薬をより飲みやすくするための対策
・胃瘻(経鼻胃管)から投与する際のアルゴリズム
・簡易懸濁法のアルゴリズム
・摂食嚥下障害の原因となる薬剤一覧
・薬がスムーズに服用できない際の多職種連携パス
・薬の副作用と摂食嚥下障害
これらの成果物は書籍(タイトル:介護施設・在宅医療のための、食事状況から導く薬の飲み方ガイド)にまとめ、㈱社会保険研究所より令和4年夏~秋を目途に出版する。
書籍の出版により、患者や施設入所者が錠剤を粉砕しなくても、安全に服薬できる薬剤があることを知り、薬剤師との連携が強化される。また、必要のない錠剤粉砕がなくなり、粉砕によって血中濃度高値になって副作用が生じるアクシデントや薬効が減じることを未然に防止できるようになる。
結論
錠剤粉砕は味・におい、薬効、副作用等においてデメリットが多くさけるべき行為であるが、日常的に錠剤粉砕が行われ、粉砕した薬がとろみやゼリー、食事に混ぜて服薬している状況が明らかになった。今回作成したアルゴリズムを活用することにより、錠剤粉砕をなくし、より服用しやすい安全な剤形や製剤を選択することにより、安全な服薬や服薬介助の軽減ができるようになる。また、摂食嚥下機能の低下は多職種で取り組むべき課題であり、作成した連携ツール等の活用により更なる地域連携の活性化されることを期待する。
本研究の内容が書籍発刊により手軽に見られるようにし、多職種に広く周知されて普及させていたい。書籍のみならず、今後の学会や講演会で紹介し、広めていく予定である。
本研究の内容が書籍発刊により手軽に見られるようにし、多職種に広く周知されて普及させていたい。書籍のみならず、今後の学会や講演会で紹介し、広めていく予定である。
公開日・更新日
公開日
2022-06-03
更新日
-